7月24日、金曜日の晩、シネマヴェーラのAnthony Mann特集で見ました。 邦題は『必死の逃避行』。
トラックで貨物の運送をしているSteve Randall (Steve Brodie)は結婚4カ月の妻Anne (Audrey Long) とのアニバーサリーでおうちに帰ったところで知り合いから荷物の配達を頼まれ、記念日だから、って断ったのだが金額を積まれたので受けることにして荷物を取りにいったらそれはヤバい案件の盗品で、そんなの嫌だ、ってどうにか逃げようと近くにいた警察に合図したら銃撃戦となって、警官は撃たれて亡くなり、替わりに弟をしょっぴかれたギャングのボス(Raymond Burr)は激怒してSteveを捕まえて、お前がやったと警察に自首して弟を連れ戻せ、そうしないと妻を… って暴力で脅してくる。
隙をみてなんとかAnneをピックアップして逃げようとするが、Steveの名前と写真は警官殺しで指名手配されていて、列車~トラックなどを乗り継いでどきどきしながら逃げて、どうにか親戚のおうちに寄ったらちゃんとした結婚式を挙げなきゃだめじゃんって、いきなり結婚式になったり、でもボスの弟の絞首刑の時間が迫ってきて焦るギャングたちも必死で追ってきて…
怖いとか暗いとかいう以前に、追跡と逃走のDesperateな緊張感のなかだけで勝負していくあっという間の73分で、最初の方のゆらゆら揺れて明滅する部屋の照明の中で圧してくる暴力の濃さ、ラストのアパートの狭い階段を使った銃撃戦も、瞼の裏に残る生々しさですばらしかった。
Winchester '73 (1950)
7月28日、火曜日の晩、シネマヴェーラで見ました。 邦題は『ウィンチェスター銃'73』
昔は(今も?)Anthony Mannといえばこれ、だった1本で、さすがにむかし見たことがあった。
Anthony MannとJames Stewartが組んだ8作のうちの最初の1作。俳優が報酬として興行収入の一定割合を受け取るRevenue Shareの仕組みが初めて採用された映画だそう。
1876年、カンサスのある町にLin McAdam (James Stewart)と相棒の"High Spade" (Millard Mitchell)が流れてきて、LinはDutch Henry Brown (Stephen McNally)を追ってきたのだが、保安官のWyatt Earp (Will Geer)に銃を預けなければいけなくてどうすることもできない。
ふたりは町のお祭りの建国100周年記念射撃大会に参加して、その賞品は名高いウィンチェスターM1873ライフルという1000挺に1挺の、伝説の名刀みたいな銃で、大会はLinとDutchの接戦でLinが勝って銃を手にするのだが、Linが町を去ろうとしたところでDutchに持ち逃げされてしまう。
これ以降、伝説的なパワーを持つ(or 与える)Winchester銃とその所有者をめぐって因果応報のストーリーとか呪いのような何かが伝搬して転がっていくのかと思いきや、単に銃は撃ったり撃たれたりで持ち主を替えて渡っていくだけ、奪い奪われる宝物がふつうの銃に替わっただけのようなあっさり味のお話で、ただ銃=火器を奪い合うので当然死人は増えるよ、っていう当たり前のことを描いて、通常の西部劇にある復讐、憎悪、裏切り、のようなどろどろした念のようなものは後退して、単なる人殺しの道具としての銃と、それを扱うアクションの光と影のみが前に出てきている。
そういう劇構成をおもしろい、と思えるかどうか、なのかしら?
He Walked by Night (1948)
7月28日、火曜日の晩、↑のに続けて見ました。 今回のAnthony Mann特集はこれでおわり。 邦題は『夜歩く男』。
監督はAlfred L. Werkerで、Anthony Mannはノンクレジットでの参加だそう。ここでも見事な撮影はJohn Alton。
実在した退役軍人の凶悪犯Erwin "Machine-Gun" Walkerの事件を元にしていて、冒頭のパトロール中の警官を撃つシーンも、ただの「夜歩く男」のなんてことのないシルエットが突然銃を向けて、そこから噴きだしてくる恐怖の絵から始まって、犯人(Richard Basehart)の無表情なごくふつうの佇まい(同居している犬がかわいい)とか、それを追う警察側も型破りな強引で個性的な誰かが出張ってくることもなく、追う側 – 追われる側の駆け引きを光と影の収縮のなかで追っていて、それが最後、地下水道で視野も含めて狭まっていく逃走/追跡シーンで炸裂する。犯人のキャラクターとか犯行の動機とか事情背景に入り込まずに、ただ「誰かが夜に」のイメージの断面とどこにいてなにをしているのかを追うだけ。
こんなにシンプルで、なのにこんなにおもしろくできるのか、って。
8.04.2026
[film] Desperate (1947)
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