8月3日、月曜日の晩、こんなん誰が見るねん、月曜日からなんやねん(関西弁)とかぼやきつつ、シネマート新宿で見ました。
邦題は『エレファント6レコーディング・カンパニー』。 客席はぱんぱん、のわけがなかった。
監督・制作・撮影その他をChad Stockflethがひとりでやっている、自主制作のような作品で確かにふつうに見ることは難しかったのかも。しかしなぜいま?
80年代後半にルイジアナ州ラストン辺りで渦を巻いていたバンドでもムーブメントでもレーベルとも違う変てこ共同体… より少し弱めのコレクティブ - ”The Elephant 6” - Max Ernstの絵画『セレベスの象』 (1921)から取られたのかー - の活動の全貌を追うドキュメンタリー。「全貌」と呼べるほど強い輪郭を示してくるメッセージやストーリーがあるわけではない。残っていた映像の断片をつなぎ合わせていくことで見えてくるシュールな愛すべき変人たちの蠢き。虫たちの生態。
The Apples in StereoのRobert Schneider、Olivia Tremor ControlのBill DossにWill Hart、Neutral Milk HotelのJeff MangumにJulian Kosterらの動いたり演奏したりコメントしたりする姿が見れて - でもJeff Mangumのコメントはない - 音楽関係の外からはElijah WoodとかDavid Crossが(いかにも)。
そこではとびきり痺れる、知られざる名曲やライブ映像が晒されるわけではなく、どれも誰かの鼻歌から始まって部屋の壁を伝って反響したそれらが束ねられ、団子となってガレージやベッドルームの床を転がって揺らすように広がっていったやつ。決してみんなの歌にもなろうとはせず「アート」としての熟成を目ざすこともなく、ジャンクとポップの間をぬっていくマイナーな、でも止めることのできない石蹴りのような。
代表のような形で前面に出てくるのはRobert SchneiderのThe Apples in StereoとOlivia Tremor Controlで、ここにNeutral Milk Hotelが混ざるとあまりに雑多で多様すぎてレコード棚の同じ分類で括ることなんてできそうにない、という良くも悪くもばらけたそれぞれの。
出てきたバンドの中で見たことがあったのは2013年のHostess Club Weekender(..あったねえ)でのNeutral Milk Hotel(あと、これの前年にBrooklynでJeff Mangumのソロも見ている)と、もうひとつ、2001年のElf Powerがいた。この時の彼らはWilcoの”Yankee Hotel Foxtrot” (2001)のリリース前ツアーの前座のひとつで、NYのTown Hallで911直後の、まだきちんと音楽に向き合うことも難しいような状態の我々を前に、Wilcoはすばらしい音を鳴らしてくれて、その前のElf Powerも素敵でキュートで、画面にも出てくるLaura CarterさんからTシャツを買ったのを憶えている。
90年代以降のインディペンデント・レーベルを中心としたコレクティブぽい動きで言うと、Merge Recordsの創設が1989、Saddle Creek Recordsが1993、Barsuk Recordsが1998、Asthmatic Kittyが1999で、どれもローカルのlo-fiの共同体でどかすかやっていくやり口(のような?)がおもしろくて、これらも当時言われていたオルタナとして括れてしまうものだったのかどうか。
しかし、登場するバンドのなかで、やはりNeutral Milk Hotelだけは別格の風貌と特異さで空気を震わせて - というかJeff Mangumの唸って響きわたる声がすべてなのよね、って改めて思った。
たぶんアメリカ音楽史的には箸にも棒にも、のようなものかも知れないが、こうして映像として残されていることがどれだけ貴重な獣道となっていることか、というのも改めて。配信で届くような(届くことを前提に作られる)やつとは全く異なるノイズまみれの奴らの。
8.12.2026
[film] A Future History Of: The Elephant 6 Recording Co. (2022)
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