12.16.2022

[film] Adventureland (2009)

12月4日、日曜日の昼、東京写真美術館の『『甘い夏』公開記念 青春映画祭』ていうのから2本見ました。ここに2週連続で通うことになろうとは。

邦題は『アドベンチャーランドへようこそ』。前に英国のTVで見た。日本では劇場未公開だったなんて。
監督は”Superbad” (2007)の、そしてこの後に名作”Paul” (2011)を撮るGreg Mottola。音楽はYo La Tengoで、彼ら以外の挿入曲もたまんないのが多すぎ。

1987年の夏、大学卒業後にヨーロッパを旅する計画を立てていたJames (Jesse Eisenberg)は、親から家計がやばくてそれどころじゃない、と言われて計画を取りやめ、ピッツバーグのテーマパーク – という程のもんではないローカル遊園地 - Adventurelandでのバイトをせざるを得なくなる。

Adventurelandには管理人にBill HaderとKristen Wiigとか、同僚にMartin Starrとか変なのばかりだし、客のほうもろくでもないのだらけで、おもちゃの馬を走らせるゲームの担当になった彼は客の呼び込みもなんもできなくてうんざりぐったりなのだが、同じゲーム担当の大人っぽいEm (Kristen Stewart)の佇まいにぼーっとなる。けど、彼女の後ろにはパークのメンテナンス担当のMike (Ryan Reynolds) – いまの百倍おとなしくかっこつけてる - の影がちらついていたり。

大人になった(公開当時には40を過ぎているであろう)Jamesが振り返ってみれば甘酸っぱい、でも当時としては相当にばかばかしかったなあー、のひと夏のあれこれ、どたばたじたばたを追っていって、歯ぎしりするというよりはなんだったんだろ.. ってぼんやりして、そこに”Adventureland”っていう寂れ具合もたまんない「遊園」地の名前が映画のように被さってくる - 例えばこんなふうに。

メインになるのはおそらく当時童貞でおどおどしたJamesと(彼 - 男性目線からすれば)すべてが謎めいててわけわかんないが故に猫のように狂おしいEmとのやりとりで、過去数千の青春映画で繰り返されてきた悶々した描写 vs, 短絡クラッシュばかりなのだが、とにかくこの後に”American Ultra” (2015)で再び競演することになるふたりの相性は悪くないので文句はないの。

“Superbad”からブレなくスムーズに移行してきたガキ(オトコ)目線ははっきりとあり、それはそれでよいのだが、こういうの昔ほど楽しめなくなっているような。それはたぶん自分のせいなのだろうな、って(青春映画)。でもこういうジャンルはもうなくなってよいのかも。

音楽は1987年 – レイブもグランジもサブカルも来ていないので、まだあけっぴろげで無邪気でこっ恥ずかしいのが多い。そういうこてこての間にLou ReedとかBig StarとかHüsker DüとかThe ReplacementsとかViolent Femmesとかがわらわら聴こえてきて正気に返るような。 どうでもいいけど、The Cureの”Just Like Heaven”のリリースはもっと後ろだったんじゃ? と思ったら87年10月だった。全体の流れ方としてはまったく異議なし。


Breathless (1983)

↑ に続けて見ました。監督はJim McBride、音楽はJack Nitzsche。

Jean-Luc Godardの長編デビュー作 – “À bout de souffle” (1960) -『勝手にしやがれ』の英語題をそのままタイトルにもってきて『大胆にリメイク!』(宣伝コピー)したものであると。

ラスヴェガスのちんぴらで車泥棒とかをしていて、Silver SurferのコミックとJerry Lee Lewisのロケンロールをこよなく愛するあんちゃんのJesse (Richard Gere)は、休暇でヴェガスを訪れていたときに一晩を共にしたMonica (Valérie Kaprisky) - UCLAで建築を学んでいるという - のことが忘れられなくて、ポルシェを盗んで彼女のいるロスに向かって突っ走るのだが途中で警官に止められて、追いつめられて車のなかにあった拳銃を手にとったら弾がとんで警官に当たって、ロスに着いたJesseは警官殺しで新聞に載っていた。それでもMonicaのことが好きでたまんなくて単細胞の一直線なので彼女を追っかけて、昔の仲間から金を受け取ってメキシコに逃れて結婚しようとするのだがー。

JLGのオリジナル(原作はFrançois Truffaut & Claude Chabrol)がやろうとしたことにはどちらが近いのか、っていうのは(ほんの少し)ある気がして、でも脚本がわるいのかもしれないが、後半のJesseとMonicaのやりとりは結構ぐだぐだでしょうもなくて、そういう「なにやってんのこいつら? - 勝手にやってればー」みたいなのを絵として撮りたかったのかなあ、と思っていたらラストのあのショットですべて腑に落ちる、というかこれを撮りたかったのかー、と。

あと、こういう純朴なバッドガイをやらせたときのRichard Gereの殺気とわけわかんないぎらぎら具合はなかなか素敵なのだが、やはり“Days of Heaven” (1978)の彼にはかなわないかも。

こちらも挿入される音楽はすばらしくて、Mink DeVille、Brian Eno、Philip Glass、Link Wray、主題歌ともいえるJerry Lee Lewisの(そしてエンディングではXの)"Breathless"とか、どんぱちが始まる前に流れるThe Pretendersの"Message of Love"とか、たまんなく盛りあがってよいの。


原則見られればよい、し関係ないはず、なのではあるが、この特集でかかったやつ、やっぱり初夏くらいに見たかったかも。

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