7.01.2014

[film] Madame de... (1953)

気圧と天気のせいでぜんぜん外に出る気になれない今日この頃で、これだけはと起きだして出かけた。
フランス映画祭のサブ企画(どうみてもこっちのがメイン)の「女優たちのフランス映画史」。
「たそがれの女心」。

前にBFIで見たのと同じリストアされたバージョンだと思うが、とにかくこれは何十回見てもすんばらしい恋愛映画の名作なの。

Madame De… (Danielle Darrieux) は浪費がたたって金欠になり、結婚記念に夫の将軍(Charles Boyer)から贈られたイアリングを出入りの宝石商にうっぱらう。
で、夫にはそれを無くしたか盗られたかした、て言う。
もともとイアリングを将軍に売った宝石商は、これは一大事、と将軍にそれを言いつける。
将軍はそういうことか、と思いながらそのイアリングをまた買い戻して、自分の浮気相手の女への手切れに手渡す。
渡された女はコンスタンチノープルで、ばくちのかたに売ってしまう。
それを買ったのが男爵(Vittorio De Sica)。
男爵がMadame De... と知り合って仲良くなって、Madame De...にイアリングを贈る。
最初はつんつんしていたMadame De...も男爵を愛するようになり、そうなると厭わしかったイアリングがとっても大切なものになる。
妻の挙動とかリサイクルされたイアリングをみた将軍はあったまきて男爵に決闘を申し込む。

同じところを何度も何度も行ったり来たりぐるぐるまわり続ける、それが恋というもの、とか、生活の苦労がない金持ちはいいよな、とか、みんないろいろ言いたいことはあるだろう、けど、この映画に描かれた恋の儚さ、それゆえの美しさはとんでもなく別格だとおもう。

金策に困って売り飛ばすくらいどうでもよいものだったイアリングが叶わぬ恋の象徴のように輝き、同時にその恋(どうにもならない)はちゃらちゃら遊んでばかりだったMadame De…を絶望と消耗のなかに落っことしていく。 でもそうなればなるほど、Madame De...の透明でしっとりした美しさが際立ってきてすごい。  「近松物語」のおさんの最後みたいに。

その蜻蛉のリアルを演じきったドリューは、自身が宝石みたいに永遠になってしまったかのように美しいの。


上映後、ジャン=マルク・ラランヌさんによるレクチャーがあって、すんばらしく充実していた。

なぜ「女優」(男優ではなく)を通してフランス映画史を語ることが可能なのか、だってみんなそれぞれに唯一無二ですごいんだから、これを見てみ、とクリップを次々と並べていく。 
確かに。 異議なし。 フランス映画って、女優が際立つ映画のことを言うのね、ておもった。

テーマにあがった女優さんと出てきたクリップは以下の通り。

ダニエル・ダリューは「たそがれの女心」から2シーン(リストア前の日本版DVD画像、しょぼいったら)、(革命女)ブリジット・バルドーは「軽蔑」、(狂気女)イザベル・アジャーニはもちろん「アデル」、もうひとりの”イザベル” ユペール(不安女)は「ピアニスト」(ナイフぐさー)、(変貌女)マリオン・コティヤールは「インセプション」、(過去の記憶の総ざらい)レア・セドゥは「マリー・アントワネットに別れをつげて」、そして全てを代表して燦然と輝くカトリーヌ・ドヌーヴは「終電車」と、まだ公開されていない“Elle s'en va” (2013) -(ルーファスの”This Love Affair”がすてきに流れる)。

ビノシュは出てこないしビュル・オジェもいないし、とかいろいろあるのだろうが、これはこれでものすごい説得力だったの。 フランス女性おそるべし、でした。

そういえば、この特集で上映される”White Material” (2009) は、イザベルがかっこいいようー。


関係ないけど、月火、仕事でデモに行けなくてとってもがっかりだった。
とにかく今の首相と政権をどれだけ嫌っているか、しぬほど気持ちわるくて糞恥ずかしいと思っていることか、誰にも負けない自信がある。 あーむかつく。 ぜったい憶えてろよ。

昔、ブッシュ・ジュニアが再選されたとき、BAMの上映後のトークに出てきたジャームッシュが映画とはまったく関係ないのに怒りまくっていたことを思いだす。 突然「あの選挙はいんちきだ!!」て激昂していた。 それ見てあんなふうに怒ったっていいんだ、と思ったのだった。

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