LFFでまだ書いていないのがあったので少しだけ。17日、土曜日の午後、オンラインで見ました。
LFFの中では”Treasures”っていうリバイバル作品のカテゴリーで、オリジナルの16mmフィルムからリストアしたもの。監督のPeter Wollenが原作も脚本もひとりで書いて、BFIとChannel 4が制作した78分の小品。 日本ではもちろん公開されていない。
70年代、パレスチナとヨルダンの紛争が続く中東の危険地帯でビルの中に軟禁状態に置かれたジャーナリストSullivan (Bill Paterson)の滞在する部屋に外見は女性で英語を話すFriendship (Tilda Swinton)が現れる。
彼女は自分のことを宇宙からきたロボットであり、本当はMITのラボに送られるはずがなんでか誤ってここに来てしまったのだと言う。Sullivanは彼女の相手をしつつも現地の戦争特派員である自分の仕事とか、いつどうやってここから抜け出せるのか、の方が忙しいので、気が向いた時に会話をしたりする程度で、彼女が突然戦争マシーンになって戦闘を始めるとか、仲間が宇宙からやってくるとか、そういうところにはいかない。どん詰まりの不条理劇のような設定の中で、ロボットやAIについて、彼女の知覚や属性について、ヒトとの違いについて等、やや哲学的(根源的)な広がりのある対話がぽつぽつとされていく。そこから未来が見えてくるとか、そういうかんじは微塵もない。
87年という地点から、70年代の中東情勢を振り返り、そこに英国人のジャーナリスト - 前線にいる当事者 & 兵士ではない - とどこからか迷い込んできた彷徨えるロボット - 攻撃的ではない & アメリカに向けて宇宙から送りこまれた - を置いたとき、そこにどんな会話や相互理解の余地や可能性がありうるのか?
という状態を巷に大小いろんなロボットやAIが溢れ始めていて、その活用の限界やジェンダーのありようが問題になり始めている – よね? いない? - そこから30年後の我々が眺める、というおもしろい構図。
Friendshipの動きや表情や発話は穏やかで柔らかで、Sullivanがタイプライターをひっぱたいているとそんなに強く叩かないで、って悲しそうな顔をしたり、横にいるニンゲンの、オトコの、ジャーナリストの臭さ野蛮さとの対照についていろいろ考えさせる。 Friendshipを送りこんだのが宇宙人である、ということ、Friendshipもおそらく高度の知能を持ち合わせているであろうことを想像すると、「彼女」はなんのためにここにいるのか? という有用性について考えてしまったりするのだが、Sullivanは彼女の知識を試すのにグラスゴーにある寿司屋の名前を言え、とかしょうもないことしか聞かないし、ここのように身動きがとれない銃撃・爆撃が続く戦地でAvengersのように戦ったり守ったりしてくれるわけでもないし、はっきりと役にたつ機能を表に出すことはない。ただホテルの部屋の片隅で座ったり立ったりしているだけ。 仮に誤配がされずに正しくMITに送られていたとしたら彼女はどうなっていたのだろうか、とか。
やがてSullivanのところにも退去命令が出て、彼はFriendshipに一緒にイギリスに行こう、というのだが、彼女の答えは..
タイトルにある”Friendship's Death”が事実として明確に示されることはないのだが、ここにおいてロボットの「死」が指し示すものってなんなのだろうか? そもそもロボットに生死を問いうるのか、ということと、彼女が生きていたのだとしたら、 それは何をもってそう言えるだろうか、と。
エイリアンでも老婆でもチベットの僧侶でもなんでも自在に演じることができる近年のTilda Swintonさんに比べると、ここではまだ半完成品のような彼女なのだが、意識したというその喋り方については見事にエイリアンのアンドロイドを演じている。
そして、地球に落ちてきた、というところで言うと、David Bowieの”The Man Who Fell to Earth“ (1976)のことを思って、更にいやこれはどちらかと言えば『戦場のメリークリスマス』(1983)の方ではなかろうか、とか。
もういっこ、アンドロイドが友達云々、というところだと、70年代終わりに”Are 'Friends' Electric?” とか言ってアンドロイド=レプリカごっこをしていたGary Numanという人もいたのだが、この辺は影響していたりするのかしら?
ヨーロッパでは第二波が深刻になってきていてあらら、なのだが、全体の傾向としては地域とか時間とかいろんな規制とか規則がこまこまやかましすぎてみんなうんざりしてて、一応マスクはするけどもう遊ぶよ夜は長いし人恋しいし、になってて、校長先生が緊張感が足りない! って怒りはじめたのが今、だと思う。
10.29.2020
[film] Friendship's Death (1987)
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。