8.12.2026

[film] Ball of Fire (1941)

8月4日、火曜日の晩、シネマヴェーラで新しく始まった特集 - 『ワイルダーならこうする! ビリー・ワイルダー特集』で見ました。邦題は『教授と美女』。

Billy Wilderはそんなに好物な監督ではなくて、主な理由は長いから。映画なら100分、ポップソングなら2分30秒以内、が理想で – だからこの前のAnthony Mannはとってもよかった。 Wilderの書くストーリーの指し示す教えとかビジョンがそうさせてしまうことはわかるのだが、長いお話にはそこまで盛らなくても語らなくてもいいから、っていつも。 「ワイルダーならこうする!」について考えることは意味あると思うけど、創作でこれを実践することにどんな意味があるのか(について考えてみること)。

今回の特集は彼の監督作だけでなく、初期の脚本仕事も多く含まれていて、どちらかというとそちらの方を。

『教授と美女』はこのサイトで何度も書いているが、80年代の終わりに日本未公開状態でVHSのみでリリースされたのを買って見て痺れて、そこからの約40年間、Film Forumで見てBAMで見てBFIで見てシネマヴェーラでも見てリメイクされた”A Song Is Born” (1948)も見て、ずっと見続けているのだが、まったく飽きることがないスクリューボールの火の玉の王。

原作はThomas MonroeとBilly Wilderによる短編小説” From A to Z”、脚本はCharles BrackettとBilly Wilderの共同、監督はHoward Hawks、撮影はGregg Tolandで、主演はGary CooperとBarbara Stanwyck。 何度見たって無敵で最強。

マンハッタンの83rdの西の邸宅で共同生活を送りながらエンサイクロペディアの編纂をしている教授たち8人のところにキャバレー歌手でギャングの情婦Sugarpuss (Barbara Stanwyck)が転がりこんできて、元はと言えばスラング研究をしているPotts (Gary Cooper)教授の研究材料のはずだったのが、サツに追われるギャング団 vs. 教授たち、の構図に転がっていって、女性に初めてぽーっとなってどうしたらよいのやらのPottsとはじめはバカにしていたのに彼を忘れられなくなっていくSugarpussの恋の行方はいかに? なの。

階級・階層の対立・対比の構図がかっちりと区切られていて、それゆえのスクリューボールなのだが、今だったらエンサイクロペディアはないのでウィキペディアで編纂作業もオンラインで、そこにやってくる彼女もSNSくらいはやっていて、でもちょっとした口出しや指導でもコンプラ案件になりかねないし対価報酬も頂きます、のでたぶん火の玉が発生したりぶち抜いたりすることは難しいのだろうな、などと思った。


Der Mann, der seinen Mörder sucht (1931)

8月4日の晩、↑のの前に見ました。 オリジナル版は97分だったそうだが上映されたのは現存する53分版。ドイツのUFAの制作・配給。 英語題は”The Man in Search of His Murderer”、邦題は『人間廃業』。

監督はRobert Siodmak、Ernst Neubachの戯曲を元に、Billy Wilder他が脚本を書いている。

真面目で暗そうなHans (Heinz Rühmann)は借金だるまで自殺しようと思って、スーツに弾を撃ち抜く✕印を描いたりしていたところで、ちょうど泥棒にきたOtto (Raimund Janitschek)が現れたので自分を撃ってくれ、って頼むと間抜けかつ慎重な彼は自分の組織に相談して、懲役3年をくらう可能性があるので年額5000でどうかとか、準備するので時間をくれ、ってあれこれ面倒くさい。

実行までの空いた時間にバーにいったHansはしつこい男に言い寄られていたKitty (Lien Deyers)と知り合って、彼女とダンスして身の上を打ち明けているうちに、死に向かいたいという自分の思いとその意に反して死から逃れていってしまう自分の境遇があほらしくなっていって…

いかにもドイツ人らしい死への欲望が、死神がなんでもかんでも狙いを外してくれることで滑稽になっていく様が描かれて、ほんとうに死んじゃうぞ? いいのか?になったところでやっぱり死にたくないかも、となって、やっぱごめん遅かった… になるのかどうか。

死をめぐって/死に向かった時に複雑に変転していく思い、そのヨーロッパ的なありようはWilderが後に監督する”Double Indemnity” (1944)にも繋がっていくなあ – あれの原作はJames M. Cainだけど、とか思った。

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