6.10.2025

[film] La porta del cielo (1945)

6月3日、火曜日の晩、BFI Southbankで見ました。 4Kリストア版のUKプレミア。
監督はVittorio De Sica、 英語題は”The Gate of Heaven”。 日本では公開されていない?

ロレートの聖マリアの聖堂に向かう列車に医療関係者といろんな患者たちが乗りこんでいって、それぞれここに来るまでの事情や境遇がフラッシュバックで語られていく。車椅子の少年は家族に見放されて近所の親しいねえさんに連れられて乗りこんでくるし、左腕が突然動かなくなってしまったコンサートピアニストがいるし、同僚のちょっとした意地悪で目が見えなくなってしまった工場の人がいるし、誰もがこの大変な戦時下になんで..? の不安に不満、絶望を抱えながら列車に乗りこんで、神にすがる思いの人もいれば、もう神なんているものか、と諦めている人もいる。びっちりの客車のなかでも、車椅子の少年はみなにやさしく構って貰えるし、予約なしに乗りこんできたピアニストを気にかける看護婦の女性もいるし。

最初に患者たちを紹介していくパートはエピソードによって質もばらばらで雑なところもあるし、だいじょうぶかなあ?になるのだが、ロレートに着いて、列車から降りた患者たちと医療関係者、彼らを迎えるキリスト教関係者たちが光を求めて一方向に歩きだすシーンはなんだか言葉を失う。わかりやすい奇蹟が(それっぽいのはあるけど)起こるわけではなく、みんな黙ってゆっくりと一方向に向かって歩いて/歩かされていくだけ。宗教ぽい、と言われれば教会がお金も出しているのでその通りなのだが、”The Gate of Heaven”というのはこれを指すのか、というのがすぐにわかる、不思議な力強さがある。

撮影は終始イタリアを占領していたナチスの統制下で行われ、場所も時間も制限される中、ナチスの立ち入ることのできない聖堂に大量の「エキストラ」として人々を雇って囲うことで多くの人々を連れ去られることから救った、と聞くと、この映画の制作がそのまま”The Gate of Heaven”だったのだなあ、って。

つい先日、“Bicycle Thieves” (1948) - 『自転車泥棒』の子役だったEnzo Staiolaが亡くなったと聞いて、この”The Gate of Heaven”に出ていた人たちももうみんなこの世にはいないんだろうな、みんな天国に行っているといいな、って思った。戦時下に作られた映画だから余計に、かもしれないがそう思えてしまうまっすぐな切実さがあるの。


Sleeping Car (1933)

少し昔に見た昔の映画で書くのを忘れていたやつ。
5月20日、火曜日の晩にBFI Southbankの”Projecting the Archive”っていうアーカイブから古いのを引っぱりだして上映する定期の特集で見ました。

上映前に主演のIvor Novelloについて本を出している研究者の人によるイントロがあった。

監督はAnatole Litvakで、90年代にナイトレートフィルムが発見されるまで所在不明とされていた作品だそう。 撮影をGünther Krampf、美術をAlfred Jungeが手掛けて、とてもヨーロッパ映画の香りがする英国製の軽いrom-com。

オリエント急行等の寝台車(Sleeping Car)の車掌をしているフランス人のGaston (Ivor Novello)は、港々ではない駅々に女をつくって、停車するとデートをして去り、を繰り返していて、そんな彼が乗客のAnne (Madeleine Carroll)と犬(かわいい)と知り合って、ウィーンでデートしようとするのだがお金がなくて、怒った彼女はパリに戻ってしまうのだが、イギリス人の彼女は結婚でもしない限りこれ以上ここに滞在するのは不可、って言われて結婚するしかないかー、となった時に相手として引っかかってきたのがGastonで、彼は自分の優位な立場を使っておらおら、って婚礼の宴の準備を進めちゃったり好き放題やる、それだけのコメディなの。でもどちらもサバサバ系の顔立ちなのでそんなもんかー、ってなってよいの。すぐに別れそうだけど。

Ivor Novelloってあまり知らなかったのだが、当時の英国ではアイドルのようなすごい人気だった、ということを知った。

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