3.20.2011

[film] 街燈 (1957)

以下は、先々週に書いて、なんとなく放置してあったやつです。

神保町シアターは25日迄お休みだそうな。 早くみんながいそいそ出掛けられるようになりますように。 ほんとうに楽しい映画ばかりなのだから。

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神保町シアターで先週からはじまった特集『女優とモード  美の競演』はぜんぶ見たいくらいなのだが、そういうわけにもいかず、火曜の晩に『街燈』(1957)、木曜の晩に『鑑賞用男性』(1960)を見ました。

最初の週のテーマは『ファッション女性上位時代』ということなので、出てくる男はどいつもこいつもとことん下位動物でございます。

『街燈』は、渋谷で洋装店を営む南田洋子のところに、弟の落とした定期券を拾ってくれたお礼にと葉山良二が来て、弟は定期券をわざと落として女の子とつきあうきっかけを作るとかしょうもないことをやっているんですごめんなさい、と謝ると、ああそれならうまくいったケースしってるわよ、と銀座で洋装店をやっている月丘夢路のことを話してくれて、それでうまくやってかこってもらっているのがまだ子鹿みたいにきょとんと若い岡田眞澄なの。

この二人の女性の恋バナが中心で、このひとたちは十分たくましくてかっこよくて、君ならひとりでも生きてるよね、と置いていかれるタイプで、その反対側にいる男共は、もうひたすらどうしようもない。

岡田眞澄は、月丘夢路の他にきんきんうるさい中原早苗とふたまたかけてて、更に不良友達にたかられてたりして、なにもかも優柔不断の甘ったれたくずだし、一見しっかりしているふうの葉山良二も変な意地はって上司の命に従うことができずに会社を辞めて、靴磨きの少女に「やめたいからってやめたりしちゃいけないんだぞぉ」と説教されたりしている(そうだよね…)。

この連中が最後結ばれなかったとしてもかわいそうでもなんでもないのだが、女性ふたりのお話はなかなかおしゃれでとっても勉強になる。
定期券と回数券のはなしとかいろいろ。

肝心のファッションは森英恵なのでごくふつうで、中原早苗が乗り回す変な車くらいしか印象に残るとこはなくて、カメラも妙にスタイリッシュなとことださいとこがでこぼこしているのだが、会話運びとかが、なんか憎めないかんじでいかった。
最後のほうで、一見再出発を誓うかにみえるこの二人はこの後もだめ系の男ばっかしひっかけていくことになるんだよね、きっと。


『鑑賞用男性』は、パリから帰国した直後のデザイナー(有馬稲子)が主人公で、彼女が世の中の男性も鑑賞用のおしゃれな装いをすべきだわ、って男性用の変な、嫌味としか思えないような服ばっかり作って着せていくの。 
逆セクハラで、パワハラで(もちろんわざとね)、いい迷惑な話で、それだけで、お騒がせしましたー、てかんじでちょん、ておわる。

監督は野村芳太郎で、だから、『モダン道中 その恋待ったなし』(1958)で岡田茉莉子がやっていたのと同質のしょうもない悪ふざけノリがいっぱい。 
でもこのノリはなんだかきらいじゃない。

今の世はまさに鑑賞用男性が、TVで雑誌でゲームで、いくらでも愛でられる時代になった、と言ってよいと思うのだが、でも、それでもいまだに大多数の男性がむさくてきもちわるくてきったねえのと同じように、この映画に出てくる男連中もどうしようもなくて、だからはなから有馬稲子の試みは失敗しているとしか思えないのだが、それがわかったからかわからなくなったのか、最後はほんと唐突に、無責任にすべてを投げて杉浦直樹と一緒になってしまう。

このてきとーで無責任なノリ、そしてそれもまたお茶目でいいか、って。
だからね、つまるところ恋をしなさい、するのよ! ていうこと?

ここにあるように、男も美しくなくては、とかいう話になると大抵はてめーの面みて言いやがれ、て喧嘩になるのが定石なのだが、この映画に関しては、女性はみんなきれいなので反論しようがない。 異議なし。

とにかく有馬稲子の女版植木等みたいな軽さといいかげんさが徹頭徹尾素敵で、特に彼女のダンスシーンね。 市川崑の『愛人』(1953)でも見られた背筋のピンとしたすんばらしいステップをいっぱい見ることができる。

あと、書家のマシュマロせんせい、あんたいったいなにもの?

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