4.16.2016

[film] ジョギング渡り鳥 (2015)

こっちから先に書いてしまおう。
15日、金曜日の晩、上映最終日に新宿でみました。

とにかく見なきゃていう想いだけはずっとあって、でもどんな映画かよく確認しないで行ったら、上映前に俳優さんとかが全員舞台に出てきていきなり合唱とかを始めてしまう - しかもとっても上手なかんじがしない - ので少し困って、そのかんじが157分、最後まで続いたのだったが、でもそれがいけないなんて誰がゆったか?

変な映画で、変なお話しだった。
冒頭からなんで日本語字幕のドイツ語ナレーションなのか。 あらすじなんてUFOの目撃情報とおなじで見た人によってぜんぶ異なるだろうし律儀に書けば書くほどわかってもらえないものになる可能性がありそうだから書かないほうがよいのかも。

でもいちおうがんばって書いてみると、河原とか畑の間のコースをジョギングしていく人たちがいて、河原のお茶飲み場で会う彼らは知り合いのようで、そんな彼らの上空に現れた円盤が鳥に攻撃されて(されたくらいで)地上に落ちてきてそのなかから集団で現れた連中は腐ったカワウソみたいな衣装でよくわかんない言葉をかけあいながら撮影機材一式を携えてその土地の人々の挙動を記録しようとしているらしい。そのうちこいつらはモコモコ星人というやつらであることがわかるのだが、 彼らの姿や声は地球人には見えなくて聞こえなくて、そいつらが、ひたすら走ってばかりの郵便局娘とか、オリンピックを目指す3人組とか、映画を撮ろうとしている3人組とか、建設会社の3人組とか - なんでみんな3人なの? - につきまとってなんかを記録していく。

スポーツもので群衆もので家族ドラマで異星人もので反原発ものでやきもち純愛ものでメタSFでメタ映画でバックステージもので御当地映画でそれらを全て包含した渡り鳥映画である、と。 渡り鳥の生態を追い、渡り鳥の生態を追う人々を追い、渡り鳥の目となり、それを追う日々の目となって世界を描く。そのえんえんぐるぐるを描くこと、その重なりと連なりの運動、或いは塊に固化し、或いは宙に飛散しようとする運動の総体として世界を捉えようとしている。 だからクリナメンでエピクロスでルクレーティウスなのね。

だからその世界 - 深谷市というところにあるらしい - には、水飲み場があり、ネギとブロッコリの畑があり、鉄道の駅があり、焼肉居酒屋があり、郵便局があり、古本屋があり、建設会社があり、片付けられない部屋があり、廃墟があり、河原があり、竹とんぼとかぱたぱた(あれなんていうの? ほしい)で遊ぶこともできて、ほんの少しの恋愛があって、ラジオから流れてくる歌があって - 要はほとんどすべてが揃っているわけだが、それなのになお、なんで鳥は世界の向こう渡っていこうとするのか、人は遠くに走っていってしまうのか、ということなの。

もちろんそれらに答えが与えられるわけではなくて、その点では我々のこちら側とつながった状態で、我々のそれ(それはそれ)がそうであるように、なにかが始まるわけでも終わるわけでもなく、移動とか渡りとか撮影とか歌うたったりとかを続けながら、でもなにかがどこかでどうにかなっている。 たぶん。

登場人物にはコントロールを失って害毒を撒き散らす世界の原発とかその関連の名前 - ちえるの、うくらいな、すりまい・るる、せしうむ、など - が付けられていて、そいつらがジョギングしたり映画を撮ろうとしたり恋愛しようとしたり、要するに地球にとってろくでもないことしかしようとしない。ひょっとして、だから渡っていってしまうのか、とか。 それで許されると思っているのか、とか。  ジョギングと同じように考えは同じトラックをゆっくりと周りはじめる。 それは世界制覇とか統一宗教とかをたくらむ連中の思う壺なのか。 或いはひょっとして、渡りは(渡りの撮影は)残された最後の希望なのか? 

複数のカメラの目と目線とそれぞれの濃さ淡さ、様々なレベルと粒度の走る音、羽音、ヒトも含めたいろんな鳴き声、少なくとも世界はそんな単純なもんではない、えらく錯綜していてぐじゃぐじゃでリアルで、そんなことも教えてくれる。

オルタナ・バージョンが作られるべきなのかも。
ぜんぜん渡らない、動かない無産のぐうたらの。 『うたたね眠り猫』みたいなやつ。 こんどのは空からじゃなくて地底から現れて、Minionsそっくりで、連中はやはりバナナをむさぼり食らうの。

上映後に現れた監督の挨拶がなんだかとても感動的で、ロビーに出るとさっきまでモコモコ星人だった人たちが沢山いた。 ひょっとしたらリアルモコモコ星人かも知れないので遠くから見るに止めておいた。  ぶじに飛んでいってくれたよね。


熊本の地震の被害が広がりませんように。早く安心して眠れるようになりますように。祈。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。