2.14.2012

[film] La Vallée close (1995)

金曜日の続き。 恵比寿でNew York Timesのドキュメンタリーを見た後、日仏のカプリッチ・フィルムズ特集に行きました。

Jean-Claude Rousseauによる『閉ざされた谷』。 IMDBではDocumentaire、だって。

地図を完成させるための(機能させるための?) 12のレッスン(と最後に凡例)、ということで、「基本方位」とか「方向の確認」とか「水源」とか「丘」とか、地図を作るのに必要なパーツや作業が各レッスン(のタイトルとして)提示されていく。 ただしレッスンのなかには、すっとばされているものもある。

レッスンと言っても具体的なインストラクションとか作業の結果が示されるわけではないし、そもそもそれがどこの、なにを表す、なんのための地図なのかは最後まで明らかにされない。 
或いはひょっとして、延々続く練習問題のようなもんなのか。

いくつか繰り返される映像(ただし同じものの反復ではない)があって、それは殆ど8mmで撮ったような粗めでローファイの、遠近もぐんにゃりした遠景、廃墟となったホテル(?)、廃墟になる前の(?)ホテル(?)、家族(?)、路地とか遊園地とか、観光地になっていると思われる谷(奥が暗くて水が流れている/湧いている?)、それをのぞきこむ観光客、とか。 人のクローズアップはまったくない。 でてくる人の名前は4つ。

音は、これもローファイになったFrançois Musyのような音と音の繋ぎ、いろんなテキスト(ベルグソン? アトムがうんたら)を朗読する声、電話で女のひと(ギー?)に話しかける声、それによると昔若者のグループがここに押し入ってなんかやったようだ、とか。

映像に映っている観光客の服装や"I just called to say I love you"のフランス語バージョンをカラオケで歌うとこがあったりするところから、おそらく映像の断片が撮られたのは80年代初、この地図を作ろうとしているひとがまだ小さい頃のようだ、とか。

展開されていく映像はタイトルの「閉ざされた谷」を中心とした地図なのか、(例えば)地図の作成とは「閉ざされた谷」のようなどんづまりに向かうものなのだ、ということを言わんとしているのか、そのへんもよくわからない。

要するに全体がぼんやりした夢のなかを彷徨っているようで、ああこれはついていけない、と思うとレッスンが終わって、そうだこれはレッスンだったんだ、と思いなおして次のチャプターに行って、それを繰り返しているうちに140分が経っていた。

ただ、何かを思い出すこと、追いかけること、のようなひりひりした切迫感みたいのは伝わってきて、それがほとんど全てなのだった。

ラストの「凡例」に出てきた海岸にぽつんとある公衆電話ボックス、そこに歩みよる男を遠くから、の絵はなかなかよかった。

しかし、この作品を捧げられた「小学校教諭だった母」は、これを捧げられてどう思ったのかなあ。

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