6月7日、土曜日の夕方、BFI Southbankの6月の特集 - “Wanda and Beyond: The World of Barbara Loden”で見ました。
60年代と70年代の間に置かれた象徴的な作品”Wanda”を中心に、監督、女優Barbara Lodenの他の監督作品や出演作品、”Wanda”の登場を後押ししたであろう60年代末のフェミニズムの実験映画やドキュメンタリー、ここから更に広がって虐げられた女性たちの痛みや孤立を描いたクラシックたち - ブニュエルの『忘れられた人々』(1950)、溝口の『祇園の姉妹』 (1936)、ヴァルダの『冬の旅』 (1985)、目玉としてウォーホルの”The Chelsea Girls” (1966)の16mm版など、ぜんぶはとても追いきれないけど、がんばる - とか言ってるうちに月の半分まできちゃったし。
この特集のポスターに使われている”Wanda”のスチールは、Mr.Dennisの車の中にいて、出ていけ、って言われて「なにも悪いことしていないのに、なんで出ていかなきゃいけないのか?」って彼女がこっちに向かって言うシーンから(たぶん)。
上映されたのはBFI National Archives の35mmプリントで、上映前に16mmで撮影されたこの作品のプリントを巡る歴史が紹介された。今回の上映は2010年にGucciがスポンサーとなって焼かれたプリントだそう。自分が初めてBAMで見た時のIsabelle Huppertさん所有のプリントはどこから来たやつだったのか? そして4回目くらいになる”Wanda”を見る。
無力でダメで何もできない、努力することすらムリになってしまった彼女が、やはりダメな - 単細胞で暴力的で悪賢くもなれない半端男のMr.Dennisと出会って、彼の計画した銀行強盗をやってみようとするが、どっちもダメなので簡単にはぐれて失敗して… といういかにも、な、そこらに転がっていそうな話。いつも思うのはこんなにも悲惨で救いようのない話しなのに、画面から受ける強さ、固さは揺るぎなくて見るとまだだいじょうぶかも(なにが?) って、なんでもきやがれ、って背筋がしゃんとするかんじになる。ものすごく暗くて破壊的で、でも耳元で鳴る音楽がもたらしてくれる効果に近いというか。
彼女がひとりでとぼとぼ歩いているところを遠くからとらえたショット、それだけでよいの。自分もそうやって歩いているのだ、ってよく思う。
Fade In (1968/1973)
6月9日、月曜日の版、BFI SouthbankのBarbara Loden特集で見ました。彼女が初主演したrom-com… なのかなあ。
クオリティに問題がありすぎて監督名を伏せて公開するとき、”Alan Smithee”という偽名が被せられるのだが、この作品はこの監督名が付与された史上最初の作品で、実際の監督はJud Taylor - もちろんノンクレジット - だそう。という事情があって1968年に完成したのだが、TV放映という形で公開されたのは1973年だった、と。視聴率とか、どうだったのかしら?
ハリウッドからユタの砂漠にやってきた映画制作チームの編集担当Jean (Barbara Loden)が、制作の手伝いにやってきた地元のカウボーイRob (Burt Reynolds)と恋におちていろいろごたごたする、というお話で、ヒゲを生やしていないつるつる顔のBurt Reynoldsはなんだか変だぞ(胸毛はたっぷり)、くらいしか印象に残らない。
評論家とか権威の人にこの映画はだめ、って言われてもどこがダメなのかあまりよくわからなかったりする自分でも、さすがにこれはアレかも、と思うくらいのやつだった。JeanもRobもなんでそこにいて、出会って愛したり別れたりすることになるのか、皆目わからなかったり。
こんなのでも映画になるのか、とBarbara Lodenさんは思って、それがやがて”Wanda”に、なんてことになるわけもなかろうが、すべてがきらきらきれいにお化粧されているこの世界の反対側に”Wanda”が立ってことだけはわかる。”Wanda”だって、十分に作りこまれた世界ではあるのだが、それにしても。
6.16.2025
[film] Wanda (1970)
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