3.13.2014

[film] Nebraska (2013)

3/2の日曜日、新宿で見ました。 年寄りだらけ。

あなたにミリオンのくじが当たりました!ていうマーケティングのDM(自分も最初受け取ったときはどきどきしたものじゃ)を信じこみ、賞金を受け取りにネブラスカに行くんだ、と言い張る父(Bruce Dern)と、もうなに言ってもどう説き伏せても聞かないから連れていけば納得するだろう、と車で連れていくことにした息子(Will Forte)、そのふたりの道行きとその途中、転んで額縫ったり入れ歯なくしたり、かつて住んでいた町 - Hawthorne - に立ち寄って、後から追ってきた息子の母と兄も合流したり。

父はあんまりしゃべらないので、呆けちゃっているのか、まだだいじょうぶなのか、呆けちゃっていることを認識できる程度にはだいじょうぶなのか、そこは明らかにならないまま、よたよた歩く、ビールを飲む、おろおろする、どなる、行方不明になる、それくらいのことはできて、息子がそれをそれなりに受けとめて、その場をなんとかする。

そういうわけで、それは邦題にあるような「ふたつの心をつなぐ旅」とか家族の絆を再確認するようななにか、というよりも、前作"The Descendants"で、 George Clooneyの妻の死が父娘の絆を確かなものにしたわけではなかったのと同じ、むしろ彼らはハワイとかネブラスカとかそのだだっぴろく冷たい土地に刺さっている、刺さらざるを得なくなってあがいている、ように思えて、絆みたいのがやってくるのはそのあと、そう思いたいひとは思えば、程度の。

モノクロのざらりとした画面とその上を右往左往する老人、という絵がはまるのは当然で、更に中年小太り、彼女に捨てられたばかりの冴えない息子も、やけに詳細な昔話と共に悪態をついてばかりの母も、かつて住んでいた寂れた町の親戚知りあい達も、すべてが灰色銀色で朽ちかけているようで、でもだからといって「ニーチェの馬」のような世界の終りがやってくるわけではない。  もちろん、ほんとうは大当たりだった、なんてバラ色の結末が来るわけでもない。

ぜんぶがだめだめで、だめになることがわかっていて、でもなんか動かざるを得ない、それは父が老齢でこんなんなってしまったから、というのではなく、実は若いころからずっとそんなふうだったのだ、というのが地元での昔話からわかってきて("The Descendants"で、妻が浮気していたのを知ってうろたえるのとおなじような)、そしてそれは今の自分の境遇とあんまり違わないのではないか、とか。
で、でも、だからといってそれが同情や共感をよんで「ふたりの心をつなぐ」かというとそうではなくて、それはおんぼろ車の後ろを押すようなかたちのゆったりとした歩みとしてふたりを道端に置き去りにする。 お墓は留まるけれど車は少し動いている、その程度の違いの、どっちにしても置き去り。

それのなにが楽しいのかおかしいのか悲しいのか、だれにもわからないし、わからなくてもいい、そういう場所にふたりはいる。頑なで心を開いたことがなかったふたりが道行きを通して互いを認めあう、そういう日本人が好きそうなドラマではなく、自分(たち)はここで置き去りになったっていいんだ、ということをしんみり決意するお話で、そういう強くもなく弱くもないかんじがとってもよいと思った。

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