12.08.2013

[film] The Saragossa Manuscript (1965)

ああもう書くじかんも見る時間も読む時間もぜんぶ - 。

1日の日曜日の昼間に見ました。 「サラゴサの写本」 - "Rekopis znaleziony w Saragossie".
昨年のポーランド映画祭で逃してほんとうにくやしかったやつで、今回はぜったい、で、ほんとは11時のアニメーションの回から詰めるべきだったのだが、前日のHostess Club Weekenderではしゃぎすぎたのでぜんぜん起きれなかったの。

ナポレオン戦争の頃の戦場でフランス兵とスペイン兵が納屋のようなとこで鉢合わせして、そこにあった古書を見ていたスペイン兵が、これはぼくの先祖の話だ! て言って、そこからその先祖 - アルフォンソが主人公である昔昔の話になる。 アルフォンソが山を越えてマドリードに向かおうとするのだが、そこには極悪な山賊兄弟とか謎の美人姉妹とかがいて、すんなり前に進めない。 召使が消えてしまったり、旅籠にたどり着いて姉妹に振るまわれた酒を呑んで気がついたら、とか、途中から割りこんできた隠者の話の世界に入りこんだり、世界が幾重にも入れ子になっていて、夢なのか現実なのか、時間軸もどうなっているのかわかんなくて(3層か4層くらいある気がするが、ひょっとしたらぜんぶフラットかもしれない)、登場するひとたちの顔も見たような見ないようなで、でも話ぜんたいがめちゃくちゃかというとそうでもなくて、それは夢というのがそんなにめちゃくちゃではなく、夢のなかでは「わかる」のと同じ程度にはわかって、映画としてひとつの物語、ひとつが起点となったいくつかの物語を描いていることはわかるの。 夢を見ている時間とすれば、182分はぜんぜん長くない。

最初は「聖アントワーヌの誘惑」みたいな話かなあ、と思っていたのだが魑魅魍魎も宗教もあんま関係なくて、マッチョな権力とか見栄とか、女女女とかでひたすら突っ走る、そんなかんじの。

やがてそこで経験している山賊兄弟とか姉妹とかがみんな本のなかに描かれていることがわかり、更にそれは写本である以上、常に新たに書き加える、書き加えつつ読むようなことも可能であることがわかると、この果てしない物語の全貌がいつまでも超えられない山の向こうに見えてきてくらくらする。

それはめんどくさくてやたら長い、けどおもしろくて止まらなくなる本をきちきちと読み進めていく快感とおなじ心地よさをもたらしてくれて、アルフォンソも隠者も狂ったひとも寝取られ貴族も童貞小僧もみんなずーっと本だか映画だかのなかで彷徨い続けている、恋をしたり決闘をしたり追っかけたり追っかけられたりを繰り返しているのが見える。

こんなふうに映画も本も世界をまるごと包みこんでしれっと存在し続けるんだねえ、ほんとうだろうが法螺だろうが、という大風呂敷感がたまんないのだった。

この作品に魅了されたというブニュエルの法螺映画と比べるととてもかっちり、スタイリッシュなかんじはして、特に次のエピソードにジャンプする瞬間、そこから戻ってくる瞬間のつなぎは素敵だとおもった。

昔、国書刊行会から出ていたJ.ポトツキによる原作(邦訳は全訳ではないらしいが)も読みたいねえ。

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