10.11.2013

[film] The Immigrant (2013)

6日の日曜日、この日はごご、NYFFで映画一本だけ。 
James Grayの新作もぜったい見たいやつだったが、すでにとっくにStand-byしかなかったの。
recetteでお昼食べてからLincoln Centerに移動して、列ができ始めた頃に並んで1時間くらい。

いちおうNorth Americanプレミアなので、上映前に監督挨拶とJoaquin Phoenixが出てくる。
ホアキン、長髪で(今週のNew York Magazineの表紙参照)、ほぼ普段着で、マイクの周りを怪しくうろついただけで、何も言わずに去る。

1921年、ポーランドから来たEwa (Marion Cotillard)とMagdaの姉妹がエリス島に降りたち移民審査を受けるところから始まり、Magdaは肺を病んでいるからと診療所に隔離されてしまい、Ewaは訪ねる先のおばの住所が存在しないから、と強制送還の列に並ばされる。

途方に暮れたところに手を差しのべたのがBruno(Joaquin Phoenix)で、妹のためにも帰国するわけにはいかない彼女が彼についていくとそこはダウンタウンの怪しげな共同安宿みたいなとこで、いろんな女達がいて、彼女たちはバーレスクをやったりしてて、夜には体を売ったりもしていて、Brunoはそこの元締めだったの。
Ewaはひどいって怒りをぶつけるのだが、Brunoも逆ギレして、わかっているのか? 妹のためだ、こうでもしないと他に行き場なんてないぞ、ていうの。
そんなある日、マジシャンのOrlando(Jeremy Renner)が現れて、彼女を救おうとBrunoと衝突して…

James Grayの前作"Two Lovers"も切ない片思いの映画だったが、これもどん詰まりの片思いのお話(そもそも移民て、片思い以外のなにものでもない)で、三角関係というよりはまったく噛みあわないまますれ違い痛みをこらえて歯ぎしりするほんとにかわいそうなBrunoのお話しなの。

Grayの作品をずっと担当しているChristopher Spelmanのスコアが見事で、今回はこれにプッチーニが加わる。 上映前も、上映後のQ&Aでも、オペラをやりたかった、とGrayは言い、そこでいうオペラはMartin Scorseseが大仰な構えでぶちかますスペクタクルとしてのオペラ(ref. "Gang of New York")ではなく、がんじがらめになって互いに縛りあう感情が呻きあう、震えたむきだしの声が織りなすそれで、そういう意味では彼の意図はみごとに反映されていたのではないか。

そしてこの作品もまた、これまでの彼のと同じようにNew Yorkが舞台で、それはたんにエリス島が出てくるから、ということではなく、マンハッタンという場所がそれぞれの片思いを抱えこんで成り立つ猥雑な島だったから、と。

あんなにも切なく悲しくぶつかって擦れあって、でもどうすることもできないエモの塊はラスト、再びエリス島に戻り、カモメの声と共に忘れ難い余韻を残す。 ラストショットがほんとうにすばらしいったら。

Joaquinはいつもの彼なのだが、ぐいぐいに抑えこんでいるのがわかって、それはそれでたまんないかも。 Jeremy Rennerも、いつもの凶犬というよりはどこからか流れてきたマジシャン。ひくひく戦くばかりのMarion Cotillardがうまいのは毎度のこと。

上映後のQ&Aも楽しくて、James Grayがあんな饒舌なひとだとは思わなかった。

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