9.19.2011

[film] Tinker Tailor Soldier Spy (2011)

こんかいの旅、仕事は19日からだったので、到着は18日でもよかったの。
でも18日のチケットがキャンセル待ちになり、17日の予備を押さえて、少し時間が経ったところで、ぎりぎりまで粘ればなんとかなったのだろうが、さっさと諦めて17日発にした。

それはこの映画が公開直後であることを知ったから。
今のこの時期、ロンドンを訪れて、この映画を見ないで済ますような英国好きなんているだろうか?
そんなのありえない!  いまはそんな英国好きでもないのだが。

というわけで、日曜日の朝11時から、LeicesterのOdeonの一番でっかいスクリーンで見ました。
ここはほんとにでっかくて、音がものすんごくいかった。 NYでもこのレベルのは、あんまないかも。

"The Girl with the Dragon Tattoo"の予告、ここのゴージャスなサラウンドで見て、改めてぶっとぶ。
終盤の、ぶっといベースがセンターから襲いかかってくる瞬間、鳥肌が立ちすぎて鶏になるかとおもった。
それくらい、すごいわ。 "Social Network"よか驚異の音像かも。

さて、これの原作を最後に読んだのはもう何十年も前なので、筋憶えているだろうか、と不安だった。
スマイリー3部作のなかでは、最後のがいちばん好きで、最初の(これ)と2番目のはなんかつらいのであまり読み返さないしー。
ネタばらしたところで、この作品(原作も)の価値を貶めるようなもんではぜんぜんないのであるが、いちおうばらさないように書いてみよう。

スマイリーにGary Oldman, コントロールにJohn Hurt, ビル・ヘイドンにColin Firth, ジム・プリドーにMark Strong, リッキー・ターにTom Hardy, パーシー・アレリンにToby Jones, こんなぐあい。

他はともかくとして、誰もがGary Oldmanによるスマイリーには驚いたとおもう。 
自分のイメージだと、もっとよれよれで、くたびれた喪失者、というかんじがあったので、スマートすぎやしないか、とか。 でもびっくりするくらいよかった。 昔のTVシリーズで、この役をAlec Guinnessがやっていたことを考えれば、そんな違わないのかも。 それに原作のル・カレがExecutive Producerをやっているのだから、そこはもう黙るしかない。
でも、原作をまったく読まないでこれ見たらどう見えるのかは、わからないねえ。

ジム・プリドーがブダペストで撃たれて、コントロールとスマイリーがサーカスを追われるところから始まる。
原作の膨大な襞襞あれこれとその厚みを再現しようとするのは無謀なだけなので、メインは彼のモグラ探しとそれに関わる協力者、彼らの記憶にある過去の出来事を手短に積み上げていく、というやりかた。

派手なアクションも大規模な移動もない、かわりにあるのは複数の、いろんな声とその音。
証言であり、報告であり、テレックスであり、暗号であり、緊急だったり、助けを求めたり、隠蔽されたり、無視されつづけたり、モグラ(二重スパイ)を巡って世界中のあらゆる場所から寄せられた声を、出来る限り映像の上に積みあげていくこと。 (再生される音声のクオリティがすばらしいの。メディウムに応じた使い分けも)

冷戦の時代、そうした無数の声によって形作られた地図が確かにあって、その交錯のなかで沢山の血が流され、その上で苦闘する人々の姿と像があった、それがそれなりにきちんと描かれているので、あとはいいかな、と。
誉めすぎかもしれないが、アサイヤスの"Carlos"と比べてみるとおもしろいよ。

スパイでありながらも、であるが故に、過去のいろんな声だの亡霊に向かい合い、束縛をうけ、最後には自分で決着をつけるしかない。 この作品でもアンの背徳と宿敵カーラの影、はきちんと背景として映りこんでいた。
ル・カレのスパイもののもつ普遍性、というか揺るぎなさはこの辺にあって、というかこれしかないの。

モグラが現れるまでの最後の30分の編集と音の演出は、なかなかきもちいかった。

あとはファッションがすんごい。部屋の調度や壁にかかった絵画まで含めたプロダクション全体の力の入れようも尋常ではなく、間違いなく今後、映画のなかの70年代英国ファッションのリファレンス(でも誰もまねできねえ)になることでしょう。
コスチュームはJacqueline Durran、Special Thanksには全面的にPaul Smithとあった。
女子の影なんてあとかたもない、救いようもないくらいかちかちのMan's Man's Worldであるが、ここまでやってくれればいいわ。

ビル・ヘイドンとジム・プリドーはみごと。 Colin Firthは、「王様」よかよかったかも。
Mark Strongはこれまでの狂犬系の演技は押さえてて、よかった。 あ、それをいうならGary Oldmanもか。
リッキー・ターもいかったねえ。Michael Fassbender版も見てみたかったかも、だけど、彼でもぜんぜん。
コニーはあんなもんかな、ジェリーはちがうんではないか? とか。

音楽は、Pedro Almodovar作品を多く手掛けてきたAlberto Iglesias。
ちりちりこまこました丁寧なかんじがいかった。 ぶあついストリングスだと、ちょっとちがうし。

ジム・プリドーと小学生のエピソードは、もうちょっとちゃんと描いてほしかったかも。

そういえば彼、首折られてしんだんじゃなかったっけ?

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。