6.13.2015

[film] Deux jours, une nuit (2014)

6日の土曜日の昼、渋谷で見ました。小ぎれーなBunkamuraおばさん達には関係ない世界じゃろうて。

「サンドラの週末」。 英語題は”Two Days, One Night”。

療養休暇を取っていたSandra (Marion Cotillard)は復職直前の金曜日に電話を受けて解雇だから、って言われて、そんなのひどい、て慌てて掛け合ったら月曜日に再投票、ということになる。16人の同僚のうち半分がサンドラのためにボーナスを諦めればよい、と。

(アメリカでは病気で長期休んでいるひとをその最中に解雇してはいけない、ていう法律があった気がしたけど、フランスはちがうのね)

ただでさえ鬱でしんどいのに、月曜日が頭の隅にでてくる週末なんてさいてーなのに、しかもそこで仕事の同僚なんかに会いたくないし、しかも頼み事なんてぜったいしたくないし、自分が逆の立場だったら相談されるのもやだし譲りたくもないし、そもそもこんなのに勝ったから負けたからどうだっていうのよ、だし、でも生活が苦しいことは確かだし、夫も負けるなっていうから、しぶしぶひとりひとりの家庭を訪問してお願いをするの。 自分はもうだいじょうぶで仕事に戻りたいのでボーナスを諦めてくれないかしら、と。

会社勤めをしたことがあるひとなら誰でも頭と胸と胃のぜんぶが痛くなるような難題を週末に(リピート)週末に、抗鬱薬を飲んだり悔し泣きしたり嬉し泣きしたりしつつ、ひとつひとつ潰していく。返ってくる反応は見事にばらばらで、即座にだめ、っていうひともいるし、考えた末にやっぱり、ていうひともいるし、想像していたとはいえ自分はその程度にしか見られていなかったんだな、とか思うし、書いているだけだと地味で滅入る話にしか見えないし、サンドラなんて3日間で衣装3回しか替えない(これはふつうか)のだが、実はものすごく熱く手に汗を握ってはらはらじりじりして自分のこととして思って考えてしまう展開で、この地続きで地味なのに異様なテンションはDardenne兄弟の前作『少年と自転車』にもあったものだけど、なんなのだろう、て思いつつ見ていた。

いわゆる人情噺 - 人の心の暖かさとか絆とかが物語を纏めてくれるようなものではなくて、上り下りの起伏が激しくて終りが見えなくて、でも確かにある区切りにはなった、あとで落ちついて振り返ればそんなものかなー、みたいに見えなくもない週末の旅行記、のような。

Marion Cotillardさんは「君と歩く世界」(2012) でも「エヴァの告白」(2013)でも、なんであたしばっかりこんな? みたいな必死さばかりが全開でかわいそうでならないのだが、隈げっそりのその姿が絵になってしまうのだからしょうがない。

彼女は今、リンカーンセンターでオネゲルのオラトリオ - “Joan of Arc at the Stake” (1935) - 「火刑台上のジャンヌ・ダルク」の生舞台に立っているの。 見たいねえ。

音楽はあんま流れないのだが、一瞬元気を取り戻したサンドラとみんなが車のなかで”Gloria”を合唱するとこ、とってもよいの。

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