6.20.2015

[film] Suzanne (2013)

13日の土曜日、夢のような『ピクニック』の後で京橋に移動して見ました。

この時間、「EUフィルムデーズ2015」のこれにするか、アンスティチュの『輝くすべてのもの』にするかで悩んで、こっちにしたの。 EUフィルムデーズのなかでは『Song of the Sea ~海の歌』(2014)を見逃してしまったのがいまだにかなしい。

すーばらしくよかった。 Suzanne、のおはなし。 

ママが亡くなった後、トラック運転手のパパに男手ひとつでずっと育てられてきたSuzanne (Sara Forestier)とMaria (Adèle Haenel)の姉妹がいて、パパはある日高校に呼び出されるとSuzanneは妊娠していてもう3ヶ月過ぎています、て言われて愕然として、彼女は父親が誰だかわからない男の子を生んでおとなしく家にいたと思ったら、競馬場でJulienていうちんぴらと会ってから息子をほったらかすようになり、やがて彼と駆け落ちして消えちゃうの。

次に家族のまえに現れたSuzanneは強盗してとっつかまって刑務所にいて、裁判でパパは泣いて、でも出所してからは里子に出された息子と会ったりダイナーでバイトも始めて堅気になって、そしたら強盗のときに捕まらずにどこかに逃げていたJulienが突然現れるの。 怒り困惑しつつも彼に誘われるままに偽造パスポートでモロッコに渡り、女の子を生んで生活も少し豊かになって地元に戻ってくると..

無骨でぶっきらぼうだけどママへの墓参りを欠かさない父と、鷹揚で大雑把だけど芯はしっかりしている妹、Suzanneの挙動振る舞いはそんな彼ら家族の目から描かれて、彼女自身の内面の葛藤や慟哭が直に描かれることはないので、ふつうに対話不能のしょうもないあばずれになっちゃった娘/姉のように見えるだけなのだが、それでも瞬間瞬間でこぼれ落ちてくる表情、身体の動きからところどころひっかかってつっかかってくるSuzzaneを前にすると、あんたって娘は… て誰もが俯いてしまうだろう。
これを「家族の絆」みたいな陳腐なところに落とさずに(理解も和解も赦しもない)、愛と退屈のがれの衝動で向こう側に突っ走っていってしまったひとりの女性の目差しの反対側の溜息として映しだしたところがよいの。

それにしても、Suzanneを演じたSara Forestierさんのすごいこと。 深夜バスでJulienと再会したときの惑いと怒りと愛おしさが入り混じったなんともいえないじたばたした抱擁(→ ”Love Battles”もまた.. )とか、イミグレーションのとこで名前を聞かれた際の鳥肌の一瞬とか、彼女の身体の動きなしには成り立たないSuzanneだとおもった。

妹役のAdèle Haenelさんもまたすばらしいのだが、これは翌日みたやつのほうで。

音楽はラスト、Nina Simoneがぼそぼそごつごつと歌うLeonard Cohenの”Suzanne”もすてきなのだが、みんなでオープンカーで遊びに出るときにぶっ放されるHoleの”Playing Your Song”の痛快さがたまんない。(Mariaの部屋にはHoleのポスターが貼ってある)

これだぜ、って。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。