10.07.2020

[film] Lured (1947)

9月27日、日曜日の晩、Criterion Channelで見ました。30日でここからいなくなっちゃうリストからの1本。

Douglas Sirkがハリウッドに来て最初に撮った2本 – “A Scandal in Paris” (1946)とこれ、はセットで語られることも多いのだが、今回“A Scandal in Paris”の方は逃してしまった。邦題は『誘拐魔』。Robert Siodmakのフランス映画 –“Pièges” (1939) - "Personal Column”のリメイクだそう。

舞台はロンドンで、女性が新聞の尋ね人欄で呼び出されて行方不明となり、その後で警察に詩が送られてくるという怪事件が起こっていて、アメリカからロンドンにやってきたダンサー - 本当は舞台で踊りたいのだが食えないのでTaxiダンサーをしている - Sandra Carpenter (Lucille Ball)は友人のLucyと怖いねえ、って話していたらその翌日にLucyが消えてしまったので戦慄していると聞きこみにきた警察から観察力とか把握力とかをテストされてこの事件の囮捜査 - Sandra自身が釣りのルアーになる - に協力することになる。

捜査はスコットランドヤードのHarley Temple (Charles Coburn)が指揮していて、送られてくる詩がボードレールのものであることもわかっているのだが、それがどうした? で、彼女が捜査を始めたら尋ね人欄経由で、元ファッションデザイナーの変態Boris Karloffとか、募った女性を南米に送っていた悪人とかいろいろ引っかかるのだが、肝心のやつにはなかなかぶつからない。

そのうちSandraは舞台のプロデューサーでお金持ちのRobert (George Sanders)と出会って仲良くなって婚約するところまでいくのだが、婚約パーティの晩、Robertの部屋の机の引き出しから失踪事件の証拠品とかタイプライターがばらばら出てきて、Robertは逮捕されて、Sandraの正体を知った彼はがっかりして縁を切る、というのだが、実はこのあともう一回転あって…

Sandraからすると自分の立場も他人からみた自分も外面がころころ変わり続けるので、その対応がローラーコースター状態なのだが、他の人達ひとりひとりだってみんなそうで、みんなが誰かの”Lured”状態になって回り続けている舞踏会、というあたりがなんとなくSirkかも。

画面のトーンはノワール/ゴスぽいし、ボードレールだし(でも実際に読まれるのはLord Alfred Douglasだと。真犯人の名前に繋げるとちょっとおもしろい)、Boris Karloffなのだが、これはやっぱり犯罪推理コメディというべきで、Lucille BallとGeorge SandersとCharles Coburnの3人がじたばたしているだけで楽しいったらない。

劇中で流れる”All for Love”っていう歌が素敵。歌っているのはAnnette Warrenという人。


Devil's Doorway (1950)

9月28日、月曜日の晩、Criterion Channelで見ました。これも30日でいなくなるリストから。
Anthony Mannの監督による西部劇。邦題は『流血の谷』。

南北戦争の後、Lance Poole (Robert Taylor)は勲章を貰ったヒーローとしてワイオミングの故郷に帰ってくるのだが、酒場で幼馴染とかと再会してもなんか様子が違う。町民はLanceが代々所有してきた肥沃な土地の使用権がある - インディアンであるLanceにはそれがない – ことを悪い法律家の指導で洗脳されて信じていて、Lanceは女性の法律家Orrie(Paula Raymond)に相談して知事あてに請願書を出そうとするのだがそれも失敗して、いくつかの衝突を経て武装した地元民が彼の牧場になだれこんでくる。

インディアンが代々所有して引き継がれてきた土地が国によって強引に接収される、というのはこういうことなのだ、というのを具体的な悲劇 - 戦争で貢献した英雄が彼の属性 - 人種だけでそのまま国に逆らう人物に反転してしまう – として描く。もういっこ、Lanceの側に付くのが女性法律家で、誰もまともに取りあおうとしない、という別の差別も。

ものすごく痛ましくて暗くて救われない話で、興行的にも散々だったこともわかるのだが、この時代でもここまで掘り下げようとした人々がいた、というのと、ここから70年経っているのに.. ということを知ることもできるので、古い本と同じく古い映画を見ることも大切だよね。なによりおもしろいし、って改めて。
 

明日からLondon Film Festivalが始まる。 オンラインのみの上映の方が多くて、BFIのシアターでやるのもあって、そこで見るのは4本くらいかしら。 シアターでやるのは間違いなくしばらくしたら公開されそうなやつだからそんなに無理しない。 New Yorkのがラインアップはよかったなー。 でもまけない。
 

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