10.08.2020

[film] The Trial of the Chicago 7 (2020)

6日、火曜日の晩、CurzonのBloomsburyのでっかいスクリーンで見ました。
Netflixのだけどシアターではもうやっていて、これはもう絶対でっかい音と画面で見た方がいいやつ。

そもそもは2007年にSteven Spielbergが監督する予定で企画されていたのを、10年に渡って脚本を転がしていたAaron Sorkinが監督することになったやつ。

BLMのプロテストが警察側の組織的暴力も含めて長期に渡って注目され、香港でもベラルーシでも国の施政にプロテストするとどんなことになるのか、という角度での報道が毎日のように為される中(にっぽんだけはさっぱりだ。幸せ?)、一ヶ月後の大統領選がこういった正義のありようや今後の行方にどう影響するのか、全世界が注目している。このタイミングで、約半世紀前のアメリカで、今と同じように全世界が注目していた裁判がどんなだったか、振り返ってみましょう、と。 全世界必見。 こういうのが見たかったわ、ってみんなが言う。

68年シカゴで行われた民主党大会開催に合わせてベトナム戦争反対をアピールしようと多くのプロテスターが集まってくる。冒頭は、威勢よくそれぞれの属する団体を背にシカゴに向かう7人のキャラクターを紹介する。 Tom Hayden (Eddie Redmayne)とRennie Davis (Alex Sharp)は戦争反対の若者グループを代表し、ヒッピー寄りのAbbie Hoffman (Sacha Baron Cohen)とJerry Rubin (Jeremy Strong)はよりラディカルにシステムや理念の転覆を訴え、一家のパパであるDavid Dellinger (John Carroll Lynch)は、ぜったい暴力はいかん、と言ったり思ったりしている。

そこから(暴動が起こって)数か月後、彼らはみな収監されて、大統領はニクソンになって司法長官も変わって、その新しい彼が、7人(当初は8人)を裁判で訴追する側のRichard Schultz (Joseph Gordon-Levitt) とThomas Foran (J.C. MacKenzie)を呼びつけて、連中をなんとしても10年は牢屋にぶちこめ、とか言う – その時にRichard Schultzが見せる戸惑いがちょっと印象に残る。

裁判の争点は、被告たちは明確な意図をもって暴動を起こしたのかどうか。意図的にプロテスタ―たちを煽ったりけしかけたりしたのだったらアウト、になる。いやそれを巧妙に仕組んで黙らせようとしたのは警察とか権力者の側だ、っていうことを言うことができればー。

これに弁護側は一見頼りなくみえるWilliam Kunstler (Mark Rylance)とBen Shenkman (Leonard Weinglass)で、難しそうな裁判長はJulius Hoffman (Frank Langella)で、冒頭からBobby Seale (Yahya Abdul-Mateen II)が自分がこの場にいるのはおかしい、って文句いうしAbbie HoffmanとJerry Rubinはおちょくりにくるし誰もコントロールできずにざわざわして、裁判長は法廷侮辱罪を連発して渦を巻く荒れ場ができあがっていく。

証人による事実や証拠の表明がそれが起こった当日の動作に繋がって、それが更に実際のモノクロ映像にリンクしたりするのだが、検察側が呼んできた証人はみんなスパイとして被告たちの動きの裏にひっついていたことがわかってがーん、で、それに押されるようにひとりひとりの特性や事情に応じて勝手に頻繁に騒ぎを巻き起こしていく被告たちの挙動は陪審員には悪い印象しか与えない。 要は権力側の思う壺、彼らの想定したシナリオ通りに追い込まれていくのでみんなどんよりしていく。

流れが変わったかに見えたのはジョンソン大統領時代の司法長官Ramsey Clark (Michael Keaton)が証人として登場するところで、おおー、ってなるのだが、これもやらしい裁判長のせいで萎んでしまって…

法廷を離れて連中が作戦会議をするConspiracy Houseでのやりとりも含め、法廷の会話劇、法廷ドラマとしての密度濃度迫力は相当なもので、Aaron Sorkinとしか言いようがないし、ひとりひとりの演技 - Mark RylanceもEddie RedmayneもJoseph Gordon-LevittもSacha Baron Cohenも、みんな当たり前のように巧いし発話の間合いなんて殺陣みたいにかっこいいし、最後のJoseph Gordon-LevittとSacha Baron Cohenが向かい合うとこなんてとんでもないの(Sacha Baron Cohenすごいわ)。

ただその分、全世界が注目していた当時のニクソン政権も含めたその世界 - 「アメリカ」に対して人々が向けていたある種狂ったような熱にまみれた目線がこの法廷の場の狂騒や茶番を経てどんな意味や空気や臭気に変わっていったのか、あのラストがどこに向けてどんなふうに広がったり染みたりしていったのか - このドラマにそこまで求めるのは酷だろうか。 でも法廷は隔離された実験室や企業の会議室とは違うんだよ、正義と悪がせめぎ合って世界が集約されたり世界をひっくり返そうとしたり、そういう可能性がぶら下がっているところで、だからー。

でもそれでも、やはり今見られるべき映画であることに変わりはない。

にっぽんだったらここに行く手前で共謀罪でひったてられて、勝手に罪状も裁判の記録もでっちあげられていくらでも都合よく改竄されて、メディアはそれをそのまま垂れ流して、一巻のおわり。そういうのにだーれも反対しないの。ぜんぶが思考停止した悪で染め抜かれているからわかんないの。

Streamingの方でリリースされたらまた見よう。

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