6.04.2025

[film] Vanilla Sky (2001)

5月27日、火曜日の晩、BFI SouthbankのTom Cruise特集で見ました。

監督はCameron Croweで、Alejandro Amenábarの”Open Your Eyes” (1997)のリメイク - 公開当時にオリジナルの方も見なきゃ、と思ったのになんもしないまま簡単に四半世紀が過ぎちゃうとは。

BFIの人のイントロがあって、冒頭の無人のタイムズスクエアでの撮影時のエピソードなど。この頃NYに住んでいて、映画撮影のためマンハッタンのここからここまでブロックされます、とかニュースでよくやっていたのであれかー、と。 冒頭のシーン、タイムズスクエアで車から降りたTom CruiseにRadioheadの” Everything In Its Right Place”が被さってくるシーン、彼がひとりで北から南に向かって走っていくだけなのに結構鳥ハダだったことを思いだす。 そしてあんなところにVirgin Megastore(CD屋)があったなんて、これだけで十分SFのような。

David Aames (Tom Cruise)は大金持ちの父から出版社を引き継いでパーティ三昧で暮らしているぼんぼんで、パーティで友人のBrian (Jason Lee)からSofia (Penélope Cruz)を紹介されて恋におちるのだが、ずっと付きあっていた(いると思いこんでいた)Julie (Cameron Diaz)が車にDavidを乗せたまま爆走し、車ごと橋から落ちて亡くなり、Davidは顔に損傷を負ってマスクなしではどこにも行けない状態となる。

そこから先の、というかどの地点からなのかは不明なのだが、精神科医のCurtis (Kurt Russell)に対してDavidが語ったり、あるいは自虐を絡めた妄想込みで錯乱・暴走していく彼の姿を通して、自分のありようとか「本当の自分」を見つけようとする苦難の道が綴られていく。ドラッグとかマスクとか、隠蔽やごまかしなしにいまの自分や周囲と向き合うことができるのか – “Open Your Eyes”はその縛りを解放する呪文なの。

最初に見た時の自分の評価は微妙で、当時吉本ばななさんもぎりぎりでよしとしよう、みたいに書いていた記憶があるが、今改めて見ると、見栄えよく育った金持ちのぼんぼんのおめでたく都合のよい再生ストーリーで、こんなんだからやがてEronみたいのものさばってくるわけだー、くらいに結構むかついた - たぶん評価の温度感や目線は公開当時のそれから随分変わっているのではないか。

ただ、人口庭園みたいにきれいなフェイシャルを揃えて、脅かされることのないパーフェクトな、Vanilla Skyの世界を作る - オトコでお金があればできるのだ – っていう枠を作る限りにおいてはよくできた映画なのかも。Cameron Croweのおめでたいガキっぽさがよくも悪くも全開の。

冒頭にタイムズスクエアを走っていったTomが映画館に入って自分&映画館ごと爆破するとか、そういうのだったらまだなんかわかったかも。


Collateral (2004)

5月29日、木曜日の晩、BFI SouthbankのTom Cruise特集で見ました。

この特集では銃を持たないTom2作だけにしようと思っていたのだが、時間が空いたのと、これは見ていなかったのと。 こんなにすごいのを見ていなかったなんて愚かものだった。

監督はMichael Mann、やくざものとしては”Heat”(1995)よか断然冴えわたっている。それをもたらしているのはTom Cruiseの、自己愛みたいなところをざっくりそぎ落とした鉱物のような殺し屋の像なのだと思った。

まじめで平穏な将来を夢みるタクシー運転手のMax (Jamie Foxx)が一見ふつうそうに見えたVincent (Tom Cruise)を客として乗せたところから始まる悪夢のような巻きこまれのひと晩。Vincentは殺し屋で、やばいと思ったら相手を容赦なく殺して、関わらなかったことにして逃げようとするMaxも縛り付けて隙も抜け目もなくて、散々めちゃくちゃに振り回されて、ようやくどうにか抜けられそう、と思ったら最後に…

夜の通りをコヨーテだか野犬が2匹横切って、Audioslaveの”Shadow On The Sun”が流れて空気と温度がざらっと変わったところから始まるクラブでの銃撃のとんでもないこと。逃げたくても怖くて逃げられない - 現場から逃げられない怖さとVincentから逃げられない怖さの二重縛りが銃声のエコーと共に。

そしてこれは夜のLAの映画でもあって、遠くから見えるオフィスとか、道路の上にかかった長い果てしない歩道とか、最後に出てくる地下鉄(の機械みたいな冷たさ)とか、あのどこまでも遠くて冷たくて見渡せて– でも結局到達できない距離感ってLA独特のものだよねえ、ってしみじみした。

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