10.31.2020

[film] Ung flukt (1959)

21日、水曜日の晩、BFI Southbank - 映画館で見ました。

BFIでは、記念碑としか言いようがない14時間のドキュメンタリー” Women Make Film: A New Road Movie Through Cinema” (2018) で紹介された女性作家による映画の特集上映が始まって、そこからの1本。この作品は"Women Make Film"のなかでは4チャプターで参照されている。

ノルウェーで最初の女性映画監督Edith Carlmarの作品で、Liv Ullmannのデビュー作(これのひとつ前にuncreditの出演作はある)で、英語題は”The Wayward Girl” – 同タイトルで1957年のアメリカ映画があるのでちょっと混乱するのだが、原題をそのまま翻訳すると“Young escape”になる。

大学入学を控えたAnders (Atle Merton)は両親の前ではよいこみたいなのだが、高校を抜けてぷらぷらしている不良娘のGerd (Liv Ullmann)のことが好きでたまらず、ふたりでキャンプに行きたいって言ったら両親からは却下されたので、父親の車を無断で奪ってGerdを乗っけてかつて父と行ったことがある人里離れた狩猟小屋に向かう。Gerdはそんなに乗り気ではなくて退屈しのぎにはいいんじゃない、くらいの冷めたノリ。

こうして毎日ごろごろうだうだして川で泳いだり釣りしたり羊泥棒したり、ふたりだけの世界を楽しんでいくのだが、Gerdはだんだん退屈してきて町に行きたいコーラを飲みたいとか言うようになる。そのたびにAndersはなんとか宥めて、そうしているうちにAndersのパパとGerdのママがふたりを連れ戻しにやってきて、そうら来たぞ、って身構えるのだがなんだかふたりは丸めこまれて納得して帰っちゃったり。

そのうち食べ物も底を尽きてきたので盗んできた羊を殺そうってなんとか殺したらいつの間にか見知らぬ中年男 (Rolf Søder)がそれを見ていて皮を剥いだり料理したりを手伝ってくれて、Bendikと名乗るそいつは流れ者で納屋に泊めてもらうぜ、ってそのまま居ついてしまうのだが、Andersとはぜんぜん違う山男タイプのBendikにGerdは興味が湧いてちょっかいを出し始めて、Andersにはおもしろくない。

このほかにも町の雑貨屋に泥棒に入ってあたふたじたばたしたり、Gerdのママが再びバイクでやってきて居座ってBendikと仲良くなったりいろんなことが起こるので退屈しない。のだがGerdは変わらずにGerdのまま動じない - 主人公はあたしだなめんな。

こういう物語にありがちの展開 - 自由を求めて家出したふたりの関係が内部から壊れていくのでも親たちの介入によって壊れるのでも第三者の闖入によって壊れるのでもなく、そのそれぞれが少しづつ作用しながらも危ういバランスを保っていって、でも(びっくりしたことに)壊れないままで終わる。それは彼女が妊娠したからかも、とかそういうのではなく、この後にすぐ壊れてしまうであろうかんじは孕みつつも。というか、壊れたからなんだってんだよ、ってGerdはいう。

若いふたりの逃避行、というとIngmar Bergmanの“Summer with Monika” (1953) - 『不良少女モニカ』を思い浮かべるのだが、真面目な男子と奔放な女子という構図はほぼ同じ、ただMonikaがまだその揺れる内面をそこそこさらけだしていたのに対して、こちらのGerdは最後まで何を考えているのかわからない – わかられてたまるか – のような描き方をしていて、それがLiv Ullmannのぶっきらぼうな佇まいに巧くフィットしているの。かんじとしては”Vagabond” (1985)のSandrine Bonnaireのように堂々としていてかっこいい。

Liv Ullmannさんはこの時点でじゅうぶんできあがっているので、すごいねえ、しかない。


やっぱしまたロックダウンなのかなあ..

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。