22日、木曜日の晩、MUBIで見ました。
“Nomadland” (2020), “The Rider” (2017)のChloé Zhaoのデビュー作。Sandanceのワークショップを経て制作され、Forest Whitakerがプロデュースに参加している。
サウスダコタのインディアン居留地に暮らすJohnny (John Reddy)とJashaun (Jashaun St. John)の兄妹がシングルマザーの元で暮らしていて、Johnnyは近所の人達に闇でアルコールの販売をしながら付きあっている彼女と一緒にLAに出ていくことを夢見ていて、いつも兄と一緒に遊んでいたJashaunはつまんないな、ってなりつつも全身刺青おじさんとTシャツを売ったりするようになって。
離れて暮らしていた父親が火事で突然亡くなったり、葬式に行ったら彼の子供だという連中が25人くらいいたり、年の離れた兄は刑務所にいたり、母はどこかの若い男と仲良くなっていたり、兄妹をめぐる環境はよくない方にばかり向かっていって、そのうちJohnnyは酒の密売の件で男たちにぼこぼこにされて車を焼かれ、刺青おじさんはいつの間にかしょっぴかれていなくなり、LAに一緒にいくはずだった恋人とはなんか違うかんじになり、ここを出てどこか他の土地へ、の思いはどこまでも裏切られてどこにも行きようがないまま、でもここでずっと暮らすのはどうなのか、これでいいのか、と。
予算がなかったので地元の人々 - 素人をそのまま使い、Johnnyの家もJohnnyの実際の家そのまま、25人の子供とかエピソードのいくつかもそのままだそうなので、彼らが抱える日々の思いも同じなのかしら、と思うのだが、やはりこれはドキュメンタリーとは違って、「兄たちが教えてくれた歌」をその情景と共に映像として残そうとしている。 これまで彼女の作品すべてを撮影してきているJoshua James Richardsのトレードマークのような主人公の背中越しに広がっていく原野が美しい。 Dorothea Langeの写真のような。
これだけ貧しくて荒んで先が見えない辛そうな暮らしの中でも、負債として継がれるものというより教え説かれていくものがあるのだ、と。物語の中心人物は前半の、はっきりとどん詰まって動けなくなったJohnnyからこれからどうしていこうか…のJashaunの方に徐々に移っていって、やがて彼女はロデオの競技場で何かを見つけることができた.. のかもしれない。(そしてChloé Zhaoはここで、次作 - “The Rider”の主人公となるBrady Blackburnと出会った、と)
兄妹のふたり - John ReddyとJashaun St. Johnの落ち着いた面構えがよくて、彼らがすることもなくてぼーっと膨れてだらだらしているだけでも十分に強い絵になってしまうの、すごい。
Chloé Zhaoはこのデビュー作でどこにも行けないけど、どこか/なにかを見つけようと必死になっている若者と子供たちを描いて、“The Rider”では怪我をして先がなくなっているのに、それでも馬上にしか居場所を見出せない若者を描いて、“Nomadland”では家も家族もすべていなくなって、移動する日々に生を見い出す初老の女性を描く。ここまでの三作で年齢は 幼→若→老と上ってきて、中西部の荒野で、みんなそれぞれいろんなものを失ったり抱えたり生き辛そうなのだが、でも決して悲惨で見ていてしんどくなるものではないの。むしろ逆に、ああふらふらしないで(ふらふらしててもいい)しっかりしないと、になる。少なくとも自分は。
ベルリンで見かけて、戻ってきてからついAmazonでオーダーしてしまったAby Warburgの”Bilderatlas Mnemosyne – The Original”が届いた。小さめの家具みたいなダンボールに梱包されて、うちはいまエレベーターが動いていないので5階まで引っ張りあげるのがしんどかった。 自分が持っている本の中では間違いなく最大級のでっかさで、広げてよいしょってページをめくるだけで大仕事でなぜか大笑いしてしまう。 こんなに笑える本だったなんて。
10.31.2020
[film] Songs My Brothers Taught Me (2015)
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