8月16日の午後、新宿武蔵野館で見ました。 アイダホから台北へ。
邦題は『左利きの少女』、英語題は”Left-Handed Girl”。
監督はこれまで多くのSean Baker作品にプロデューサーとして関わってきたShih-Ching Tsou、共同制作、脚本にはSean Baker、編集もSean Baker。書かれたのは2010年だそう。 全編iPhoneで撮影されている。
母のシューフェン (Janel Tsai)は娘のイーアン (Ma Shih-Yuan)とイージン (Nina Ye)の母娘たちが車で台北の町にやってくるところから始まる。アパートらしき住処に入って、母は夜市の屋台の一角を借りてヌードル屋として働き始めて、イーアンはビンロウの売店で売り子を始めて、イージンはふたりの間をおとなしくぷらぷらしている。
ここまで、台湾の繁華街の雑踏のきらきら、ざわざわしたかんじ、そこに分け入っていくかんじが素敵なのだが、シューフェンは無口で、がんばっていこうーの元気も覇気もなく、昔に別れて病で亡くなった夫の借金を裏でどうにかしようとしているし、やはり不愛想なイーアンは、成績は優秀なのに上の学校にはいけずに将来どんよりで、店主と関係をもってずるずるだし、イージンは実家の祖父から左利きの左手は悪魔の手だ、使ってはならない、とか叱られるように言われてしまい、全員がそれぞれ自分の意思とは異なるどこかのなにかに引っ張られ縛られてしょーがないじゃん、て動きが取れず、それでも生きていかないと、になって、他を思いやっている暇なんてありゃしない。
やがてイージンは悪魔の左手を、これは悪魔の手だから自分のじゃないしと思ったのか、屋台を歩きながらいろんなちっちゃいブツを万引きするようになり、はらはらするのだが悪魔のせいだからとへっちゃらで、イーアンは妊娠してしまったらしく、やがて祖母の還暦祝いで家族親族が集まる宴が近づいてきて。
日本も同じようなかんじかもしれないが、市場に活気はあってみんな大声で元気に屋台で食べたり集まったり、日々の商売は大事だから寄ってたかってわいわい盛りあげて日々を過ごしていくものの、みんなそれぞれに自分の悩みを星のように抱えて見上げるしかなくて、それは幼いイージンにだってやってくる。折角ミーアキャットと友達になったのに、とか。彼女も含めて、そんな女性たちのそれぞれのクラッシュが溝口の映画のように並べられて、それが最後に爆発.. とまではいかないが、溢れかえってとんでもないことになる。 そんな女性映画として見るのが正しいのかも。
それらはぜんぶ家父長制起因の家のメンツとか体裁とか、そういうののひと揃えで、イージンの左手だってそうだし、妊娠したイーアンのところにあのタイミングで怒鳴りこんでくる店主の妻もそうだし、そしてその流れからのイーアンの最後のぶちまけも、場所とイベントを考えたらこんなに痛快かつ適切なことはないし、忘れられないものとして刻まれる。 もちろん、そんなことをしたからって翌日から暮らしが楽になるなんてことはないのだが、なんかすっきりしたぜ、にはなるかも。
ただ、せっかく夜市が舞台なのに、ちょっと閉じちゃっている感があるのがなー。もっと近場にはいろんな変な人、恐い人とかうじゃうじゃいるはずで、そういう中でイージンの「悪魔の手」を活かすこともできたはず。 あとちょっとがんばれば川島雄三になれたか、な?
でも最後、三人がiPhoneの画角に収まっている絵はなんだかとってもよいの。
あと、ミーアキャットって、飼えるの?
8.26.2026
[film] 左撇子女孩 (2025)
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