4.08.2016

[film] The Hateful Eight (2015)

19日の土曜日の夕方、二子玉川でみました。187分。

南北戦争の直後、一面雪まっさらのワイオミングの冬、乗っていた馬が死んじゃったからと馬車が止められて獲物の死体3つを抱えた賞金稼ぎWarren(Samuel L. Jackson)が乗りこむ。先に乗っていたのは生きた獲物(Jennifer Jason Leigh)を手錠で繋いだ賞金稼ぎRuth(Kurt Russell)で、賞金稼ぎふたりは知り合いらしい。更にもうひとり、馬車がこれから向かう町 - Red Rockの新任保安官(Walton Goggins)だという男が乗ってきて、この4人 + 御者でRed Rockに行こうとするのだが雪がひどくなったので途中のミニーの洋品店でひと晩を過ごすことにする。
店にいるはずのミニーとその旦那は出かけていて不在で、先にいたのは店を任されたというメキシコ人(Demián Bichir)と、足止めをくらったRed Rockの絞首刑執行人(Tim Roth)と、老将軍(Bruce Dern)と、得体のしれないカウボーイ(Michael Madsen)の4人で、いろいろ訳ありそうな計9人が閉じこめられたラウンジで暖をとったり食事をしたり話をしたり殺しあいしたり、ともあれ共に過ごすことになる。

宣伝では密室ミステリーとか言っていたが、解かれなければならない謎なんてどこにもなくて、知っている奴のことは知っているけど知らない奴のことは知らない。それだけのことで、でもなんか互いに探りあいみたいのを始めてしまったのはどいつもこいつも「自称xxx」みたいな嘘つき顔してて、ついでに血なまぐさくて殺気とかを感じたから、ていうか全員がそういう臭気ぷんぷんで棺桶片足みたいな連中ばっかしだったから。

ひとりは賞金がいっぱい掛けられた罪人女で、ふたりは割と名の知られた賞金稼ぎで、ひとりは勲章がついているから南軍の将軍で、あとは得体がしれない誰が誰やら。 もうひとつ、Warrenが持っているリンカーンから彼に宛てられた手紙、これが彼を「ありえない」レベルの「ひと」にのしあげているのだがそれにしたって、それがどうした? だったりして、結局のところ、ある出来事をきっかけに殺しあいが始まる。 それは生存本能が前にでるサバイバルゲームではなく、義を背負った懲らしめお仕置きでもなく、ほんとにシンプルな憎悪 - おれを誰だと思ってるんだ気に食わねえ - のみが火花を散らしてぶつかりあって、あとはひたすらいつものタランティーノの焼きごて。

水平方向をびゅんびゅん飛び交う銃弾とか、たまに縦方向で思いがけない動きがあったりするのだが、基本は狭い空間のなかで痛かったりげろげろだったりのバリエーションがたっぷりで、憎悪っていうのはこんなにもいろんな形をとって現れるものなのね、と。

という割とミニマルな、始まりも終りもないような、かっちり作りこんだ音楽みたいなかんじの映画なので、見えないところでエモが唸りをあげて爆発・暴発していくタランティーノ節の起伏はあんまなくて、でもそこにゆったり堂々としたEnnio Morriconeが被さるとなんかすごい。これと外界をみっしり埋めつくす雪と嵐に吹きさらしになって憎悪もなにもぱりぱりと彼方に散っていく。

それにしても残念なのはー、この雪のひんやりした細やかさを監督指定の70mmフィルムで見ることができたらなー。 3000円だって行くのになー。
もう日本には70mmの映写機ってないのだろうか。爆音だの4Dだのにお金かけるのもいいけど、フィルムで撮ったのはフィルムで見るのがいいに決まってるのにさ。
恵比寿でやっていた「2001年..」だってもうじきリマスターをやる「地獄の黙示録」だって、70mm版がどんなに凄かったか、あれに勝るものなんてあるもんか、て確信があるの(←やな年寄り)。
最近のだとPTAの”The Master” (2012)の70mmもすごかったなー。

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