10.11.2020

[film] The Forty-Year-Old Version (2020)

8日、木曜日の晩、CurzonのVictoria - 映画館で見た。
客は - そうだろうなーと思ったけど - 自分ひとり。 もうNetflixのストリーミングで見れるようになっているのね。

Radha Blankさんが作・監督・主演をして、今年のサンダンスのドラマ部門で監督賞を受賞している。
Radha (Radha Blank)はNew Yorkのウェスト・ハーレムのアパートでひとりで暮らしている劇作家(Radha Blank本人もずっと劇作家)で、10年前は"most promising 30 under 30”に選ばれていたのに今は仕事もなく、新作も書けず、高校生を相手に演劇のワークショップをして食い繋いでいるのだが、生徒にも小馬鹿にされたりしてぱっとしない。

高校の頃からの友人でエージェントをしてくれているArchie (Peter Y. Kim)の口利きで大物プロデューサーのJosh Whitman (Reed Birney)にパーティで会わせて貰うのだが、彼女が書いている戯曲 “Harlem Ave.”について彼がジェントリフィケーションとか小賢しいことをいってくるのでむかついて掴みかかって、おじゃんになる。

もう劇作のキャリアはこれで終わりだって思って泣いて、怒りにまかせて書いた言葉をラップにしたれ、ってインスタでみつけたDJのD (Oswin Benjamin)に連絡してBrooklynのRockaway Ave.の彼のスタジオを訪れる。そこではいろんな若者が煙もうもうの中なんかやってて、おばさんなんか用? だったDは、Radhaのライムを聴いてびっくりして、自分のやっているライブイベントに彼女を呼ぶのだがフロアに自分のとこの生徒がいたりするのを見て緊張して大失敗したRadhaはもうだめだ、って再び劇作の方に戻る。

劇の方はArchieが粘ってWhitmanとの仲を修復してくれて、白人女性の演出家を入れて“Harlem Ave.”の上演プロジェクトが始まって、そちらが忙しくてDからのCallにも出なくなっていくのだが、劇の方も決して順調というわけではなくて、これでいいのか? って自問したりArchieと喧嘩したりしつつ初日がやってきて..

もう40になるのにいまだにフリーに近い状態で、壁を見つめたまま自分が本当になにをやりたいのかわかんないまま延々もやもやしている、そういう状態を微細に具体的に描いていて、すばらしいモノクロの画面 - 構想中の劇作の内容に入るとカラーになる - がドキュメンタリーのように生々しく、嘘があるとは思えなくてじっと固まって見入ってしまう。

彼女は少し前にアーティストだった母を亡くして、兄(弟?)ともごたごたがあり、自分がやりたいこと - それを母が生きていたらそれをどう思っただろうって意識してて、その時に白人がスポンサーとなって彼らがあれこれ口を出してくる劇作は本当にこれでいいのか、ってずっと悩んでて、他方でラップはその反対側で自分の言葉でストレートに相手をぶちまかそうとする気持ち良さがあって、自分を好きになってくれたらしいDのことも含めて、どうしたらいいのか… っていうのを、近所のおじちゃんおばちゃんたちのコメントやアパートの前に居ついたホームレスの声も交えておもしろおかしく描いてて、笑えるところもいっぱいあるのだが、年齢によってはぼんやり考えてしまったりする人も多い気がする。 

ただこれで129分はちょっと長くて、90分くらいにできたら傑作になったかも、なのだが切れなかったんだろうな。この10年のジェントリフィケーションの流れとか、演劇の側から言いたいことがいっぱいあって、そこに自分のこれからをどう重ねたり折り合ったりすべきなのか、考えながら書いていったのではないか。

モノクロ画面のかんじでなんとなく“Clerks” (1994)を思い出した。これも行き場を失った若者(たち)のコメディだったねえ。

Radhaが最後にぶちかます“The Forty-Year-Old Version”がかっこいいったらないのだが、このタイトルは”The 40 Year Old Virgin”(2005) っていう今から15年前に作られたコメディ映画から来ているのよ。たぶん。


古本屋のSecond Shelfの実店舗の方がしばらく閉まるというので、金曜の夕方に予約いれて慌てて行ってきた。店を畳むわけじゃないから心配しないでいいわよ、って言われた。 久々だったのであれこれ買ってしまったのだが、"Studies in Modern European Literature and Thought"っていう叢書(?)でアイリス・マードックがサルトルについて書いている一冊があって、おもしろそう - と思ったら翻訳も出ていた..


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