5月18日、日曜日の晩、King's Head Theatreで見ました。
こういうの - 実在した政治家をポートレートした政治ドラマ、密室で3人のやくざが殺し合うドラマだと思ったらちがった - を見ても(背景とか歴史として起こったこととか対象となった主人公達をまったく知らなくても)おもしろいと思うのかどうか、の実験。
作は政治のノンフィクションを書いているRobert KhanとTom Salinsky、演出はKirsty Patrick Ward。約90分の一幕もの。
客席と同じ高さにリビングがあって、背面には本が詰まった重厚そうな本棚があって、その手前には革製のソファがあって、さらにその手前にはお酒やカクテルをつくる小テーブルがある – 見るからにオトコの部屋の仕様、で、タイトルにあるギャングの部屋でもないよな、と思ったら登場するなり政治の話を始めたのでそうなんだー、くらい。
英国労働党にいて、党内でそれなりの地位・役職にあった三人 - Roy Jenkins (1920-2003), Denis Healey (1917-2015), Anthony Crosland (1918-1977)が主人公で、彼らは全員同じ頃1917年~20年に生まれ、全員がオックスフォード卒で、全員が労働党に入った、過ごした時代を含めて同じカルチャー & 気質とか性向をある程度共有している – 互いのことが野心や野望も含めてわかっている、お見通しの間柄。
舞台の上のほうに掲示板があって最初は80年代初、そこから78年とか、70年代初とか40年代まで行って、また戻ってきたりする。時代が切り替わる際にはセットはほぼそのままで、幕入りの音楽として”God Save the Queen”とか” This Town Ain't Big Enough for Both of Us”とか、最後には”Love Will Tear Us Apart”、などが流れる。
3人全員がひとつの部屋にいる場面はあまりなくて、だいたい3人のうちの2人での会話が中心で、たまにその途中でひとりの動きが停止すると、その間に、もうひとりが彼や彼の動きについて自分がどう思っているのかの独白が入る。どす黒い悪口ではなく、政治家として彼を、彼の動向を今後どう見て扱っていくべきか、が戦略のようなところも含めて語られる。
語られる内容は、党内の動き、保守党の動き、欧州内の動き、いろんな政策策定や今後の人事に向けた動き、これらについて互いに意見交換して、合意形成をしたりネゴして同意を求めたり、どこの政治家もやっていそうなカーテンの裏側の駆け引きが繰り広げられていく。当時の政治や政治家、社会の状勢等を知っていればものすごくヴィヴィッドにおもしろく感じられたのだと思うし、実際前のめりで楽しんでいる観客が多数だった。
知らなくてもおもしろいと思われたところは、当時の保守党や自分らの党を彼らがどう位置付けてどう持って行こうとしていたのか、とか、3人ともが最終的に狙っているのは自分こそが!の首相の座なので、そこに向けてのひとりひとりの陰口とか中傷みたいな裏での刺しあいとか – これらは権力を手にしようとする者に共通した、普遍化されたムーブと思われるので、なるほどなー、って。
例えば当時のサッチャー政権がなんであんな酷くて内外から散々非難されつつものさばってしまったのか? については、これを見ると当時の労働党の裏側で、幹部クラスのこういう連中が自分こそが(次に天下を取る!)、みたいなボーイズクラブ内の自己満に近い駆け引きを延々やっていたからなのか(勿論そんな簡単ではないだろうけど、彼らのナルっぽい挙動ったら)、というあたりは察することができる。
同様のことはアメリカでも日本でも間違いなくありそうなことだし、政治(家)なんてそういうもの、と言ってしまうのは簡単なのだが、やはりその野卑さ、それらを自覚していない幼稚さ・ガキっぽさ、等が(「可愛げ」みたいに誤魔化されずに)白日の下に晒されないと、政治不信も政治離れも止まんなくて、だめよね。
日本でも同様のドラマは作れるのでは、と思うのだが、書ける人がいないか… それ以前に、客が入らないか…
6.01.2025
[theatre] The Gang of Three
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