6月14日、土曜日のマチネをStratford-upon-AvonのRoyal Shakespeare Theatreで見ました。
Stratford-upon-Avonはロンドンから電車で2時間くらい掛かるところで、コロナ禍で劇場もなんもやっていない頃に一度来た。 RSCの演劇もずっと見たいと思っていたのだが、夜の部だと現地に泊まらなければならない可能性もあり、でもこの演目は見たくてどうしよう… になっていたら土曜日昼のが取れた。(で、これを取ってからBFIのFilm on Film Festivalともろ被りしていたことに気づく…) なので朝は早めに出て、シェイクスピアの生家とかアン・ハサウェイのコテージとかをまわり、ふつうに観光していた。
Radioheadの”Hail to the Thief” (2003)をモチーフにしたシェイクスピアのHamletで、Thom Yorkeが音楽監督として入って、”Hail to the Thief”をそのままサウンドトラックとして流すのではなく、彼が再構成・アレンジ - パンフでは「脱構築」 - したものを8人編成のバンド(うち男女のヴォーカル2名)がライブで演奏していく – 「Radioheadは演奏しません」とチケット購入時の注意事項としてll書いてある。
劇のパンフレットにあったThom Yorkeへのインタビューには、シェイクスピアの劇はトーテミックなものなので、そこに向かって音楽を作るのは冒涜になると思った、とかあったが、”Exit Music (For a Film)" (1997)は? エンディングだからよいの?
アメリカ大統領を讃える歌"Hail to the Chief"をもじった”Hail to the Thief”は、ブッシュの二期目に対する失望と911のカウンターとしての理不尽な対テロ戦争に対する怒りが生々しく充満した一枚だった。それは”OK Computer” (1997)から”Amnesiac” (2001)までで描かれたテクノロジー・ランドスケープへの不安や諦念、怖れからの大きめのジャンプであると同時に、これも不安と同様、持っていきようのない、決着のつかない生の感情であることも示されて、自分にとってのRadioheadは、ここまでで止まっている。
舞台は黒で統一されて、がっちりとした制服のようなスーツのような、重そうな男性の上着がステージの上から沢山吊り下げられている。奥には四角で仕切られたブースが上下に5つくらいあってガラスで覆われ、スタジオのブースのようになっていて、ミュージシャンたちがその中で演奏しているのが(暗いけど)見える。高いところにはヴォーカルのひとが立って歌うスペースもある。床には繋がれていないフェンダーのギターアンプが6つくらい放置されたように置かれていて、椅子になったり岩になったり。
脚色・演出はSteven HoggettとChristine Jonesの二人で、彼らはDavid Byrneとsocial distance dance club - ”SOCIAL!”を手掛けたり、”Harry Potter and the Cursed Child”や”American Idiot”といったメジャーなのも沢山やっている人たちで、今回のはChristine Jonesが別の”Hamlet”の演出の手伝いをしている時に思いついたものだそう。 休憩なしで1時間40分。
問答無用のクラシックである“Hamlet”は過去にいろんな角度からいろんなテーマで語られたり取りあげられたりしてきたのだろうし、でもライブの演劇として見るのは初めてなので他との比較はできないのだが、ここでのHamlet (Samuel Blenkin)は、華奢で、髪は長めのぼさぼさで、全体にずっと内を向いていて、それが父の殺害とその周辺に漂う陰謀策謀だのの臭気に触れて怒りが噴きだして止まらなくなり、母や叔父たちだけでなく自身をも蝕んでどうしようもなくなっていく。その怒りの奔流を底に沈めるのではなく撹拌してドライブしていくのがより分厚くアレンジされた”Hail to the Thief”で、すぐ隣というか裏のブースで鳴っているライブの音も含めて、上塗りを重ね彼の目を塞いでいく苛立ちと復讐への思いがどれだけのものか、だけはよくわかる。 と同時に彼ひとりでわーわーなっているので、ひとり孤立していって、それが結果的にOphelia (Ami Tredrea)の狂気をもたらす – あの“To Be or Not to Be”はそんな彼女がいう。
そして、今のアメリカ、というか世界はブッシュの二期目の時以上に、ものすごくキナ臭くやばい状態になっている懸念があり - “Hail to the Slaughterer”で、本当に真っ暗で怒りと絶望しかない、そういうのともリンクして違和のない狂った熱の地盤。
ちょっとだけ残念だったのは結構でてくる男たちの群舞シーンが、アイドルグループのそれみたいに、なんかちゃらく見えて、全体のダークな轟音のなかでやや浮いているように見えたこと。そんな無理に群れて踊らなくたってよかったのに。
6.21.2025
[theatre] Hamlet Hail to The Thief
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