6月6日、金曜日の晩、Barbican Theatreで見ました。
Sholem Aleichemの短編小説” Tevye”を原作として、1964年、NYで初演された(演出、振付はJerome Robbinsだったのか)ミュージカルで、既にいろんなところでロングランされているクラシックで、このバージョンは、昨年の夏にRegent’s Park Open Air theatre - 野外シアターで上演されたものの屋内リバイバル。演出はJordan Fein。
『屋根の上のヴァイオリン弾き』というと子供の頃、新聞の夕刊に森繁久彌主演のこれの広告がずーっと掲載されていて、なので森繁というのは屋根の上でヴァイオリンを弾く人なのだ、とずっと信じこんでいた(Wikiで当時のキャストなどを見るとすごいのね)。そういう根深いインパクトをもつ芝居であるし、他のバージョンも全く知らないしどうしようか、だったのだが一度は見ておこう、と。
演出はJordan Fein。舞台上には屋根の上に藁が茂るようにはられた掘っ立て小屋が一軒建っていて、その上には楽隊がいて、ヴァイオリン弾き(Raphael Papo)がそこで黙って弾きだして、そこに主人公のTevye (Adam Dannheisser)がやってくる。Tevyeがヴァイオリン弾きなのではなくて、彼は牛乳配達人で、ヴァイオリン弾きは彼の影のように傍にいたり屋根の上にいたり、彼とその周りのエモーションをダイレクトに音として奏でてみんなの歌を紡ぎだす。
全体としては彼の5人の娘たちの結婚 - 彼女たちひとりひとりが相手を決めたり決められたりで結婚して家を出ていく話と、彼らを包む村の人たちみんなが追いたてられて住処を追われる話を、悲劇的ではなく、どちらかというと悲喜こもごもの調子で、でも力強い歌と – ところどころコミカルなやりとりとかコサックダンスとかも交えつつ - アンサンブルのなかで高揚感たっぷりに描いていって、Tevyeひとりが出っ張るのではなく、妻のGolde (Lara Pulver)も娘たちも、等しく印象に残る。
Tevyeの伝統に忠実であろうとする誠実さ、家長としての真面目さと強さ、この揺るぎなさが一族と劇全体を支えて、それが時勢の不条理感 – なぜ自分たちばかりが? - を際立たせ、混乱の時代を生きた家族、家族のありようを描いたドラマとしてとてもよくできていて、すばらしい家族の、人々の像として迫ってくる。
他方で、でもだからこそ、家や家族を奪われ続けているガザの人たちのことが映りこんできてしまう。ここでのTevyeや女性たちの辛苦や決断が、彼らの歌や音楽が、それなりの普遍性をもって響いてくるなら(そういう造りになっていると思った)、そちらに思いが至らないわけないよね? ということを当然のように差しだしてくれる、という点でも、よいミュージカルだった。
Mrs.Warren's Profession
6月10日、火曜日の晩、Garrick Theatreで見ました。
原作はGeorge Bernard Shawの同名戯曲(1893) - 『ウォレン夫人の職業』で、発表当時検閲を受けて上演禁止となった。Shawの”Plays Unpleasant” - 「不愉快な劇」の第3作めで、ベンヤミンがこの作品について論じているベンヤミン・コレクションの文庫は日本に置いてきてしまった。演出はDominic Cooke。
実の母(Imelda Staunton)と娘(Bessie Carter)が劇中の母役娘役を演じるということで少し話題になったが、この劇で実の母娘が演じるのは過去にもあったらしい。
舞台上には円を描いて英国の庭園のようにきちんと花が植えられていて、その手前真ん中にベンチがあり、行きかう人々は円のまわりを行き来しつつ、ベンチで会話をする。舞台衣装は当時のクラシックなそれ - 貴族のきちんとしたナリをしている。
Vivie (Bessie Carter)はケンブリッジを出て、法曹の道に進もうと意気揚々で、そんな彼女のところに母Kitty (Imelda Staunton)が訪ねてきて、自分の仕事は太古からある伝統的な仕事 - 娼館の経営である、と大げさでもなく、隠すふうでもなく、堂々という。
そこから、そんなー、って大騒ぎの大喧嘩になるのではなく、基本は会話劇で、やってくる牧師や貴族の男たちも絡めつつKittyは自分の仕事のある意味での「正しさ」や誇りのようなところまで語り、Vivieは正義に燃えるひとりの女性として対峙して、その対立する中味はわかるのだが、劇としてはやや静かすぎて、眠くなってしまうやつだったかも。
Imelda Stauntonはさすがに巧くて、Bessie Carterもがんばってはいるのだがママにはやはり及ばない、その辺が正直に出てしまうところとかも。
6.28.2025
[theatre] Fiddler on the Roof
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