11.11.2012

[film] 「女の小箱」より 夫が見た (1964)

6日の火曜日の晩、低気圧でへろへろで、愛欲なんてどうでもよかったのだが、シネマヴェーラで1本だけ見て帰りました。

監督は増村保造、原作は黒岩重吾の『女の小箱』。 やっぱし読んだことないわ。

若尾文子と川崎敬三が夫婦で、でも夫は自分の会社の謎の投機筋からの株式買い占め対応で忙しくてあまり家には帰ってこないので、妻はずっと悶々している。 彼の会社の株をせっせと買い占めをしているのはクラブを経営したりしているばりばりの田宮二郎で、マダムで愛人の岸田今日子がいろんなとこから色落としで資金を集めてくるの。

クラブで働く女(江波杏子)経由で情報を得ている川崎敬三への報復として夫への不満たらたらの若尾文子を誘惑した田宮二郎は、つんつんした、でも一途な若尾文子に次第に本気になっていって、夫のひどい仕打ちに我慢できなくなってきた彼女も、当初の拒絶からだんだんに傾いていくの。

よくありそうなサラリーマン夫婦の崩壊をフィルム・ノワールのような裏社会との関わりを絡めて描いているようで、それは男社会の金と体裁をめぐる戦いであり、女同士の愛と独占をめぐる戦いでもあり、でも、その境界を超えて最後まで留まろうとするのは田宮二郎と若尾文子の一途で不器用な純愛で、メロドラマとしてとってもすばらしくよかった。

タイトルの「夫が見た」はあんまよくわかんなくて、だって夫の川崎敬三は同情の余地なしの最低野郎で、どちらかというと妻が夫の浮気現場を妻が見たところから彼女の反撃が始まるのだし。

冒頭の、自宅で夫の帰りを待つ若尾文子の描写とか音楽も含めてヨーロッパ映画みたいにかっこよくて、そこにきんきんにクールな田宮二郎とか、お化けみたいに強烈な(でもこれはこれで十分素敵な)岸田今日子とかがはまりこんで、その反対側に川崎敬三に代表されるサラリーマン諸君の、べたべた醜い往生際のわるさとかがあって、全てが鮮やかに切り取られた愛憎絵巻で、とっても見応えあるのだった。

増村保造+若尾文子の、もっとちゃんと見ておきたいねえ。

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