8.23.2014

[film] 土砂降り (1957)

16日、土曜日の午前、シネマヴェーラの特集「甦る中村登」で見ました。

結構いっぱい入っていた。 やっぱしさー、こういうクラシックなメロドラマ、見たいんだよみんな。

旅館の娘の岡田茉莉子は女将の母と弟と妹と暮らしてて、お役所の机向かいに座っている佐田啓二とは恋仲で、ある日飲み屋に呼ばれて行ってみるとご機嫌の上司がいて「健全かつ模範的な」社内結婚の事例になってくれたまえ、とか言われる。(げろげろ)

とっても舞いあがって幸せいっぱいの二人なのだったが彼女のお母さん(沢村貞子)はお妾さんで、父親(山村聰)は悪いひとではないし仲も良いけどたまにしか家に来なくて、しかも旅館といっても怪しげなカップルが出入りする連れこみ旅館で、そのへんを挨拶にきた相手の母親に知られたあと、一方的にこのお話はなかったことに、てされてしまう。

なにもかも嫌になった彼女は家出して、そこから2年後、神戸のキャバレーみたいなところで働いているところに突然佐田啓二が現れるの。 彼女もやつれているけど、彼のほうも上の泥をかぶって収賄事件で追われてやつれてて、でも再会したらなんだか燃えあがって、失うものがなにもない二人は逃避行に生きる夜の人々になってしまうの。

やがてどこにも行き場がなくなった二人は彼女の実家に戻ってくるのだが、ふたりとも荒んでてへとへとで、土砂降りの晩にー。

お妾さんがやっている連れこみ旅館、ていうのが世間体的によくなくて、虐められたりもするのだから、お父さんとお母さんは別れて依存関係を絶って再出発すべきなんだわ、ていうのが子供たちの総意で、そうしようかー、となったときにお母さんが爆発する。
やさしいけど終始受け身でぼんやりとしていた彼女の感情の糸がぷちりと切れる、これも土砂降りの晩に起こってしまう修羅場で、なんかすごい。
寂しいネオンの点滅の手前に浮かびあがる岡田茉莉子の顔、怖いくらいに冷たくて強烈なのだが、沢村貞子の暴発するエモもすさまじいったら。

あんな男と付きあわなかったら出会わなかったら家族みんなが朗らかに幸せに暮らしていくことができたのに、ていうのは岡田茉莉子の件だけではなく、沢村貞子の件でもそうで、それは明らかに母から娘に連鎖していく不幸のように見えて、でも好きになったんだからしょうがないんだ。 わたしの幸せを決めるのは世間とか家族とかじゃないの、わたしなの! って大声で叫んでみたところに土砂降りがざぶー。

とってもよいドラマだった。 土砂降りでぐしゃぐしゃになるけど、雨降って地固まる、みたいなふうになるわけでもないけど、崩れないものはあるのだ、って。

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