10.22.2020

[film] Small Axe: Lovers Rock (2020)

18日、日曜日の夕方、BFI Southbankで見ました。
LFFはこの数時間前に見た”Ammonite”でクローズしたのだが、これもLFFので、でも当初の上映作品ラインナップには入っていなくて、後から発表されてチケット取ったらタダだった。よくわからないのだが、おまけ上映、ってことかしら?

9月のNew York Film Festival (NYFF)ではこの作品がオープニングを飾って、それがワールドプレミアだった。監督のSteve McQueenがBBCと組んで”Small Axe”という5つのエピソードからなる選集を作っていて、NYFFではこのうちの3つ – “Lovers Rock” -  “Mangrove” - “Red, White and Blue”が上映されて、LFFでは、オープニングで“Mangrove” – こないだ見たドキュメンタリー “Mangrove Nine” (1973)の裁判を扱ったもの - が上映されて、エンディングで”Lovers Rock”が上映された。

上映された3つ(2つは未だ)はどれも評判がよくて、恐らく英国の40-50年前、実際に起こったことや事件を題材にしている、という点でまさに今見られることを狙って作られていて、だから、上映前のビデオで監督が語っていたようにBBCで幅広く放映される、という点が重要なのだと思う。

”Small Axe”は各エピソードによって時間の幅があるようだが、これは68分の小品。すんごくよい、というか大好き。 あの頃のゆったりしたレゲエが好きな人にはたまんなくて、床でごろごろ悶絶しながら見たくなるような1本。

監督の叔母さん - 家が厳格で敬虔なカトリックだった ー の若いころのお話しがモデルなのだという。
時は1980年頃、ロンドンのLadbroke Grove界隈の一軒家で、ソファを庭に出したり、でっかいスピーカーを家に運び込んだりしている若者たちがいて、キッチンでは料理を作っている女性たちがいて、若者たちは配線してスピーカーを繋いでサウンドシステムから音が鳴ると歓声をあげる。

夜中に家の2階の窓から靴を抱えてこっそり地面に降りてどこかに向かう女性がいて、これが主人公 – という程目立つわけではない – のMartha (Amarah-Jae St. Aubyn)で、友人の女性と落ちあってバスでさっきの家に向かうと、その家には若者たちがいっぱいいて、50p払って中に入るとフロアでDJがぶんぶん音楽を鳴らしてて、キッチンでは料理がサーブされてて、みんな思い思いに - 体揺らしたり一緒に踊ったり、煙にまみれたり、庭のソファでだらだらしたり - 楽しんでいる。

映画はこの一晩にこの家のダンスフロアで起こったことを中心に、シンデレラのMarthaが朝迄にそうっと自宅のベッドに戻るまでを追う。誰かは誰かといつも一緒にいる、誰かは誰かを狙っている、誰かは誰かから離れようとしている - でも殺人や惨劇が起こることはないの。みんな暴れるのではなく楽しむためにきているので、睨みあいや小競りあいや引っ掻きあいはあるけど、降り注がれる音楽 – ラヴァーズ・ロック - がすべてを包みこんで酢漬けの骨抜きにしてくれる。

"Kung Fu Fighting" (1974)でみんなバカみたいに一緒に踊ったり、Janet Kayの“Silly Games” (1979)でみんな鳥みたいに超高音だして笑ったり、ひとりだけ危ない動きをしている奴がいてはらはらしたり、そういうフロアの様子、そして家の中と外の様子を隅から隅まで繋いで捕えて我々を離さないカメラがすばらしいの。そこで流れていた彼らだけの時間。 昼間にどんな辛くてやなことがあったとしてもー。

これはLockdown真っ只中の6月に見た”Babylon” (1980)と同じ場所 - Ladbroke Grove、同じ時代のお話しで、あそこで力強く鳴らされていた闘争のためのダヴやレゲエがここではラヴァーズ・ロックになっていて、でもそこにギャップはないの。彼らが肌を摺り合わせるその隙間にサウンドシステムの振動が挟まってきて彼らの生そのものを揺らし、固める。 できれば”Babylon”との2本立てで、ライブハウスにサウンドシステム組んで上映するのが理想的。

今から40年前のこと、という時間差もあるけど、あんなふうにフロアでくっついて踊って騒いでいた時代が本当に遠く感じられて、その遠さというのは“Mangrove Nine”を見た時に感じる時代的な距離感と違うのか同じなのか。そういう距離の、そういう記憶の域に置いてしまってよいのだろうか、という問い。 今ああいうのをやろう/やりたい! とかそういうことではなくて。

最後に彼と自転車に乗ったMarthaが見る朝の光 - あのかんじを思い出すんだ、って。
いいなー、って終わってしばらく立てなかった。立ちたくなかった。

エンドクレジットにDennis Bovellの名前があって(IMDbには出てない)、彼が出ていてもちっともおかしくないのだが、どこにいたんだろう?

あと、Original ScoreはMica Leviってあるんだけど、どこで鳴っていたんだろ?

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。