8.21.2015

[lecture] Chris Marker et la Russie / URSS

7日金曜日の午後、赤レンガからへろへろになってアテネフランセにたどり着いた。
余りに遠すぎて陽射しでしにそうになって、会社休んでなにやってるんだろ、と。
そしてアテネ・フランセ、4週連続 ...  なんかぜったいおかしい。

クリス・マルケル監督特集の特別番外編として、ロシア映画2本の上映とトーク。

カメラを持った男 (1929)  - “IЧеловек с киноаппаратом”

英語題は”Man with a Movie Camera”。

サイレント。 映画館で客席が開閉してお客が入って上映が始まるところから始まって、タイトル通りにカメラを持った男がロシアのいろんなところに現れていろんな人とか群衆とか街の景色を映し出す。 カメラが切り取った風景とそれを切り取ったり編集したりする男の挙動とは不可分であることを示しつつ、カメラはどんなときにもどんなところにも現れる。85年前の映画とはとても思えない構図のかっこよさと、ところどころでなんともいえないエロ - ブラを外すとことか水着とか - が漂ったりして「男」なのねー、と思って、かと思うと突然出産でろでろー、があったり。
目の延長としての映画、武器としてのカメラ。

あのジガ・ヴェルトフの、映画の教科書とかには必ず載っているジガ・ヴェルトフの作品だけど、クラシックの重さを感じさせずにさらさらと俊敏で、でもやっぱしかっこよいのだった。

幸福 (1934)  - “Счастье”

これもサイレントで、でもこっちはフィクション・寓話。 英語題は、“Happiness”。
貧農で見るからに頼りない夫としっかりがっちりした妻のふたりがいて、夫は妻に「幸福を探してこい」って言われて旅に出て、お金を拾って持って帰って、水玉ブチ(カラーで見たい)の馬を買うのだがこいつは畑を耕すこともできない役立たずで、頭きた妻が自分でがしがし耕したらすごい豊作がきてばんざい、て思ったらぜんぶ絞り取られてすっからかんになって … こんなふうに幸福を求める旅は果てしない悪夢のようで、結局はコルホーズで働けばいいのよ、てなるのだが、同時にそういうののアホらしさ、みたいのもまたしっかりと描かれている。 実直に進めようとすればするほど中心からずれていってしまう両義性のおもしろさ、があるのだった。
 
映画2本のあとで、「クリス・マルケルとロシア・ソヴィエト」ていうお題で、パリ第三大学映画学科の映画社会学者だというKristian Feigelson准教授のトーク。 でっかい声で強く熱く語ってくれてトーク、というよりじゅうぶん大学の講義のようだった。

クリス・マルケルの最初のロシア映画「シベリアからの手紙」(1958) から「アレクサンドルの墓」(1993) によりソ連の歴史を再訪するまでの軌跡を追い、彼がなぜロシア・ソヴィエトに惹かれたのか、を掘っていく。

更にアレクサンドル・メドヴェトキンとジガ・ヴェルトフの対照的な違い - 共産主義や農民文化に対する素朴なノスタルジーと共にあったメドヴェトキンとラディカルな知識人としてユートピアのために映画を求めていったジガ・ヴェルトフ - を明らかにして、クリス・マルケルなぜこの二人に興味を持ったのか、を詰めていくと、やがてそこから以下のような問いに至るのではないか、と。

・映画のユートピアとはなんなのか?
・映画になにができるのか?
・ユートピアをどう撮るのか?
・映画は歴史を理解するために役立ってくれるのか?

ものすごく古典的なサヨクのようでもあるし、でもこんなに真面目で誠実なアプローチ、あるだろうか?
(いや/ない。よね)

最後は、そこから彼のロシア文化に対する愛と失望がなぜ日本への愛に?  という問い。

現代と過去に対する問題提起をロシアと同様に日本でおこなっていたのだ、と。
その問いが持ちこむ緊張関係(現代と過去のせめぎ合い)を通して映画の近代化とはなにか? を問うていたのではないか、と。

クリス・マルケルは画面のなかでこういったようなことを観客に問いかけつつ、自分自身にも問題提起をしていた。
そして時間に対する問いかけ、も常にある。「いったいどこに行けば時間を買えるお店があるのか」と。

時間をオーバーしても全然終りそうにないおもしろい講義で、クリス・マルケルという作家の映画社会学ていうフレームへのはまり具合にとっても感銘を受けたのだが、それよかもっともっと作品見たくなった。

彼がもしまだ元気に生きていたら、国会前にぜったい来て貰いたいんだけど。


8日9日の土日は、銚子に帰省してお墓参りと花火大会だった。
あんず飴は2本しか。 あんず飴の屋台が減ってきていて、とってもかなしかった。

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