6.28.2017

[film] The Seasons in Quincy: Four Portraits of John Berger (2016)

25日、日曜日の午後にSOHOのCurzonでみました。
タイトルの通り、今年1月に亡くなったJohn Bergerの肖像を4つの短篇を重ねつつ浮かびあがらせたもの。

日本だと『見るということ』とか『イメージ—視覚とメディア』を中心にどうしても学術の人として語られてしまいがちだが、こっちでは彼自身がTVプログラムに出ていたこともあってとてもポピュラーな存在で、2〜3月はどの書店でも追悼で彼の本が平積みになっていた。

70年代からフランスの山奥の村Quincyに移り住んだJohn Bergerをいろんな人が訪ねて対話をしたり、過去と現在を重ねたり。
"Four Portraits"の4編は"Ways of Listening" 〜 "Spring" 〜 "A Song for Politics" 〜 "Harvest”で、冬 - 春 - 夏 - 秋の順番で、それぞれ監督もばらばらなのだが、見事な統一感があって、それは四季ごとに表情は異なるのにその土地の空気の感じや光の感触が変わらないのと同じようで、それはつまりJohn Bergerという人がそう人なんだろうな、と。

http://seasonsinquincy.com/

Tilda Swintonさんがナレーションしたり顔を出したりしていて、彼女とJohn Bergerは80年代からの付き合いで、同じ誕生日で、同じロンドン生まれで、Tildaさんがリンゴの皮を剥いたりしながら対面でとりとめなくいろんな会話をしていく"Ways of Listening"がすばらしい。

ものを見ること、話を、声を聴くこと、ものを、あるいは/例えば美術作品を見る、それも正しい見方で見る、というのはどういうことか、それが何故大切で必要なことなのか、ということを彼は繰り返し説いていて、それは聴くことについても同様で、美を味わうという体験の本質はそこにあるのだと、そしてそれはひとと話す・語るというところにも繋がってくるのだな、ということがようくわかる。 70年代の"Ways of Seeing"のアーカイブ映像でこちらに語りかけてくる彼も、3つめのエピソード"A Song for Politics"で政治について語る彼も、"Ways of Listening"でTildaと話をする彼も、その目と語り口はおなじように真っ直ぐで、変わらない。

"Play me Something" (1989)で共演しているTildaとJohnの切り返し映像が一瞬挿入されて、なんだか泣きたくなる。

"Spring"は農場に住むいろんな動物のお話で、彼らの姿を見ること(すばらしい豚さん)、考えることからStory Tellingのほうに話は転がっていって、これってこないだのTateでのDonna Harawayの"Story Telling for Earthly Survival"に繋がる気がしたのだが、ふたりの間に交流とかなかったのかしら?

"Harvest"は、監督がTildaで、Quincyを訪れたTildaの子供たちとJohnの息子との間の交流と対話があって、それは最初の"Ways of Listening"のエコーにもなっている。 こうして季節は移ろって少し膨らんで次に継がれていくよ、ということなのだろうが、ここで一番印象に残るのはTildaの子供みたいに素敵な笑顔なの。

全編でうねる見事なストリングスはSimon Fisher Turner、製作はDerek Jarman Lab。
ある意味イギリス的な美が凝縮されているようでたまらない。舞台はフランスなのだが。
日本でも公開されてほしい。

日本のJohn Bergerっていうと誰になるのだろう? やっぱり吉田 喜重かなあ。


John Berger関連で、もうひとつ。

26日、月曜日の晩にBFIの"Architecture on TV"のシリーズのラストで、"Berger on Buildings" ていうタイトルの上映があった。 彼が建築について語っているTVやフィルムを3本集めたもの。

- The Visual Scene (1969)  31min
- A City at Chandigarh (1966)  Dir Alain Tanner.  44min
- 10 Thousand Days, 93 Thousand Hours, 33 years of Effort (1965)  Dir Michael Gill. 28min

このうち、Alain Tanner監督による"A City at Chandigarh"がおもしろかった。ル・コルビュジエが設計した都市や建物のコンセプトや詳細には一切立ち入らずに全編にインドの音楽をがんがん流して、彼らの生活、学校、家族形態、などを紹介して、その断面断面にル・コルビュジエの建物やデザインしたなにかが映りこむような、そういう撮りかたをしている。 建築を撮るっていうのはそういうことでしょ、と。

もういっこの、"10 Thousand Days, 93 Thousand Hours, 33 years of Effort"は、郵便配達人のFerdinand Chevalがフランスの田舎に33年かけて作り上げた彼のパレス = 理想郷の紹介。 Berger自身がパレスのなかに入って彼が構築したぐちゃぐちゃな宇宙のすばらしさを解説してくれる。

でっかいNFT1での上映だったのだが、結構埋まっていて熱心にメモを取っているひとが多かった。


この後、NFT1ではトルコの猫映画"Kedi"のPreviewが。 ついにやつらがやってくる。

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