18日、日曜日の午後、BFI Southbankで見ました。LFFのクロージング作品。
見なきゃ見なきゃと言いつつ未だに見れていない”God's Own Country” (2017)のFrancis Leeの最新監督作品。
英国の実在した古生物学者Mary Anning (1799-1847)を登場させて、彼女の生涯の一時期を切り取ってみせたフィクション。ちなみにSaoirse Ronanが演じるCharlotte Murchison (1788-1869)も同じ時代に実在した地質学者で、ふたりは1825年にライム・レジスで会って、その後ロンドンでも会ったという記録があるそう。でもこれはフィクション。
19世紀の真ん中頃、英国南西部ドーセットのライム・レジスの海岸 – 波打ち際から少し奥に入って崖になっているあたり – でしゃがみこんで石を拾ったり掘ったりしている女性がいて、それがMary Anning(Kate Winslet)で、家に戻ると老いた母親がいて、ふたりで拾った石とか石でできた装飾品を売る小さな土産物店をやっていて、ふたり共寡黙で、豊かではないかもしれないけど落ち着いて暮らしている。
ある日、観光でやってきた紳士が化石についてMaryと話をした後で、連れている彼の妻Charlotte Murchison (Saoirse Ronan)のことでお願いがある - 彼がロンドンに行っている間の4~5週間、彼女の面倒を見てあげてくれないか、と言うので、まずはそんなのだめ、って断るのだがお金のために仕方なく受ける。しばらくするとCharlotteは彼女の店を訪ねてきて、Maryの化石堀りについてくるのだが終始つまんなそうで(まあ、つまんないだろう)、そのうち冷たそうな海に落ちてびしょ濡れになって、風邪で高熱を出してMaryの家で寝込むことになる。
自分の化石掘りについてMaryはほぼ喋らず語らず、でも実際には彼女が掘りあげたIchthyosaursは大英博物館に行っていたりするし、石をひとめ見ただけで判別してしまうのですごい人のようで、でもほぼ喋らないし自慢もしないので本当のところはわからなくて、別にわかって貰おうともしていない。まるめの背中が寄ってくるな触ってくるな関わらないで、ってずっと言っているような。
Charlotteも最初はずっと黙っているのだが、最初の子を流産してから塞ぎこんで鬱になっていたことがわかり、やがて風邪から回復して医師から音楽会に招待されると、隣に座った婦人と楽しそうに社交のお喋りを始めたので、なーんだそういう奴かよ、ってMaryは膨れたり。
そんなふたりが化石掘り以外にすることもないので横並びで一緒に掘っていって、しょうがねえなあ、とか、なにやってんだよ、みたいなやりとりをしつつ、大物を掘りあてたりして、互いにおそるおそる近寄っていって.. という辺りがものすごくよいの。火花を散らして燃えあがる愛のようなやつが石を拾って化石を掘って、の地道な作業と同じようなペースのなかで突然見出される。ふたりはただの石ころの奥にそいつが眠っていることをわかっていた。愛っていうのはそんなふうにして掘りだされるあれではないのか(なんてもちろん言わないよ)。
やがてCharlotteは夫のいるロンドンに戻らなくてはならなくて、Maryはお別れしてからまた元の暮らしに戻った、と思ったら母が亡くなって、そういう状態でCharlotteからの手紙を受けとるとたまらずにロンドンに出て行って、そしたら…
あのラストはすばらしいの。なにかが溢れかえる、というより、地味だけどじーんて、ずっと残る(まだ残っている)。
地の果てのような場所で、金で雇われてしぶしぶ始まった関係が... というと日本でももうじき公開される(よかった!)“Portrait of a Lady on Fire” (2019)に少し似ているのかもしれない。あれは浜辺で絵を描いていく話だった(そんな単純なわきゃないが)。 火と石(それか貝か)の違い、くらいには違うかも。
あと、終始むっつりしたままのKate Winsletが見事で、そこでどうしても”Nomadland”のFrances McDormandのことを思いだしてしまう。Maryはずっとあの浜辺にいて移動なんてしないのだが、石を掘って拾いあげてそれを割って磨いて、そういうのを延々続けながら数億年前の恐竜とかアンモナイトに到達しようとする – 座りこんでそんな時間の旅を続けていくNomad - Bruce Chatwinの方に近い – の一種なのではないか。
そして、極めてほんとうにどうでもいいことなのだが、”Nomadland”にも”Ammonite”にも、主演女優が野外で座りションをするシーンが登場する。LFFの同じシアターで続けて見た2本がこうだとなんというか。偶然だろうけど、偶然だろうか…
Mary AnningのWikiとか読んでいるとおもしろいねえ。”She sells sea shells by the sea shore”って彼女のことなのね(明確な証拠はないらしいけど)。
10.21.2020
[film] Ammonite (2020)
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