2日、金曜日の晩、Curzon SOHO - 映画館で見ました。
公開初日の金曜日、繁華街の真ん中の映画館でも客は1/4も入っていないくらいだった。
映画館がreopenされてから週1~2回は新作を見に映画館に通うようにしているのだが、いつもどこもだいたいこんなかんじ。007新作の公開延期はこういう状況を踏まえたものなのだろうが、これが来年4月になったら戻るのかどうか、とても疑わしい。それに応えるかのようにCineworld(大規模シネコン)とPicturehouse(大泣)のクローズが発表されてしまったので、供給側も含めて更に冷え込んでいくだろう。
我々は花火みたいな新作を見たいの。007はいつものだろうからいいけど、とっくに出来あがっている”Wonder Woman 1984”を、”Black Widow”を、”The King's Man”を、”A Quiet Place Part II”を、見たいの。映画会社側が目先の損得勘定ばっかりであれもこれも後ろ倒ししているうちに全体がドミノ倒しになって死ぬぞ。
それはともかく、予告で”The French Dispatch”がかかったのが嬉しかった。Wes Anderson、いつまでああいう細密画みたいのやっていくのだろう。おもしろいからいいけど。あと007の予告もかかって、そこでは既に4月公開、って入っていた。
そういう状況下での”On the Rock”。 冒頭でどう聞いてもBill Murrayの声が”You’re mine until you get married”という。結婚式のシーンを過ぎて暫くしても”Then you’re still mine”、と。呪いのように、Bill Murrayのあの顔と一緒に降りてくるこの声を振り払うべくLaura (Rashida Jones)の奮闘が始まる。
ダウンタウンのアパートに暮らすライターのLauraにはベンチャーでばりばり働く夫のDean (Marlon Wayans)とふたりの女の子がいて、夫を送りだしてから娘たちの面倒を見て自分の仕事もして慌しいのだが、張りきって仕事に向かう夫の後ろでなんかどんよりしている。
ある日、ロンドン出張から戻ったDeanのカバンからでっかいボディオイルの瓶が入った化粧ポーチが出てきたので聞くと、あー彼女の持っていたのが機内持ち込みできない大きさのだったから自分のカバンに入れてチェックインしたのを忘れてたありがと、とか言う。その彼女というのが夫のアシスタントのFiona (Jessica Henwick)で、会社のパーティで出会ってどんな娘かわかっていたので疑念はさらに深まり仕事も手につかなくなってきたので、こういうのに詳しそうな遊び人の父Felix (Bill Murray)を呼んで話を聞いてみる。感情的にどん詰まってしまったところに別のどん詰まらせ野郎をぶつけてイチかバチかで風穴を開けてみようとする。
父は顔には出さないものの内心ノリノリで現れて、Deanがロンドンで泊まったホテルは? - Blakesか、そいつは怪しいな(.. うんたしかに)とか、探偵気取りでアドバイスしてきて、とにかくこの不安を取り払いたい娘は眉をひそめつつも父に乗せられ誘われるままに一緒に行動するようになって…
Lauraがこれまで余り知らなかったし知る必要もなかったメンズワールドに引き摺りこまれていくスクリューボール・コメディであると同時に、その巻き込まれが父との関係をよりよくしてくれる ... かと思ったらぜんぜん甘かった。
よく引き合いに出されるSofia Coppola - Bill Murrayの”Lost in Translation” (2003)との比較でいうと、異国のホテルで空虚さを抱えてどんよりしたScarlett Johanssonにとって頼りないけど確実にそこに立ってる電柱のような存在だったBill Murrayは、今回の父娘ドラマでは当然深く避けようがないやつ(親子だから)になっている。 父にとっての娘は冒頭の彼の言葉 - 「自分のもの」 - に集約されていて、娘にとっての父はある部分許せないところもあって意識的に関わらないよう追い払って過ごしてきたのに。
それが今回のことで女性観みたいなところも含めて父が見て踏んできた男の世界に立ち入らざるを得なくなってきりきり舞いもさせられて、結果的にそれはよいことだったのかしら? 最後の方、”Lost in Translation”的なところを経由しつつも、おかげで口笛が吹けるようになったよ、くらいにしている、その軽さがとっても好き。 特にLauraとFelixが最後に大ゲンカするところで、きょとんと無表情になったFelixの放つ「だっておまえはいつも笑わせてくれてたじゃないか」はすごい。小津のドラマみたい。
あとこれはもちろんNew Yorkのドラマでもあって、アップタウンのモネが飾ってある個人宅にBemelmans Bar、そこからダウンタウン – Lauraの暮らすアパート、あの並びはSOHOじゃない?と思ったらやっぱりWooster st.だった – の縦線を車で(地下鉄じゃない)行ったり来たりする。その中間に21 Clubや52nd & 5thのあれを挟む、という超お金持ちの世界ではあるものの、物語の舞台として地理的な配置もうまく考えられている。
ただ、Deanのあの程度の言い訳と説明でみんな納得しちゃったのは甘いと思う。彼は”TENET”の主人公並みの確信犯で、実は裏でFionaとの関係は続いていて、あの後Lauraは改めてFelixに助けを求めざるを得なくなり、父はかつて仕事で使っていた3人 - Cameron Diaz & Drew Barrymore & Lucy Liuを呼び寄せ、これに対抗すべくDeanも仕事のコネを使って雇い入れたのが東京から戻った後に仕事と名前を替え、いまは”Black Widow”と呼ばれているScarlett Johanssonだった… というのが第二弾 – “Still On the Rocks” で、まもなく発表される予定だって。 これはフェリーニの『魂のジュリエッタ』 (1965) のNY版のような豪勢なものになるはず。
あと、これのヴァリエーションとして、Lauraの方の浮気疑惑が持ちあがって、DeanがママのViola Davisに相談したらそれは許せないね、って”Widows” (2018)のチームが動きだして大変なことになる、しかもViolaのところにはThe Equalizerがいて… そういうのも見たい。
21 Clubの‘21’ Burgerが食べたいなー。P.J. Clarke'sのでもいい。
10.05.2020
[film] On the Rocks (2020)
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