8.10.2014

[film] Enrico IV (1984)

ふん、たまに台風なんかよこしたからって許してやらない。


27日の日曜日ごご、イメージフォーラムのベロッキオ特集でみました。
最後のお楽しみにとっておいた『ポケットの中の握り拳』は結局見れなかった… ばかばかばか。

『エンリコ四世』 英語題だと”Henry IV”。
原作はピランデッロの戯曲で、邦訳もいくつかある(「ヘンリイ四世」、「エンリーコ四世」、等)ようだが読んでいない。

車でどこかに向かっている男女がこれから会いにいく男の写真を見ていて、車の外では過去に起こったらしいことが再生される。 仮装パーティでエンリコ四世に扮した男がみっともなく馬から落ちて、自分はエンリコ四世なのじゃ無礼者〜て、おかしくなって暴れだす。

車が向かっていたのは男が収容されている施設で、そこで男はエンリコ四世のまま、当時の服装とか慣習とかそのまま従者を従えて王として尊大に振る舞っているの。 手がつけられないくらいひどいのか治療の一環なのかわかんないけど。 で、そこに「地獄の黙示録」よろしく乗り込んでいく現代人たち。

エンリコ四世の狂気が現代のいろんなのにぶつかって巻き起こる悲喜劇かと思ったらそういうのではなくて、どちらかというと掻き回されてあたふたじたばたするのは現代人のほう、というのがおもしろいのと、やがてエンリコ四世の狂気はほんもんなのか演技なのか(演技だとしたらいつから?)疑惑が起こってくるので混迷の度は加速していく。 要するに声がでっかいやつが勝つのか、とか、そもそもエンリコ四世て名乗っているあんたって何者なの? とか。

マルチェロ・マストロヤンニはとにかく圧巻。 いまこれやるんだったらアル・パチーノだろうなあ。 でっかい声で恫喝できて、でも同時に抱えこむ虚ろななにかが滲んでしまうひと。

音楽はアストル・ピアソラで、昼と夜、過去と現在、とりわけ現在のなかの過去を、うねうねのたくる狂った物語にぴったりと寄り添って画面に陰影を与える。

それにしても、「肉体の悪魔」にしても「愛の勝利を ムッソリーニを愛した女」にしても「眠れる美女」にしてもベロッキオの映画で描かれる狂気のスリリングで甘くて危うくて、漲ってすぐそこにある感じ、その強く美しいことときたら。
「あなたがここにいてほしい」

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