12.15.2022

[film] The Electrical Life of Louis Wain (2021)

12月3日、土曜日の晩、Tohoシネマズ六本木で見ました。
朝から”Mad God” - “Mr. Landsbergis”と見て、しみじみ世の中が嫌になっていたのを救えるのは猫しかいないわ、と。 邦題は『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』。

監督は英国の変てこやくざ映画”Giri/Haji” (2019)に俳優として出ていたWill Sharpe、古典のキャラクターを任せると異様に入り込んでしまうBenedict Cumberbatchが主演と製作にも入って、ナレーションはOlivia Colman。他にもTaika Waititiとかあ-らこんな人が! みたいなのがいっぱい、英米の猫好きがよってたかって入り込んでいるかのよう。

Louis Wainというアーティストは、子供の頃に読んだ教科書ではSéraphine Louisなどと並ぶシュールレアリズム系のアウトサイダー・アートの人で、そこでの猫はぐるぐる模様のなかにあったりしたのだが、あんなかわいい猫たちも描いていたのかー、と。

ヴィクトリア朝の頃の英国で、貴族の端くれのLouis Wain (Benedict Cumberbatch)は未亡人の母と5人の妹たち(うちひとりは精神を病んでしまう)を養うために絵を描いたり - 右手と左手を同時に動かしてあっという間に描きあげるとか - どんなことでもやってせかせかと働き続けるのだが、誰も助けてくれないし彼自身の金銭感覚もてきとーだったので生活はどん詰まりのままどうしようもなくて、でも妹の家庭教師としてやってきたEmily (Claire Foy)と恋におちて天上に舞いあがって、彼女のが年上だし階級も下なので家族の反対もあって、でも結婚したふたりは幸せで、それなのに彼女が癌と診断されて真っ暗になったそんな時、庭先に現れた白黒の野良子猫にふたりは魅せられてしまう。

Peterと名付けられたその猫をふたりはネコ可愛がりして、Emilyが猫って私たちと同じよね、と言うのでLouisはいろんな活動をしているPeterの絵をいっぱい描いて、それは友人の実業家Sir William Ingram (Toby Jones)の手によって描く端から売れて大人気作家になるのだが、いくら描いても描いてもLouisのところに殆どお金は入ってこない仕組みになっているのだった。

やがてEmilyが亡くなり(彼女と別れるところ、悲しすぎる)、Peterも亡くなって、すべての生きるパワーと支えを失ったLouisは精神病院に送られてひとりぼろぼろに…

猫ともEmilyとも出会う以前にLouisは彼の頭の中だか外だかを稲妻のように走る電流(のようなにか)にも魅せられていて、そういう電気ショック(の源)が彼の周りにはいっぱいあって、その電撃のひとつはEmilyで、もうひとつのは猫で、EmilyはいなくなりPeterもいなくなってしまったけど、そういえば猫はそこらじゅうにいるなあー、って気が付くと(びりびり)。

LouisがDoctor StrangeだったらEmilyにもPeterにも会わずに忘れて済ませるバースを呼びだすのかもしれないが、猫に魅せられて、猫のなかに没入しているElectricalなLifeって - そういえばCumberbatchは”The Current War” (2017)でエジソンを演じていたし”The Imitation Game” (2014)ではAlan Turingだったし、電気/電流系なのかも - どんな雲のなかにあって彼には何が見えていたのか、なぜ彼はそこまでして猫に、猫描きに没入していったのか、その辺のどうしようもなく狂おしいかんじがもうちょっと描けていればー、というのは少しだけ。

でもそうすると今度は、なんで君はそんなにかわいいのかゴロゴロにゃー、っていつもの猫好き忍法にやられるだけになってずるい。(なんで猫なのか? ただの4本足の毛玉獣なのに? をきちんと説明させることを許さないのがElectrical猫のおそろしいところ)

これと同様のノリで『The Electrical Life of 内田百閒』って誰かやらないかしら。『ノラや』のあの世界を。

あと、猫を救おう!ってH.G. Wellsに扮したNick Caveが出てきてラジオで喋ったりするのだが、これがいつものふつうのただのNick Caveがラジオで喋っているのにしか見えなかったりするのがおかしい。

最近は映画以外は、猫動画しか見ていない。映画でも猫が出てくるとよい映画になってしまう。なんかよくない。

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