4.04.2016

[film] Iris (2014)

3月13日の午後、新宿でみました。
『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』ていうドキュメンタリー。

この前日にみた”The Big Short”もそうだったが、そもそもどういう原理で動いているのかよくわからない、これはファッションの世界のお話し。 それも作るひと側の世界だったらまだわかりやすいのだが、これはコーデしたり着こなしたりというそれはそれはなにをどうやったらどうなるのかぜんぜんわからない世界の -。
でも、金融による世界制覇はもはやどうすることもできないしやるきもゼロだけど、着たりするほうならなんとかがんばれば(94くらいまでなら)、とかほんの少しの希望とか意欲くらいはある。 どっちみち無理だろうけど。

1921年アストリア生まれのIris Apfelの名を一躍有名にした2005年のMetropolitan Museumでの展示を切り口に、彼女自身の歴史とかNew Yorkファッション界/史における位置、みたいのをDries Van NotenとかBruce WeberとかHarold Koda とかTavi Gevinsonといった人たちの語りで明らかにしたり、実際に街なかで自在にじゃらじゃらお買い物するところとか。

べつにIrisに限ったことではなく、平日にBergdorf Goodmanとか行ってみるとジャングルで一瞬ありえない輝きをみせる極彩色の鳥みたいな老婦人がいっぱいいて、でも立ちどまってようく見てみれば長年の進化の果てにトランスフォームしたなにかとしか言いようがないふうに風景には馴染んでいて、それってTVでみる大阪とか巣鴨の老婦人方の格好と同系なのかちがうのか、たまに考えたりしてしまうのだが、とにかくそんな、都市とジェンダーとファッションと、個と変容と継承といったテーマを考えるのには最適のいっぽん。

ぜんたいとしては、ばばあただもんじゃねえな、くらいしか言葉はでてこない。

夫のCarlと夫婦そろって目利きぽいので、白洲 次郎 & 正子みたいなもんかしら、と少し思ったりもしたのだが、白州のふたりの毛並みと育ちのよさ、みたいのよりは、やはりNYという都市が彼らの目と捕まえたいろんなのを自分のものにする技を - 情熱と大胆さを慎ましさを - 育てて磨かせて世界にふたりしかいないようなふたりにした、ということは言えるのではないか、と。
そして彼らと同じようにこの都市が育てた唯一無二のファッションのひとに、例えばBill Cunningham - 1929年生まれ - がいる。

あとはやっぱり自分で試したんだろうなー、て。そのためには自分を外見も含めて本当によく知らないと、受け容れないと難しくて、その辺のナルシシズムと自己対象化の境界とか壁とか、そんなのふつうに生きていくだけでもさあ、ていうか、だからファッションていうのはそもそもそういうことなのよ、て このおばあさんはにっこり柔らかく教えてくれる。

もうひとり忘れてはいけない老人が、たまに画面の端に朗らかに映りこんでいて、それが監督のAlbert Maysles - 1926年生まれ - でこれがほぼ最後の作品となってしまった。本当に残念だなあ。
Rufusの“Milwaukee at Last!!!”もこの人なんだねえ。

前に住んでいたアパートが一瞬映ったので、ちょっとだけきゅんとした。

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