1.02.2012

[film] MASH (1970)

毎年の映画初めはクラシックの名作を、ということに決めていて、昨年は元旦にLincoln CenterでJohn Fordの『わが谷は緑なりき』をUCLAのぴっかぴかのプリントで見たのだった (そいからその夕方にCassavetesの"Faces"もみた)。

今年はどうしようかなー、だったのだが、午前10時のうんたら、という年寄り向けの企画(+もうデジタルに移行しちゃうからあとはよろしく企画)でやっているこれにした。
どうせやけくそのくそったれモードだったし。

これを最後に見たのは2010年の9月、Lincoln Centerでたまたまやってた特集上映、"75 Years of 20th Century Fox"の目玉で、40周年のニュープリントが焼かれて、おまけにElliott GouldとTom SkerrittとKathryn Reed Altman(監督の未亡人)のトーク付き、という豪華イベントだった。

何回見たって最高だわよ。
昨年リバイバルされた"Nashville" (1975)のが、テーマとしてより深く刺さってくるものがあるのかもしれないが、フィジカルに傷口をびろびろぐさぐさ拡げたりかさぶたをべろべろに剥がしたりする、それを無邪気に軽妙にやってのけてしまういいかげんさ、それを戦争映画、というジャンルでやっちゃったすごさは、すごいなー、っておもう。

戦争映画ではあるが、戦場のシーンはない。映っているのは負傷したり死にかけの状態で運びこまれてきた兵士とかそのまま死んじゃう兵士とか、その兵士を手当しつつも前線の後方で毎日バカやって遊んでいる医者、遊びを画策して楽しんでる連中ばかりなの。 
戦争の悲惨や悲劇惨劇が取り上げられることはなく、セクハラとパワハラの嵐、いいかげんな医療とかばくちの対象としてのスポーツとか、そんなのばっかし。 
戦争〜? 軍隊〜? だって勝手に送られてきたんだから知らんわそんなの、と。

うううーちがうだろーみんな歯をくいしばって前線で戦ってるんだぞー! とか叫んでも、じゃあ死んでみれば、自殺なんて簡単だよ、やるもやらぬもお好きなようにー♪ とか歌われてしまう。

戦争をこんなふうに描いてしまうことそのものに頽廃とか狂気を見る、というのもまたなんか違っていて、たんにそんなもんなんだ、と。 戦争でのあれこれに意味づけをすること自体、糞だと。

前回見たときのトークで、あるシーン(ジープにお祈りするとこ)の意味を聞かれたElliott Gouldさんが「意味なんてあるもんか。戦争なんだぞ。戦争で起こることに一切意味なんてないのさ。アフガンでの戦争に意味はあったっていうのかい?」とさらっと言い放っていたことを思いだす。
 
こんな映画、もう作れないんだろうなー。たぶんこの系譜にありえる最後の戦争映画、があったとしたら、"Apocalypse Now" (1979) あたりだよね。
"Tropic Thunder" (2008) ですら、ひたすら生真面目に冗談をやっているかんじだったもんなー。

この次の午前10時… は、"Black Sunday" (1977) ですよ。


で、いったんおうちに戻ってお昼寝して、夕方に目が開いてしまったので、シネマヴェーラに行って、"Lili" (1953) だけ見ました。

何回も見てるんですけどね、好きなんですよ。 "MASH"のあとに見ればきっと滲みるものがあるはずだ、と。
フィルムが痛んでて、フィルムがほとんどまっかで残念だった。
ちゃんとしたプリントだと、ほんとに綺麗なのになー。赤の色とか。

16になるくせにいつまでもガキでその挙動にイライラさせられるリリーと、いい大人のくせに暗くてイジイジ人形に隠れてしかものを言えないポールのやりとりに最後までいらつくのだが(じゃあ見るなよ… )でもいいの。 おとぎ話なんだから。 お正月なんだから。

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