10.13.2020

[film] Śniegu już nigdy nie będzie (2020)

11日、日曜日の晩、LFFのオンライン上映で見ました。

ポーランド映画で、BFIのプログラマーのGeoff Andrewさんが薦めていたので。英語題は”Never Gonna Snow Again”。制作にMatch Factoryが入っていていかにもそんなかんじの。女性のMalgorzata Szumowskaさんと撮影担当のMichal Englertさんの共同監督作品。

森の奥から何かを担いだ男がひとり歩いてきて町に入ってお役所のような建物に入って役人のような男と面会して、やりとりから男はこの土地への滞在許可を求めてきたこと、担いでいるのはベッドであることがわかって、男は役人の頭を軽くマッサージしてあげると役人はことんと落っこちて、男は自分の書類に自分でスタンプを押したのを持って部屋を去る。

彼がZhenia (Alec Utgoff)で、そのまま住宅街 – 近隣一帯が囲われていて同じタイプの裕福そうな白い一軒家が並んでいる -  の一軒のドアを叩くと、出て来た女性はZheniaのことを知っているようで、Zheniaは子供が散らかし放題にした床にベッドを広げて目の下のクマが深くてグチだのなんだの喋りまくる彼女にマッサージをして、終わると彼女はすっきりしたようで、Zheniaは出ていく。

そうやってその界隈の数軒を回っていくのだが、どの家でも彼は知られていて普通に入れて貰ってマッサージを終えると感謝されたりして、その繰り返しのなかで、誰かと誰かが浮気をしていたり、末期ガンを患っている男がいたり、ブルドッグ(かわいい)を3頭飼っているおばさんがいたり、そのエリアの住人たちがどんなふうなのかわかってくるのと、Zheniaには特異で不思議な治癒力みたいなの - 催眠術も使ったり - があるらしいことがあまり喋らない(たまにロシア語で受け答えをしている)Zheniaの行動からわかってくる。

どちらかというとコメディタッチで、そのうち個性的な住人たちが突然白目を剥いて襲いかかってきたり夜空に向かって変な踊りを始めたりしそうな緊張感を孕みつつも、やはりZheniaはどこから来た何者なのか、が気になってくる。彼はチェルノブイリの事故が起こる7年前のあの日、あの近くで生まれていて、彼が質素な借り部屋から窓の外を眺めるときその景色は琥珀色の火花や塵が雪のように舞っていたあの時の光景に繋がっていって、住人の子供に「今年は雪は降るのかしら?」と聞かれた彼は”Never Gonna Snow Again”、と静かに答えるの。

Zheniaと彼の家族があの事故によってどうなって今の彼がここにいるのか、彼の持っている力は事故と関係があるのかないのか、彼は果たして天使なのか悪魔なのかその両方なのか、なにひとつ明らかにされないのだが、その彼のぽつんとしたありようとこの囲いの外のどこにも行けなさそうな住民たちとの緊張関係がよいの。どんな要求もお願いも受けとめて実現してくれる彼の紙一重に見える脆さと透明さはとてつもない惨事や災厄をもたらすわけではないし、そんなやわな住民たちでもなさそうなのだが、そこにふわりと残る像があって、よいかんじ。

それをチェルノブイリのせい、とかチェルノブイリがなければ.. とか言うことはしなくて、でも、チェルノブイリのことは例えばこんなふうに残る必要があるしこうして残っているし、と語っている気がする。それって良いことなのか悪いことなのか? 「もう雪が降ることはない」 - これも同様の問い - 雪のないクリスマスとか寒さだけしかない冬とか – から導かれる未来のことで、その先に希望とか幸せはあるのだろうか? というと、そんなにあるとは思えないのだが、でも日々のあれこれは続いていく。

そしてこの地の果てのような土地で起こっているようなことって、例えば福島 - 『風の電話』 - とか水俣のような土地の物語に繋がっていくのではないか、とか。

で、最後にZheniaを訪ねてくる人たちのところで、ああーって。それもあるのか。

主演のAlec Utgoffさんの不思議な存在感がよくて、この人なら”Ghost” (1990)のPatrick Swayzeをやれるかも(そんなに見たくはないけど)。

マッサージ台を担いだマッサージ師のrom-comといえば、”Enough Said” (2013)があって、あれはよかったな。また見たい。

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