10.28.2020

[log] Dresden - Berlin

23日の金曜日に会社を休んで、2泊でドレスデン - ベルリンに行ってきた。

夏休みが2泊のベネツィアだけではつまんないな、って次の計画を立てていたのだが、当初予定していたところへのフライト(英国内)がキャンセルになって、次のを探していくなかで昔から行きたかったドレスデンが浮上した。いま英国から行きやすいのはイタリアとドイツで、イタリアは行ったから次はドイツかしら、というのも。

ただ報道されているようにヨーロッパは10月に入って第二波? って「?」付きの感染者がぼこぼこ湧いてきて下がる気配がなくて、英国でも警戒レベルがあがって、直前までどうなるのかしら..  だったのがなんとかなった。ずっとマスクしてたし、どこに行っても入っても今後の追跡のために名前と連絡先を書かされたけど、それくらい。(まだわかんないが)大丈夫だったかも。

ドレスデンへは直行便がないのでベルリンから約2時間の電車になる。本当はプラハからの列車旅が素敵だそうなのだが、いまチェコへの入出国は難しそうなので、ベルリン経由にする。
目的はほぼ美術系のみ。これに関しては、とってもすばらしい街であり旅だった。

ドレスデンの主要美術館・博物館は“Staatliche Kunstsammlungen Dresden“ていうコンプレックスで束ねられているらしいのだが、どの建物になにがどう入っていてどこがばらけているのか調べるのも面倒だったので(←よくない)見たいやつの上から見ていくしかない。以下、ほぼ時系列で。

Zwinger

この宮殿にあるGemäldegalerie Alte Meister (Old Masters Picture Gallery) はなんとしても行っておきたかった美術の館で、特に18世紀頃までの西洋美術の充実ぶりはとてつもない。なに見てもわーすげえなこれ..  しかない。庭園は紅葉がとてもきれいだった。

Raffaelの“Die Sixtinische Madonna“ (1512-13)の額縁の底で頬杖ついて膨れている天使はみんなが知っている有名なやつで、これが本物。 ぜーんぜん関係ないけど、90年代のNYにAngelsっていうイタリアンレストランがあって、Angel Hairパスタが名物で、ここのトレードマークがこの天使二匹だったの。あの頃たしかにあったAngel Hairのブームって、なんだったのかしら? とかしょうもないことを思いだしたり。   館内でやっていた企画展示はふたつ;

Raphael. Legacy and Inspiration

Garofaloの大作 “The Triumph of Bacchus” (1540) - 元のドローイングはRaphaelの - を中心にこの頃の画家たちへのRaphaelの影響範囲を示す。どの絵も大漁旗みたいにダイナミックでドラマチックでイキっているかんじ。(今ならきっとデコトラとかに乗ってやってくる)

Caravaggio. The Human and the Divine

ローマのPinacoteca Capitolinaから借りてきたCaravaggioの“Johannes der Täufer“ (1602) – 「洗礼者聖ヨハネ」を中心に関連しそうな館内収蔵品を回りに置いている、のだが技法的にもテーマ的にも緩めに広げていて、Francisco de ZurbaránからRubensからVermeerの「取り持ち女」まで節操なくここに並べられている。

他にはGiorgioneの寝っ転がるVenus、Cranachは山盛り、Jan van Eyckの宝石みたいな”Dresden Triptych” (1437)、Jean-Étienne Liotardの驚異的なパステル画 - ”The Chocolate Girl” (1744-45)、あとヴェネツィアの運河で有名なCanalettoってドレスデンの水辺の景色もいっぱい描いていて、先月の旅から繋がってきたり。

Vermeerの「窓辺で手紙を読む女」(1657–59)は未だ修復中なので出ていなくて、でもお披露目のスケジュールが出たので、来年の再訪を計画したい。その時はオペラハウスもついでに。

Historic Green Vault

王宮にある宝物庫には「歴史的なの」と「新しいの」があって、歴史的な方はチケットが時間制で切られていて、こっちは23日に着いてすぐに行った。荷物はぜんぶロッカーとかに預けて中は撮影禁止。モスクワのダイヤモンド庫みたいなかんじ。象牙とか珊瑚とか琥珀とかエナメルとか金銀とかブロンズとかガラスとか、いろんな宝石を盛大に散らしためちゃくちゃ細かい工芸品とか家具とか場合によっては鏡で部屋まるごととか、国宝みたいのがごろごろしてて、王族っていうのはなんでもできちゃったんだねえ、しかない。なんで緑なのかというと孔雀石の緑なのね。

翌日は新しい方のVaultも見て、武器とか馬具とかテントとか、修復中の広間もあったけど、窓から見ることができる向こう側の建物の壁とか、きれいなのもいっぱいあって、これらは爆撃が一旦ぜんぶ壊しちゃったんだなあ、って。

Albertinum

こちらは近代美術館。
なんとしても見たかったのはCaspar David Friedrichの「山上の十字架」- テッチェン祭壇画 (1808)で、見るというより拝んで、この他にも「墓場の入り口」(1825) とか彼のよい絵がほぼ一部屋ぶん。
Oskar Kokoschkaの自画像を含む数点とか、Wolfgang Tillmansの部屋がひとつ、Gerhard Richterの部屋がふたつ、どれもよい意味で素っ気なくただそこに置いてあるふうでよかった。見逃していた部屋があったことがわかったので、ここもまた来るしかない。

あと、ここの隣のKunsthalle im Lipsiusbauでやっていた“1 Million Roses for Angela Davis”、時間がなくて諦めた。時間がなくてどこに向かったかというとー。

Dresdner Molkerei Gebrüder Pfund

世界中のどの都市にも必ずある「世界一美しい本屋」、ではなくてこれは「世界一美しい牛乳屋」だそうで、ミルク好きだから行った。創業1880年で、内部にVilleroy & Bochのタイルがびっちり貼られていて確かに美しい。けど、ここでやはり問われるべきはミルクそのものであるから、立ち飲みで(上のフロアにはカフェもあった)生乳のような酸味のあるミルクと、それにマンゴジュースを加えたのをふたつ飲んだ。おいしいけど、マンゴのはマンゴラッシーの砂糖なしとほぼ同じだったような。もうちょっとどこのどんな牛とか、そういうのを知りたかったな。店内のカウンターではチーズを売っていたのでチーズひとつとトートと牛乳石鹸とパンフをお土産に買った。

で、24日の夕方に電車でベルリンに戻ったのだが、予定より遅れて到着した電車が途中でキャンセルになって、よく知らん駅で降ろされてぐったりした。 で、25日は夕方までベルリン。

ベルリンは何度か来ているし、いつものように絵画館だけ見て帰ればよいか、だったのだが、ホテルの近くにあったブランデンブルク門とか、きちんと見たことなかったので見る。ついでにその近くの「ホロコースト記念碑」を見て、まだ時間があったので「壁」まで歩いて、その隣にあったGropius Bauに入って展示 – この間までBarbicanでやっていた”Masculinities: Liberation through Photography”  - を見た - 展示というより建物のほうを見たかっただけ。

Gemäldegalerie

もうここに来るのは4回目くらいなので慣れたものだったのだが、巡回ルートがこれまでと真逆の方向になっていたので変なかんじ。いつもの常設のは楽しくてスキップしながら – ほんと楽しいよねえここ - 見る。 ここのCaravaggioの”Amor Vincit Omnia” (1601-02) - "Love Conquers All"ってドレスデンで見たCaravaggioと同じように全裸の少年がくねっている。テーマは違うけど。

Between Cosmos and Pathos: Berlin Works from Aby Warburg's Mnemosyne Atlas

今回ここに来たのはこれが見たかったから。 Aby Warburgが晩年に手掛けていた未完のプロジェクト”Mnemosyne Atlas” – 古代から近代まで、いろんな図像やイメージが貼られた63枚の黒パネルの一部を並べて、”Between Cosmos and Pathos”というテーマの元にこれらと関係のある美術品 – 絵画、彫刻、写真、ポスター、等をベルリンの美術館・博物館群のコレクションの中から拾ってきて並べてある。こういうことができるのはベルリンかThe Warburg Instituteがあるロンドンくらいよね(あんま関係ないけどThe Warburg Instituteの公園を挟んだ反対側にBloomsbury Groupの人々が住んでいたの)。 
というわけで、”Laocoön and His Sons” - “Mnemosyne and Her Daughters” - “Atlas” - “Trajan” - “Ninfa” - “Seven Women” - “Melancholia”といったカテゴリーの下、絵画だけでもBotticelliの”Venus” (1490)からFilippino Lippiの“The Muse Erato” (1500)からDomenico Ghiralandaio “Judith with her Maid” (1489)からRembrandt “The Abduction of Proserpina” (1931) からRubens “Fortuna” (1636-38)から … 単独で見ているだけでもすばらしい絵画たちが連なって見事な星座を作ってみせる。錬金術師Aby Warburg。

後で知って地団駄ふんだのだが、ベルリンの別の場所 - HKW (Haus der Kulturen der Welt)ではこの展示と並行して”Aby Warburg: Bilderatlas Mnemosyne - The Original” ていう展示をやっていて、ここには復元された63枚のパネルがあったんだって。うううー(11/30までやっているのか..)

すべて見終わって売店に行ってこれのカタログ(英語併記)は当然買ったのだが、その横にばかでかい63枚のパネルの図像が収録された”Mnemosyne Atlas”が... €200で…  しばし立ち尽くし、帰りの荷物をひとつチェックインすれば、とかいろいろ考えて、でもぎりぎりで踏みとどまる。(でもさっき、Amazon Primeで少しだけ安かったのでつい…)

ここの展示で目をものすごく使って偏頭痛の兆候が出てきた – いつもの頭痛薬を忘れてきたのは痛かった -  ので、あとは飛行機の時間までMustafaの屋台に行ってケバブ食べたり、川縁のドームに行ってぼーっとして過ごした。ベルリンも紅葉が見事で、公園には”People on Sunday” (1929)のかんじがあって - あれは夏の話しだけど - 疲れた目にしみた。

やっぱり2泊ではぜんぜん足らなかったわ..

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