7.15.2011

[film] Hesher (2010)

あっつい。 なきたい。

邦題は『メタルヘッド』だが、これはちょっとちがうよね。
原題は"Hesher"で、これはJoseph Gordon-Levitt演じるメタラーというよりスラッカー、の名前で、彼はメタルを聴いているようではあるが、メタルの世界観(そもそもそれってなにさ?)やその音に誘発されて出来事やアクションが転がっていくわけでもなければ、終わって頭のなかがメタルに染まってしまうわけでもない。

こうしておけばメタル系のリスナーも集まってくるのかもしれないが、マーケティングにイメージとしての「メタル」を使っておもしろがるのはもうやめるべきだ。 メタル村のひとたちはみんなよい人たちだから、微笑んでなにも言わないだろうけど、とってもきもちわるい。 こういうきもちわるいの挙げていったらきりがないわけだが。

父と子(T.J.)と祖母が暮らしてて、父は沈んで全てにやるきがなくて、T.J.もいじめられててしょぼくれてて、レッカーで持っていかれた潰れた車を欲しがっている。そんな彼らの家に突然上半身裸のHesherが現れておなじ屋根の下で暮らしはじめるの。

そういう闖入者がきて、居座られて、彼らは最初は唖然とするものの、追いだそうとしたり警察よんだりすることはない、そういうことすらどうでもいい、それくらい脱力・自失している、と。

Hesherのほうも、勝手に飲み食いしたりするものの、TVみたり洗濯したりギター弾いたりおばあちゃんとお話ししたりする程度で、ほぼ無害/どちらかというと有害、程度。 極悪な有毒ななにかを持ちこんだり垂れ流したりするわけでもない。
ただいつも御機嫌、というわけではなくて、どちらかというと不機嫌、なに考えてるのかわかんないので不気味、たまに助けてくれるようなことをしてみたりする。 が、元々なんのためにいるのかわかんない奴なので、基本はなんも期待できないし、すべきではない。 妖怪だよね。 

でも、そもそも他者、というのはこんなようなものなのではないか、同じ屋根の下にいようがいまいが。
ということをT.J.はだんだん学んでいく、他者と暮らす、というのはこんなふうで、その向こうにはなにかしら野蛮でぼうぼうした世界が拡がっていそうだ、と。

最後に、Hesherは、ああいうのを残してどこかに去っていくのね。

で、まあ、Hesherを演じるJoseph Gordon-Levittが、とにかくすばらし。
ただ不気味にいるだけ、でじゅうぶんにあやしくて、でも無臭のようで、かつてのキアヌがはっきりと(多分に無意識に)持っていたあのかんじを、このひとはコントロールされた演技として前にだしてくる。

彼のリアル・イメージとしては元QOTSAのNick Oliveriさん(こないだ逮捕されてたけど)あたり、かなあ。 

全体としては、初期のジャームッシュの映画がもっていたとぼけて枯れたかんじがなんとなく。あれよか雑だけど。 でも、おばあちゃんとのお散歩のとこは、あれはなんかずるい。反則だよな。

本作のプロデューサーでもあるNatalie Portmanさんは、ビンボーでいけてないスーパーの店員娘で、T.J.にほんのり好かれたりするものの、かなりどうでもいい役どころで、"Black Swan"みて、"No Strings Attached"みて、"Thor"みて、これみると、かんぜんになんか見失っている気がしないでもない。 本人がしあわせならよいけど。

シリーズ化は、ないか・・・

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。