8.12.2026

[film] Vie privée (2025)

8月5日、水曜日の晩、ヒューマントラストシネマ有楽町で見ました。
邦題は『プライベート・ケース』、英語題は”A Private Life”。

監督は(共同脚本も)Rebecca Zlotowski。 Jodie Fosterが流暢なフランス語でフランスの映画の情景に見事に溶けこんでいる。

パリに暮らすアメリカ人の精神分析医Lilian Steiner (Jodie Foster)がいて、冒頭、ずっと彼女の治療を受けていた患者のPierreが催眠療法士の施術により一瞬で治った、もうここには来ないしこれまでの治療費を裁判所で請求させて貰う、って帰っていって、その晩、患者のPaula (Virginie Efira)が自殺したという知らせに衝撃を受ける。信じられない状態で葬儀の場に向かうと彼女の夫Simon (Mathieu Amalric)からは憎しみを込めた目と態度で非難されて、でも長年彼女を看てきた側からすると彼女が自殺するとは思えなくて、やがてPaulaの娘のValérie (Luàna Bajrami)の訪問を受けると処方箋の紙に何か追記されていることを知って、やはりPaulaは何者かに殺されたのではないか、と思うようになる。

Lilianには関係がうまくいっていない息子のJulien (Vincent Lacoste)がいて、治療内容を記録するMiniDisc(なんで?)を注文して貰ったりしているのだが、その辺りから泣いていないのに涙が止まらなくなって別居している眼医者の元夫Gabriel (Daniel Auteuil)のところに行ったり、でも禁煙を一発で治した催眠療法士のところにいったら、変な夢を見て(見せられて)、とりあえず涙は止まる。

Gabrielの協力を得ながら、不可解な事件の周りを探っていくのと並行して彼女のオフィスが荒らされて本件のカギを握ると思われるPaulaとの最後のセッションの記録が無くなっていたり、無言電話が頻繁にかかってきたりするようになって、やっぱりSimonが怪しいかも、になっていくと、Paulaの亡くなった叔母からの多額の相続金のことを知ったり、Paulaの死後に女性用ヘアアイロンが注文されていたり、Simonを追ってその周辺を探っていくと…

本格推理モノ、というよりパリに暮らすユダヤ系アメリカ人女性が抱えて溜めこんだ家族に対する、自身の老後に対する、愛と孤独に対するいろんな思いが、自殺を装ったのか自殺だったのか親友に起こった事件の周辺と真相を巡ってぐるぐる回って結局は自分に還ってくるような女性のドラマで、全体としては老いを、これまでの罪を受け容れるとは、というのを極めてフランスぽく解消しようとして(がんばるアメリカ人を見て)いるかんじ。 心理療法や催眠療法に対する距離の取り方も、そこで現れてくる夢の置き場などについても、フランス映画だねえ、って思って、フランス映画を見たかんじにはなった。

一番わあ、ってびっくりしたのはLilianが相談にいく師匠の精神科医として出てきたFrederick Wisemanで、彼はLilianがやってはいけないことをした罪悪感の裏返しで変な夢を見るのだ、とさらりと語って彼女を怒らせたりしていて、なんだかとてもWiseman先生ぽいな、って思った。

あと、日仏のVirginie Efira小特集で見た”Victoria” (2016)でもそうだったけど、Vincent Lacosteって、家に籠ってなにをやっているのかよくわからない怪しく変な若者/おじさん、をやらせたら天下一品だなあ、って思った。

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