6.11.2017

[art] Pink Floyd: Their Mortal Remains

英国の選挙、とりあえずよかった。

少し戻って、5月28日、日曜日の昼、V&Aで見た展示ふたつ。

Pink Floyd: Their Mortal Remains

結成から50周年、Pink Floydのすべてを回顧する。
"Their Mortal Remains" - 「彼らの死の遺跡」 - タイトルは"Nobody Home"の"I've got a grand piano to prop up my mortal remains"から取られていて、ではここでの"Their"とは誰のことか、というのはいつものあれな。 

V&Aで前回開催されて世界的な成功をおさめた展示"David Bowie Is"に続くロックミュージシャンもの、とされているが、それ以外にもここではついこないだの”You Say You Want a Revolution? Records and Rebels 1966-1970” といった文化史系の展示もやっているので、そちらに連なる、とすることもできるのだろうが、まあ、ミュージシャンものだよね。

日曜日のチケットは当然のように売り切れていたのだが、メンバーなので行列をふんふん横目に入ることができる。何回でも。

入口でSENNHEISERのヘッドホンとレシーバーを渡されて、というのもこれまで通り。
メンバーごと、リリースされたアルバムごとに、録音機材、レコーディング時、ツアー時の記録、資料、当時のファッション、世相まで、メンバーの私物も含めて集められるあらゆる資料を寄せ集めて、順番に展示していく、というのも"David Bowie Is"と同じような構成なのだが、なのだが、Bowieの展示では、層になって束ねられた大量の情報のなかからDavid Bowieその人の像 - ひょろひょろがりがり、新しもん好きで、錯綜してて混乱してて、でも孤独で思慮深くて、でもお茶目で、などがきらきらすっくり立ちあがってきたのに対し、Pink Floydのは相当ちがう。

前期のサイケデリックの頃は彼らの初期作が編みあげようとしていたサイケなイメージや世界観をなぞる(他になにができよう)のに留まり、中後期 - 「狂気」以降のは.. どうなんだろう?  既にHipgnosisのジャケットや歌詞が十分に説明しようとしてきた個の内面と外の世界との相克 - 批評性/狂気をもってぶちまけられた世界、聴き手にとっては自身のなかで(作品との対話を通して)それなりに完結していたはずの世界、の補足情報が並んでいるだけ、に見えてしまわないだろうか。
(Bowieの場合はたとえそれがちり紙の欠片であっても、それは彼と我々が作りあげる「世界」に、簡単に変貌した)

もちろん、そんなこと言ったら世の文学館にある資料なんてぜんぶ同様の補足になっちゃうだろ、なのだが、でもやっぱりPink Floydていうのは文学ではなくて音楽で、緻密に練りあげた音とビジュアルと(批判的・啓示的な)言辞と、更にそれらをトータルにぶちまけるライブと、そのスケールがもたらすカタルシスなどなどで、その時々の世界観・歴史観をまるごと世界に提示し続けた、そういうことをメジャーな規模で初めて実現したバンド、だったのだと思うので、なんかなー、だった。 50周年を回顧するお祭りで、ネタはいくらでもあるのだし、どっちみち"Mortal Remains"なんだし、ということなのだろう。

わたしはというと、Bowieの時と比べると瞳孔の開き具合がぜんぜん違って、それなりに聴いたのって"Meddle" (1971)くらいまで、中学生のときに聴いた"The Dark Side of the Moon" (1973)は、既にじゅうぶん売れていて、更にまだ売れ続けている状況で、そういうのもあったせいか、なんか嫌だった。(← ガキだよね)
今回の展示コーナーに"Punk vs. Pink"ていうのがあって、Johnny Rottenが着ていた"I Hate Pink Floyd"シャツもあったりするのだが、要するにそういうことだったの。 直観的にうぜえだせえ大仰..  とか思って、それはずっと"The Wall"の頃まで続いて、ちゃんと聴いたことはなかった、と言おう。 で、そういうしょうもないバカも、こういうところに来るときちんと振り返ってそれなりに反省したりすることはできる。 個と社会の軋轢や疎外→狂気、あるいは正しさの反射鏡としての狂気、といったテーマをここまで誠実に追い続けて、しかもその規模を世界的に拡げていったバンドって、確かにあんまなかったよね。

ライブとか音源の映像は、ふつうの四角いだだっぴろい部屋の、異様にクリアな四面スクリーンに投影されて、どこに立ってもサラウンドでものすごくよい音が襲ってくる、地味だけどなかなかすごいやつだった。

ショップは、アナログ盤を含めていろんなグッズがいっぱいあったけど、なんかそういうのをこぞって買うのってPF的にどうなのかしら、って少し。


Balenciaga: Shaping Fashion

V&Aで始まったばかりのもうひとつの展示。 実はこっちのほうが楽しみだったことを白状しよう。
開始直後だったせいもあって、こっちもSold Outで、メンバーのカード見せたらちょっとやな顔された。(こんなに混んでるんだけど... って)  
たしかに沢山の女性でぱんぱんだった。 (PFのほうは圧倒的にじじいだらけだったが)

場内に(割と控えめに)掲げてある彼の言葉が全てを語る。

"A Woman has no need to be perfect or even beautiful to wear my dresses. The dress will do that for her"

なので、これまでのファッション系の展示の豪勢で煌びやかな宝飾品を飾り奉ってひれ伏すかんじとはちょっと違って、なんでこんな不思議で変てこなシェイプやドレープがあんな素敵なことになっちゃうんだろうか/見えちゃうんだろうか、の眼差しと驚きと戸惑いで、腕組みしたり首を傾げたり回りこんで凍りついて動けなくなっている人多数、のおもしろい状態になっていた。 冗談のように服のレントゲン写真まで飾ってあったが、彼のデザインはファッションのありようを骨格レベルから再構成する("Shaping Fashion")みたいなことを、アヴァンギャルドではないやり方で、ものすごくスマートに、滑らかにやったのだと思う。

1階がBalenciaga自身のデザインによるもので、2階が彼の没後のブランドとしてのBalenciagaで、服のオーラみたいのが圧倒的に、かわいそうなくらい違うかんじがしたのは自分だけかしら?


というわけで今V&Aでやっているこのふたつ、全く別もんですけどとっても20世紀だねえ、て思った。

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