8.05.2026

[film] Monk in Pieces (2025)

7月29日、水曜日の晩、ユーロスペースで見ました。

邦題は『メレディス・モンク 踊る声、歌う身体』。
Billy ShebarとDavid C. Robertsの共同作・監督によるアメリカのパフォーミング・アーティスト、Meredith Monkを追ったドキュメンタリーで、昨年のベルリン国際映画祭でプレミアされている。

紐のような三つ編みの、ひょろっと質素な恰好で、トライベッカのロフトに陸ガメのNeutronと暮らす彼女の佇まいを挟みつつ、60年代からヴォイス、ダンスを中心としたパフォーマンスの領域をひとり淡々と切り開いてきた彼女のいろんなPiecesを拾い集めてモザイクとして並べたり散らしたり(声なので)伸ばしたりしながら、BjörkやDavid Byrneをはじめとした現代アートへの影響、その広がりを示す。

90年代のNYで、BAMに通っていた自分の感覚からすると、彼女はBill T. JonesやTrisha Brown、Lucinda Childs、Yvonne Rainerといったダンス系のパフォーマーの流れにあって、Merce Cunninghamの影響下、60年代のJudson Dance Theaterの裾野からきた人、というイメージがあったので、”Voice”(踊る声)というこの映画の軸に据えられたテーマというか構図はふーんなるほどー、だった。 

映画にも出てくるが活動初期、60年代の批評ではめちゃくちゃ叩かれていたのがここまで来たのは、やはり映画にあるようにBjörkやDavid Byrneの影響力なのか、彼らのような可聴帯域をぶちぬく変態パフォーマーが注目されだした90年代の文化とかテクノロジーの辺りから掘り下げていった方がおもしろいのかも、と思った。(昔はパフォーマンスの現場にいかないと触れられなかったものによりアクセスしやすくなった、とか)

という外からの見方云々から離れて、Monk自身はずっと声と身体に関わる表現を追求してきた、というところで、最後に残るのは、ひとりロフトで世界と向き合っているような像だったり。 とにかく、きちんと評価されてしかるべきだった人がきちんと紹介されているので、見に行った方がよいの。


Elis Island (1982)

7月26日、日曜日の夕方、ユーロスペースで見ました。
船便到着の前日にこんなの見ていてよいのか、だったのだがこれは公開日が限られているのでしょうがないの。

共同監督としてBob Rosen。

移民の受け入れ口だったエリス島を舞台に、観光客が集まる現代の様子と、モノクロのサイレントのように映し出される当時の移民たちの姿を交互に対照させつつ、異国・異文化に適応すること、その様式に体を合わせること、自国の言葉を使わないこと、等を求められた彼らが歌っていた歌、舞っていた舞い、その表情や振る舞いはどんなふうだったのか、を幽霊のように呼び寄せてみる29分。

当時のリアルな状況やストーリーを追ってきちんと再現するのではなく、自分の頭のなかの、あるいはその場所にこびりついた単一の、集団の記憶や残像は失われた廃墟の隅でどんな声を、音を持ちうるのか、どんなふうに聞こえてくるのかに耳をすませてみよう… というイマジナティヴな控えめな実験。 Monk自身による音楽がとてもよいの。


Book of Days (1989)


↑のに続けて見ました。こちらはMonkの単独監督作で、75分の中編。
New York Film Festivalでも上映されている。 35mmプリントでの上映。

中世フランスの小さな村に暮らすユダヤ人の少女に導かれながら、ユダヤ人差別や迫害、疫病(ペスト)、終末への恐怖が支配した時代の暮らし、家族やコミュニティを描いて、それらが日々の本(Book of Hours - 時祷書ではなく)として積みあがっていくさまを。 

少女の見透して描いたTVや飛行機の絵が、現代(当時)のエイズ禍や人種やジェンダー差別で揺れるNYに浮かびあがってきて、“Elis Island”と同様、こちらにも現代の描写はあるが、入口よりもっと奥に入りこんで当時の生活や雑踏に寄り添おうとしているような。

一回性の舞台でのパフォーマンスから反復可能な再帰性のある映像表現を経て、改めて彼女のパフォーマンスは、過去のそれも含めてその在処とその声が向かう先を見出したのではないか。 ”Book of Days”という土台の上に改めて彼女の”Pieces”を置いて、置きなおしてみること。断片しか聴いたことはないのだが、彼女のオペラ”Atlas” (1991)の旅は、ここでの試みから始まっているのではないか、とか。

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