12.05.2022

[film] All the Streets Are Silent: The Convergence of Hip Hop and Skateboarding (1987-1997) (2021)

11月23日、勤労感謝の日の晩、ヒューマントラストシネマ渋谷で見ました。
邦題は『All the Streets Are Silent:ニューヨーク(1987-1997)ヒップホップとスケートボードの融合』。 2021年のTribeca Film Festivalでも上映されたドキュメンタリー。

80年代から90年代にかけての10年間くらい、NYのアンダーグラウンド・カルチャー(サブカルとか、そういう呼称はなかったような)がどんなふうに組成され、それが所謂「文化」のようなものとして認知されるに至ったのか。 WarholとかJean Michel Basquiatといった固有名ではなく”Downtown”とか“Street”で括らざるを得ない事態となっていた、そのありようをアーカイブ映像を中心に追っていく。

映画だと”Beats, Rhymes & Life: The Travels of A Tribe Called Quest” (2012)とか”mid90s” (2018)とか、New Museumでの2013年の展示 - “NYC 1993: Experimental Jet Set, Trash and No Star”(展示のカタログ)とか、参考資料のようなのが割とあるのと、自分が98年まであそこに住んでいたので、あんなところでー、のような関心は当然ある。

監督はJeremy Elkin、音楽はLarge Professor、ナレーションはEli Gesner。

話題の軸になるのは10th Ave.にあったナイトクラブ - Mars Barとコロンビア大学の地下で放送されていたラジオ番組 “The Stretch Armstrong and Bobbito Show”、これらに集まってたむろしにきたヒップホップ界隈の人たちとスケーターの人たちがなんとなく寄って「融合」して、そこから映画が生まれたりファッションブランドが生まれたりセレブが(以下略)

ヒップホップという粗い、ジャンルにもなっていなかったようなジャンルと、スケート、っていうそこらの道路を走っていくだけのスポーツにもなっていないようなジャンル - 明確な集団は形成されていないよう - がどうやったら「融合」しうるのか、それって、カリフォルニア・ミュージックとサーフィンがどう、とかロックと革ジャンバイク集団がどう、のようなのと同じなのか違うのか(単なるイメージの接合、なのかもしれないし)。

ここにはナレーションを担当したEli Gesnerたちが撮りためていた膨大なアーカイブ映像があって、モノクロだったり粗いカラーだったりする中にはこんな人が映っていた、あんな彼こんな彼女がこんなところに、という驚きがあり、それを当時の関係者の証言 - Yuki WatanabeとかMobyとか - が補完して、歴史的にすげえだろ、みたいなのまで示されているのだが、果たしてそれがなんだったのか、というところにまでは到達していない気が。

市長がEd KochからDavid Dinkinsだった時代、荒れ放題で荒廃したNYの治安に乗っかるのか隠れるのか、夜中にたむろして騒げる場所を探していた若者たちがばらばら集まってきて、そこでいきなりライムして名をあげるBusta RhymesやWu-Tang Clanなど - が出てきたり、Larry Clark/ Harmony Korineが映画”Kids” (1995)を撮ったらそれが当たってRosario Dawsonが出てきたり、そうやって集まった連中がTシャツを売ったりするようになってそこからブランドのSupremeがうまれたり。 ただこれって自然発生的に集まったり溜まったりしていったもので、「融合」をドライブする力とか特別な場とか人とか焦点があったようには、あんま見えないところがなー。いやそれでも、そうやってNYのヒップホップやスケートボード・カルチャーは生まれたのだ、と言われたらそうなんですねー、としか言いようがないけど。

荒れ放題になった次に、政権がクリントンになり、市長がRudy Giulianiになって警察を大量投入した街の浄化とかダウンタウンのgentrificationとかビジネス活性化がなされて、そこにうまくのることができた、というシナリオが個人的にはしっくりくるのだが、そこらへんの話はやはり出てこないし。

“All the Streets Are Silent”というタイトルはうまいなー、と思って。実際にこの「融合」(があったとしたら)は一般市民にはぜんぜん聞こえてこない遠くのどこかで起こっているようだった。Mars Barは名前は聞いていたけど、10th Aveの方もHouston st.より南も近寄ってはいけないエリア、と(駐在員には)強く言われていた。ので、音楽のライブに行くときには手ぶらで財布は持たず、ポケットにIDとカードと現金を分散して入れて、逃げられるようにしていたし、ブルックリンに行くのはBAM (Brooklyn Academy of Music)に行くときだけ、マンハッタンからの行き帰りは地下鉄ではなくてBAMBusっていう予約制のバスを使っていた(あーなつかし)。そういうのの裏でこんなのが、というのはわかるけど、それだけの、どこかの外国の話のようだし。

なーんか、かっこつけすぎだよね。みんな今はブランドでお金持ちになってよかったよかった、ってだけだし。

でもスケートはやってみたいな。もう20年くらいの片思いだけど。

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