12.21.2016

[film] Manchester by the Sea (2016)

16日、金曜日の午前10:05の回、ダウンタウンのAngelikaで見ました。
壁の向こうの地下鉄の音がごとごと聞こえてくる(大好きな)シアター。 平日午前なので4人くらいしかいなかった。

なんで日本で公開されなかったのかまったく理解できない青春映画の傑作"Margaret" (2011)、演劇の"This is Our Youth”などを経てついに放たれたKenneth Lonerganの監督作。しかもなんかとっても評判がよいので戸惑うくらい。

このManchesterはみんなが知っている英国のあそこではなくて、アメリカ東海岸、マサチューセッツ州にあるManchester-by-the-Sea、ていう海辺の町の名前。

アパートのSuperintendent(修繕係)をしているLee (Casey Affleck)は住民のいろいろ我儘な修繕・修理のリクエスト(アパートってもともと配管系とかがしょぼい・弱いのよね)にも投げやりな対応しかできないので評判はあんまよくなくて、そんなある日、心臓を病んでいた兄Joe (Kyle Chandler)が亡くなったと連絡を受ける。 親しかった兄の死は彼にとってショックで、車でManchesterまで駆けつけて、その後しばらくすると兄は高校生の甥Patrick (Lucas Hedges)の後見人に自分を指名していたことがわかり(他に船の面倒もみろ、とか)、そんなの今の自分には絶対無理だからと狼狽して、さてどうするか。

父が亡くなり、昔に別れた母とも疎遠でたったひとり残されたPatrickは驚くほど冷静に死を受けとめていて、忌引も取らずに学校に行ってホッケーの練習しようとするし、Leeにも自分は大丈夫だしあと2年で後見人不要になるんだから放っておいて、といい、おろおろ狼狽えて途方に暮れるLeeの逡巡のほうがだいじょうぶかよ、なかんじで、そのぎこちない叔父と甥のやりとりの合間に、Patrickがまだ幼い頃にみんなで船で海に出ていた頃の思い出とか、なぜLeeはManchesterから離れた土地でひとりで暮らしているのか、といった事情とかがLeeの脳裏に次々と現れてパニックを引き起こしたり、ほんとに危なっかしい。

ぼろぼろでしょうもないLeeの後見人としてしっかり生きなきゃ、という日々と、Patrickのいろいろあるけどしっかり生きよう、てガールフレンドふたりとデートしたりバンドしたりホッケーしたりふつうに青春する日々を交互に追いつつ、大切なものを全て失って行き場のない荒んだ男と、始めから空っぽでどんなものでもまずは受けとめようとする若者の互いにぜんぜん望んでいない、まったく噛み合わない出会いとすれ違いとぶつかり合いと、しぶしぶへなへなのぎこちない抱擁を描く。
みんなが彼らの元を去っていく、でも傍にいてくれる人もいるよ、船もあるよ、寒くてきついけどね。

登場人物はそんなにいない、場面やストーリー展開にもあまり動きはなくて、最後にすごい落としどころやどんでんがあるわけでもなくて、これで137分。 なのにあっという間に過ぎてしまう不思議。("Margaret"は150分あって、これもあっというまよ)
なんとなく、小津の映画みたいなかんじもした。 釣りの場面とかあるし。

無頼の野良猫で得体の知れないCasey Affleckがほんとうに見事で、彼の元を去った妻Michelle Williamsもいうまでもなくて、Patrick役のLucas Hedgesのなんにもない軽さもよいの。 Casey Affleck、アメリカの俳優にはあまりないタイプ - Vincent Macaigne型の変態を演じることができそうなかんじの。

映画に出てくるわけではないのだがNew England Clam Chowderが無性に食べたくなって、このあとお昼に食べた。

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