10.15.2013

[film] Her (2013)

まだだらだら引きずりながら考えているのだが、とりあえず書いてしまおう。
NYFFのクロージングピース、ワールドプレミア、13日の夕方6時から。4時過ぎに地下鉄から上ってみたらStand-byの列に既に10人くらい並んでいたので、とりあえず並ぶ。 風がすこし吹いてて肌寒いけど我慢できないほどじゃない。

Stand-byの場合、直前まで発売にならないしひとりづつ呼ばれて窓口にいくし席の指定はまったくできないのでいつもはらはらなのだが、15分くらい前に金持ちそうなおじさんが定価($50)で売るけどいらない?と言ってきて、列を見たらJ列だったので買ってしまった(現金、ぎりぎりで$50もってた)。 (リンカーンセンターのどの劇場も、だいたいJ列のあたりで椅子がちょっとだけ高くなるんですよ)

最初のNYFF全体のトレイラーとこないだから始まったゴダールのレトロスペクティブのトレイラー(かっこいい!)の後、主催者側でKent Jones、そして監督のSpike Jonzeの挨拶。

少しだけ近未来のLA。 みんなイアピースして携帯端末に小声で話しかけながら歩いている。
Theodore (Joaquin Phoenix) は、手紙の代筆会社に勤務していて、それも端末に声でぜんぶ指示を出すような仕事。妻(Rooney Mara)とは離婚調停中で、高層マンションにひとりで住んでて、同じアパートの住人にAmy Adamsさんがいる。

ある日、彼はなんかの見本市で新しい人工知能OS(OS1だって)を手にして、試しに使ってみることにする。
最初に簡単なインタビューがあって(相手は男がいいか女がいいか? 母親との関係は?とか)、Activateされたそれはサマンサ(声はScarlett Johansson)と言い、彼にとってとっても相性がよくて、ふたりはだんだん親密になっていく。

サマンサはSiriみたいなオンライン秘書、というだけでなく彼の過去のローカルデータも含めてあらゆるプロファイルにアクセスして、更に背後のビッグデータ(けっ)とパターンマッチングした上で彼の声の強弱、トーン、ご機嫌、お好み、すべてに連動、連携、微調整しつつ常に(感情の揺らぎとかも含めて)最適解を返すように仕組まれているので、どんよりしていた彼の日常が安定してポジティブふうになっていくのは当然なのだが、その当然の帰結として恋愛の領域まで踏みこんでいくことになる。

始めはサマンサが見つけてきた相手(Olivia Wilde)とブラインドデートしたりしてみるのだが、なんかうまくいかなくて、結局彼女を、彼女の声や彼女の言ってくることを深く愛していることに気づきはじめる。 なかなかサインできなかった離婚届けも凸凹はあったけどサインできたし。

まあそうだよねー、いまオンラインゲームでやっているようなことを行けるとこまでカスタマイズしていったらできることだよねー。 で、AIポルノとかAI 3P(笑える)とかを経由し、そういうののよいわるいも含めて、とりあえずフィジカルであろうがヴァーチャルであろうが恋愛てなんなんだろうね、みたいなとこまでいく。 まあみんなで考えて元気になったり落ちこんだりしてみよう。

彼とサマンサのやりとり、そこで交わされる感情の奥深くに潜っていくような対話がもたらすいろんな洞察や気づきはふうむ、と思うものの、やっぱり生身の人間との絆、繋がり、やりとりが必要なんだ(げろげろ)とか、そういう方向に誘導しやすいふうにまとまっている、ように見えたのね。
(自分に変なバイアスがかかっていることは認めるけど)

どこにでもいそうな、人並みの浮き沈みを経験し、そこそこ成功している会社員、という設定。Joaquin演じるTheodoreはチョビ髭に丸メガネに明るい色のシャツで、あなたでもわたしでもありうる、アバターみたいな、アバターみたいにふるまう自我とIDと。

ほんとうに、そんな絆とか、自分をわかってくれる存在とか、必要なのか。そこまでしてモテたいのか、認めてもらいたい、認めてもらう必要があるのか。

画面は色彩も含めてどこまでもきれいに抜け目なく近未来のランドスケープとしてデザインされている。 メインテーマはArcade Fire、その他の音はOwen Pallett、これもみごと。俳優さんは誰もまったく、もうしぶんない。 声だけのScarlett Johanssonなんて、ほんとうに凄まじい。
けどこんなの、ほんとうに映画として必要なんだろうか、PVでいいんじゃないか。

かいじゅうたちのいないところ。(あの森みたいなところも出てくる)
かいじゅうたちのいないところを映すことで「いるところ」を指し示しているかというと少し微妙かも。
ここには例えば、"The Immigrant"の身を切るような煩悶も、"Punch Drunk Love"の荒れ狂う暴発も、"Frances Ha"のあっかんべーも、ないの。

みんな村上春樹の小説の登場人物みたいで、彼の小説を好きなひとは好きかもしれないね、とか。

エンドロールに以下の4人の名前があって、みんなであぁ、て拍手した。

James Gandolfini
Harris Savides
Maurice Sendak
Adam Yauch

上映後のバルコニーには、監督、Joaquin、Rooney Mara、Olivia Wildeさんがいた。
外のレッドカーペットでRooneyさんとOliviaさんがそばに寄ってきていた。Rooneyさんは幽霊のように美しく、OliviaさんはDrinking Buddies(TIFFで見てね!)そのままのかんじだった。

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