11.17.2014

[film] A Most Wanted Man (2014)

1日の土曜日の夕方、いちんち京橋でみっつ連続はきつい気がしたので、ちょっと変えてみた。
「誰よりも狙われた男」 京橋から日比谷に歩いていって見ました。

ル・カレの原作は文庫が出たときに買ってすぐ読んだ。いちおう。
彼の小説を読むのはほんとうに久しぶりで、冷戦がとうに終わった911以降の世界と彼が英国情報機関を中心に描いてきた過酷なスパイ戦の世界との間には大きな乖離があって、テーマとしてきついのはわかるけど、やはりストーリー展開は少し散漫な気がした。

ハンブルグに突然現れ、トルコ移民の家に衰弱して保護を求めてきたイッサという若者 - イスラム系、言葉もよく通じない、チェチェンから来たらしい - が何者で、彼の狙いはなんなのか、ロシアからの怪しい金を預かる英国の銀行家、移民や亡命者の支援保護団体の弁護士、そしてドイツ、英国、米国、それぞれの情報機関を巻きこみつつ展開していくイッサを捕捉、もしくは保護しようとする企てのあれこれと最後に持っていっちゃうのはどこのどいつなのか、について。

どこかの町でふつうに暮らしている人のところに奇妙なことが起こって、それがその人、もしくはその人の周辺の集団とか組織とかの記憶とか無意識の底にあった何かを揺らし、その揺れの連鎖がより大きな事件とか行動に繋がって関わった人たち全員に刻印とか影響とか余韻とかを残す。 ひとの動機や決断はそのひとの出自、過去、家族、大文字の歴史、今昔の恋、エモなどなどと複雑に絡みあっていて決してリニアに一筋縄ではいかない、というところと厳格に隔たりと識別を求める国(境)という場所(溝)、もしくはそこでの歴史上の一点、その狭間で、ぐじゃぐじゃに絡み合ったガラス線の上で展開するドラマを微細にやさしく拾いあげる、というル・カレの小説の基調がリニアに流れざるを得ない時間のアートである映画にはそぐわないものであることは、こないだの"Tinker Tailor Soldier Spy" (2011) でもじゅうぶんにわかったの。

であるからして、ル・カレ作品の映画化は俳優のドラマとして追うのが正しい気がして、だから今回見に行ったのもPhilip Seymour Hoffmanがドイツ諜報機関のBachmannを演じていたから、それについてル・カレが書いていたから、なの。

http://www.nytimes.com/2014/07/20/movies/john-le-carre-on-philip-seymour-hoffman.html?_r=0

筋としてはハンブルグという地勢、ロシア、イギリス、アメリカ、それぞれの過去の傷とか負債とか威信とか、そういうのをぐるぐるまわるにしても、イッサという辺境の孤児を扱う物語としても(原作と比べると)中途半端で、監督のAnton Corbijnは、ひとつ前のも含めこういうのをやりたいのかもしれないが、ちょっとむずかしいかも、とか思った。

Philip Seymour Hoffmanについては、申し分なくて、最後にF言葉満載でぶちきれてあたりちらすところなんてたまんないひとにはたまんないの。 ここだけ見とけばよい。

PSH以外のキャストは確認しないで行ったのだが、Rachel McAdamsの弁護士も、Willem Dafoeの銀行家もなんかちがうのよねー。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。