6.13.2025

[film] The Salt Path (2024)

6月2日、月曜日の晩、Picturehouse Centralで見ました。
新作の英国映画で、Gillian Andersonさんが出ているから、くらいの理由で。

原作は映画の主人公でもあるRaynor Winnが書いてベストセラーになった実話ベースの同名の回想録 – 未読 - で、監督はこれが長編映画デビューとなるMarianne Elliott。

Raynor Winn (Gillian Anderson)とMoth (Jason Isaacs)の夫婦は事業に失敗して家と農場を失い、役所に行っても緊急事態ではないので家を用意できるのは2年後、と言われ、更にMothの方は治癒が難しく悪化する可能性のある脳疾患で足を引き摺って歩くしかない、と言われて、でも、なのか、だから、なのか、英国南西部のサマセットからドーセットまでの海岸線をふたりで歩いてみることにする。

難病が絡んだ感動の夫婦の実話!みたいだったらやだな、だったがそういうのではなかった。外側は悲惨ぽいし辛そうだし天候のせいでずっとびしゃびしゃなのだが、態度としてはどこまでもドライにそれがどうした、みたいにずっと歩いていく、それだけなの。 最後は笑って終わるし。

こうして50代の夫婦が、重いリュックとテントと全財産(ほぼない)を背負って、海岸沿いの崖っぷちばかりの砂利路を登ったり下ったりよろよろ歩いていって、画面にはふたりで歩いたマイル数も表示されるのだが、外見はハイキングしてアウトドアする人でも中味はホームレスで、カフェに寄ってもお湯だけ頼んで、そこに持参にしているティーバッグを突っ込んだり、クリームティーもひとつ頼んでスコーンをふたりで分けたり、ATMで操作するたびにお金が出てきますように、ってお祈りしたり、とにかく大変そうで、ただ一番謎なのは、なんでこんな厳しい状況になっているのに、崖っぷちを歩き続ける苦行のようなことをやろうと思ったのか、この辺の難行とか苦しみに対する考えかたってイギリス人に対する謎のひとつ、ではある。

そしてもちろんなによりも、天候だってひどい。テントが or テントごと吹き飛ばされそうになったり、足の先は赤黒くてよくわかんなくなっているし、Mothの足はふつうに動いてくれない難病だしで、どうするのか、まだ行くのか? みたいな場面が延々続いて、映画としては結構散漫でだらだらしているのだが、(晴れていれば)海辺の景色が素敵なのと、羊とかもふもふのウサギとか、鹿とか、アザラシとか、猛禽とか、いろんな野生動物 - 羊はちがうか - が出てくるので、やっぱりあの辺は行かなきゃなー、になる。 スコーンも食べたいし。

こないだ見た”Good One”もアウトドアぽくないアウトドア映画で、これはホームレス≒アウトドア映画で、どちらもアウトドアをレジャーではなくて一時的な、やむを得ない退避の時 – しかもぜんぜん楽しくない - のように使っていて、そういうアウトドアなら、自分にいつ降りかかってきてもおかしくないかも。

あと、彼らは体育会系じゃない文系のふたりで、Raynorは原作本のもとになるであろう旅のメモをガイドブックにずっと書きつけているし、Mothは道中ずっとSeamus Heaneyの(が翻案した)”Beowulf”を読んでいて、いよいよお金がなくなった時に広場でそれを大声で朗読してお金を集めたり、どこまでも微妙に不器用で危なっかしいのもよいの。

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